マリタイム
次の日、僕はモヤモヤとしながら学校へと向かう。
行きの馬車の中でもイモーテルは膝は貸してくれるもののいつもより元気はない。
「(やっぱり僕が原因なんだよね…でもなんで?花を生けてもらうのがそんなにダメだったの…?)」
僕は昨日、寝るまで考えてみたが結局、結論は出なかった。
「(サンバックも今日、教えてくれるって言ってたし、とりあえず今は授業に集中しよう。)」
僕はそう考え直し、授業に集中することにした。
昼休みになり、僕は食堂へと向かう。
「(今更だけど…僕、友達がいない…。)」
入学初日からブルーマリーの弟として憐れみの目で見られ、何日か経つとランドモスに絡まれ、さらにAクラスの首席となれば近寄りがたいのも無理はない。
「(はぁ~…僕が他の人の立場でも近付きたくないな…。)」と思いつつ、席を探す。
先日はランドモスの案内の元、個室に連れて行かれたので今日は皆と同じ席に座る。
僕は考えるのも面倒くさいので日替わり定食を頼み
「(あぁ~…日本食が食べたい…白米に味噌汁…生姜焼きもいいな~。)」と思いながら箸を進める。
すると「隣いい?」と聞かれ、特に顔を見ることなく「どうぞ。」と返事をした。
その直後、後悔する。
「(えっ…なんで…?)」
見上げた先にいたのは副会長のスコッチ・マリタイムだった。
「君は日替わりにしたんだね?僕はゆっくり食べたいからコースにしたよ。」
と当たり前のように話を振ってくる。
「(えっ…何?僕、この人と全然親しくないんですけど…!)」
僕の驚きと共に周りもザワザワと騒がしくなる。
「マリタイム様が一般席に…?」
「隣にいるの誰だ?」
「相変わらずお美しい…。」
そんな声が周りから聞こえ始め、僕はハッとする。
「あの…マリタイム様…この席では落ち着かれないのではないですか?」と咄嗟にしては良いセリフが口から出た。
僕としては遠回しに個室へ行け、ということなのだがこの人は気付かず「ううん、たまにはこの席で食べたくなるんだ。」と応える。
「(いや、違うから!貴方といると僕が目立つからどっか行ってほしいのに!)」
僕は意を決してマリタイムにこう告げる。
「マリタイム様…僕が言える立場ではありませんが、僕はなるべく目立たずひっそりと昼食を食べたいのです。なのでマリタイム様と食べるとなると目立つのは必須。出来れば個室をお使いください。」
僕は周りから嫌われること覚悟だった。
マリタイムは僕からそんなことを言われるとは思ってなかったのか目を丸くすると「ハハッ!」と笑い、さらに「そうだね。」と妖しく笑う。
マリタイムは僕にしか聞こえないくらいの小さな声で「…確かに私がこんな大衆の前で君に話しかけると君は目立っちゃうね?それに周りから嫌われるかも…。でも、私としては願ったり叶ったりかな?私は君に友人など作って欲しくない。君の1番は私でありたいからね。」と微笑む。
僕はそのセリフにゾゾゾッと鳥肌を立て、慌てて立ち上がる。
「なっ!何を言ってるんですか!?」
「えっ?思ったことを言ったまでだよ?」
そう応えるマリタイムは変わらず微笑んだまま。
「(この人ヤバイ!この人誰!?こんな人、ゲームではセリフもないくらいモブキャラだったはずなのに!?)」
僕はマリタイムに恐怖を感じ、昼食もそこそこにその場を立ち去った。




