恥
その後、サンバックは部屋を出て行った。
去り際には「答えはゆっくりでいい。まずは俺のことを兄としてだけじゃなく、1人の男として見てくれ。」と頼まれる。
僕はそれに静かに頷くとサンバックを見送った。そして1人になった途端「はぁ~。」とソファーに寝そべり溜息を吐く。
「(なっ…なんとかこの場は収まった…。でも、明日から恥ずかしくてマトモにサンバックの顔見れないよ…!…ホントのホントにサンバックは僕のこと、恋愛的な意味で好きなんだよね?でも、そんな要素あったかな…?確かに昔から仲良くはしてたけど、それは兄弟として当たり前の範囲で仲良かっただけだし…でもまぁ…うん…サンバックが僕のことが好きならそういうことなんだろう。とりあえず今は恋愛する気ないってことはサンバックには伝えてあるし、オール様に関しても答えを急いでいないようなら狡いかもしれないけど、今まで通りを貫こう。結局、告白されても断る羽目になるだろうし…。…後は…マリタイムのことだな…一体どういうつもりなんだろう…確かに告白だとは思うけど、それにしては過激だった。正直、いつ僕が関わったかは思い出せない…もう少し時間をかけて思い出そう。それに思い出してる間にまた向こうから何かアクションがあるかもしれないし。)」
僕はそう考えながら眠りについた。
次の日の朝食時、やはり僕はサンバックの顔をマトモに見れずにいた。
「(意識し過ぎだろ!?)」と自分でも思ったが、こんなこと生前も含めて初めてのことだったので慣れないのは仕方ない。
僕は少し挙動不審になりながら朝食を食べ終え、自分の部屋へと向かう。すると後ろから「トルー。」と話しかけられる。
振り返ると案の定、サンバックが立っていた。サンバックはツカツカツカと僕に近付くと突然、僕を抱き締める。
「…俺のこと、意識してくれたのか?」
とその声色は嬉しそうだ。
僕は朝食時のことをサンバックにバレていたことが恥ずかしくて顔を上げらない。
サンバックはそれも「可愛いな。」と呟き、僕のつむじに口付ける。僕がそれに反応出来ずにいると好きなようにキスしだした。
「ちょっ…!ちょっと兄様!」と流石にそれは居た堪れなくなり手を突っぱねる。
しかし、サンバックは笑って「悪い。」とわざとらしく謝ってくる。
結局、僕は最後までサンバックの顔を見れずに「がっ…学校に遅れるから!」と言ってその場を立ち去った。
僕は急いで部屋に入る。
「ハァ…ハァ…。
(…やっぱり恥ずかしい…!僕、こんな乙女思考じゃなかったはずなのに…!)」
と僕は自分の感情の変化についていけずにいた。




