気持ち
「えっ?」
僕は一瞬、何を言われたか分からず固まった。
その様子にサンバックは「なんだ、ここまで言って分からないのか?」と苦笑いになる。
「(今…愛してるって言った…?)
…えっいや…今なんて?」
「お前を愛してる…。冗談じゃないからな、トルー。」
「そっ…そん「愛してる。」
「俺は…お前を愛してる。」
何度も告げるサンバックに僕は漸く理解した。
「(えっ…ちょっ!ちょっと待って!どういうこと!?なんでこんな展開に!?イモーテルの件はとりあえず分かったけど、なんでサンバックまで僕に告白するの!?)
にっ…兄様?…本気なの?」
「…ああ、本気だ。」
サンバックはそっと僕の肩に手を置くとこう続ける。
「オールの告白はあくまでキッカケに過ぎないが…このままトルーが他人のモノになるくらいなら今、言わないと絶対後悔すると思った。俺だって昔から…トルーが小さい頃から愛おしくて堪らないのに今更、俺以外の者に奪われるなんて想像したくない。…なぁトルー…俺じゃダメか?俺じゃお前のことを幸せに出来ないか?」
そう告げるサンバックの目は切なげに揺れている。
「(いや…気持ちは嬉しいけど、それとこれとは話が別だし…。)
兄様…あの…気持ちは嬉しいけど僕、兄様のこと、そういうので見たことがないからいきなり好きだと言われてもどう答えたらいいか分からないよ。それに…オール様やイモーテルのことだって恋愛の好きかって言われたら、そんなこともないし…。だから今の段階では兄様の心配するようなことはないと思う…。あっ…あのでもね?かといって兄様と付き合うかっていったらそういう訳じゃないんだけど…。」
と僕はしどろもどろになる。
正直なところ、自分でも男性に告白されるなんて思ってもみなかった。ランドモスやマリタイムに関してもゲームのバグかと思うくらい他人事だと思っていた。
しかし、10年以上共に過ごしてきたサンバックまで僕に告白するなんてそれはバグだとは言い切れない。
「(それにこんな真剣に言ってくれる相手に対して男だから、って理由で断るのは失礼だと思う。)」
正直、こんなことを思うのでさえ自分でも予想外だった。だってつい先程まで自分は異性愛者で女性だけが恋愛対象だったからだ。
しかし、昔から男として憧れでもあったサンバックに好きだと言われ、何故かその気持ちを無下に断るのは忍びないと感じてしまう。それが何なのか自分でも分からない。でも、もしかしたら今後、男性のこともそういう目で見れる、という前兆なのかもしれない。
僕は内心「(姉さんに毒されてるな…。)」とは思いつつ、真剣に答えを探す。
…結論を言うとやはり今は没落ルート回避のために恋愛をする余裕はない。しかし、それが成功したらどうだろう…。この気持ちが恋愛であれ、憧れであれ、ゆっくり答えを出すには十分な時間ではないだろうか。
僕は意を決して口を開く。
「あの…兄様、変なことを言うけど…僕、今は恋愛とかそういうのする気は無くて、来年の夏以降になったら考えれるかなって…あの!それでも兄様の期待に添えれるかは分からないよ!?それでもいいなら…返事は待ってくれる?」
自分でも都合の良いことを言ってるのは分かっている。しかし、これが今の僕の精一杯の答えだ。
暫く黙っていたサンバックは僕をギュッと抱き締めると「…もちろんだ。」と呟く。
「今まで何年も待ったんだ、それが1年延びようが大したことじゃない。それでトルーの答えが出るなら俺は待とう。」
そう言ったサンバックはおもむろに僕の頰に手を添えると僕の唇の横に口付ける。
ゆっくりと離れ、僕を真っ直ぐ見据えると「…唇にはトルーの返事を貰ってからにする。」と微笑んだ。




