激高
少女は戸惑いながらもそれを受け取り「ありがとうございます…。」と呟く。
僕はそこで初めて彼女の顔をマジマジと見た。銀髪のロングヘアーに緑目、薄緑のドレスを着た10歳くらいの女の子。今は泣いて目元や鼻が赤くなっているが、本来の彼女の容姿はお伽話に出てくるほどの整った容姿をしている。
僕はいつか彼女の笑顔を見たいなと思いながらハッとする、今はそれどころじゃないと。
僕は少しして彼女の様子が落ち着くのを待ち声を掛けた。
「…涙は止まりましたか？」
「…はい。」
彼女はそう言ったが未だに鼻をすする音がする。
「今日は何故あんなことに…？」
漫画の様な展開に僕も驚いた。格好つけるつもりはなかったが、あの状況ではああ言うしかない。
「…今日だけじゃありません…目に付いたらいつも追いかけてくるんです…。」
その言葉にてっきりあの中の誰かが彼女を好いて、虐めているのかと考える。好きな子ほど虐めたくなるというアレ。そんな想いで彼女の言葉に耳を傾けた。
「理由はお分かりなんですか？」
そう聞くと途端に彼女は「…ッ！私が悪いんです…！」と泣き崩れた。
僕は驚きながらも側に寄り添い「どういうことですか？」と伺う。
すると彼女は言葉に詰まりながらもこう答える。
「わっ…私は出来損ないなのです…！魔力も低く、体力もない…2つ年の離れた妹にも追い抜かれる始末…。だからそれを知っているあの人達からもからかわれ、いよいよ父様にも出来損ないだ、落ちこぼれだ、と言われてしまった…。このままでは本当に勘当され跡継ぎではなくなってしまう…跡継ぎで無くなった私には生きる価値など無い…！」
そう泣き続ける彼女に僕は苛立ちを覚えた。
僕は思わず「努力した結果そう言ってるんですよね？」ときつく当たってしまう。
普通ならここで「大変でしたね。」の言葉を掛けてやるべきなのだろうが今の僕にはそんな優しさは持ち合わせていない。
彼女は僕にそんなことを言われると思っていなかったのか驚いた表情のまま、黙ってしまった。
