彼の正体
「(あれ…？この世界には珍しく地味だな…てことはこの人も脇役…？でもヒロインはセイロンのこと知ってそうだったのに…。)」
僕は彼を不躾にジロジロと見てしまう。
するとセイロンの方から口を開いた。
「初めまして！セイロンといいます！君がトルー・バルサム様ですか？」
その明るい挨拶に取り敢えず、あちらに敵意はないのだと安心する。
「…はい、初めまして。トルー・バルサムです。明日の新入生歓迎会ではペアになったのでよろしくお願いします。」
「うわぁ～すみません！わざわざ、挨拶しに来てくれたんですね！ありがとうございます。明日は楽しみましょうね！」
と手を握られた。
その態度に少し戸惑いはしたものの僕も握り返し「ええ、こちらこそ。」と立ち去ろうと思ったが何故かセイロンは僕の手を離さない。
「あの…？
(えぇ…何？)」
「トルー様、突然なんですが最近、学校生活で不自由はありませんか？」
「…えっ？それはどういう…意味でしょうか？」
「そのままの意味ですよ。何か学校生活で不自由なことがあれば僕に聞いて下さい。僕、見た目以上に意外と情報通なんですよ！人とのコミュニケーションの取り方だとか友達の作り方、好感度の上がりやすい方法…それに加えて恋人を作る方法だって教えちゃいます！」
そう自信満々に応えるセイロンに違和感を感じ、その場は曖昧に「ありがとうございます。」と言って立ち去った。
「(セイロンって何者…？てか、恋人を作る方法って…情報通とか言っておきながらその返しって変じゃない？)」
そう思いながら改めてセイロンの人物を思い浮かべる。
すると突然、姉さんの言葉を思い出した。
「あっ！
(セイロンってたしかサポートキャラじゃなかった!?ヒロインが攻略対象の好感度とか知る為に尋ねる相手…。そうか！だからヒロインはセイロンのこと知ってたんだ!?でも僕が名前を出した時にあの反応…、全く利用してないから気まずかったのかな…？)」
僕はやっとセイロンがどんな人物か分かりホッとする。
「(取り敢えずセイロンが悪い人じゃないことは分かった…なんとか明日は頑張れるかも。)」
