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悪役令嬢の弟  作者: ミイ
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お呼ばれ

先生によって用意された巨大な岩を何分で粉々に出来るかが今回の課題だった。


光魔法の先生の協力の元、散らばった破片が飛び散らないよう一定の距離でバリアが張られた。


だいたいのペア数は15組ほどで順番にその課題をこなしていく。


僕とサフランは7番目。サフランは自分の番が来るまで不安そうな顔で手を握り締めていた。





いよいよ僕達の番となった時、僕はサフランに声をかける。


「サフランさん、僕がサフランさんの魔力に合わせます。なので、サフランさんは何も気にせず魔法を放って下さい。僕の魔力は低いですが、コントロールは上手いので。」と彼女を元気づける為に笑顔で告げる。


サフランは緊張しながらも「…はい。」と応え、目標物に向かって魔法を放った。


僕もそれに数秒遅れて魔法を放つ。


僕にも彼女の魔力がどれくらいかというのは数値化して分かるわけではない。しかし、魔法の規模でだいたいどれくらいかは判断できる。


「(成る程…120くらいか。まぁまぁ高い方だな。)」と思いながら魔力を込める。


1度目の攻撃が岩に当たったかと思うと全体の4分の1を粉砕した。


彼女は喜んでこちらを見る。僕もそれに微笑んで返すと「では、次もお願いします。」と頼んだ。





それから結局、時間にして18秒。まずまずのタイムで課題を終えた。このタイムは全体の4位と好成績のようでサフランはとても喜んでいた。


一方、ブルーマリーはというと高い魔力のせいでなかなか風魔法の人とバランスが取れず、タイムは26秒。成績は8位となった。


本人は悔しそうだったが、これを機に少しは周りと協調するということも学んで欲しいところだ。





その日の放課後、僕はオール様の元へ訪ねた。


「オール様、お疲れ様です。」


「トルー君…ありがとう。」


今日もオール様は疲れ気味だ。


「…今日も…ですか?」と僕が苦笑いで聞くとオール様も溜息を吐きながら「…うん。」と答えた。


やはり、またヒロインが何かしでかしたらしい。


「今日は実践と座学があったんだけど、かなりの初級魔法を尋ねられてね、きっとその初級魔法が出来なかったら入学はできないだろうっていうレベルだったから、きっとワザとなんじゃないかな…。なんでそこまで僕に聞いて来るのかよく分からないけど、この授業体制を間違った方向で捉えてるんじゃないのかな…って思うんだよね。」


たしかにこのマンツーマン方式は光魔法を使う人だけに与えられた特権だ。だから、他の生徒や先輩より親密になるのはゲームの設定である。


「(普通は先輩も攻略対象だからヒロインと親密になるのは喜ばしいはずなんだけど、何故か先輩はもうすでに心に決めた人がいるんだよね…?それが僕には謎だけど、嫌なものは嫌だから仕方ないのかな…。)」


「…そうでしたか…僕には何もしてあげられませんが、こうやって話を聞くことは出来ますのでお気軽に話して下さいね。」


と哀れな先輩を不憫に思い、そう声を掛ける。


「ありがとう、トルー君。あの…唐突なんだけど…もしトルー君が良かったら今度の休みに家に来ない?僕が庭で育てているチューリップが見頃なんだ。とても綺麗だから、是非トルー君に見てほしいと思って。」


と手をモジモジしながら恥ずかしそうに告げるオール様がとても可愛く見え、僕は二つ返事で了承する。






それから数日が経ち、オール様との約束の日となった。


僕はお招きされる側なので念の為、紅茶を手土産として用意し屋敷を訪ねる。


僕の乗った馬車が止まり、門の前に降りると遠くから「いらっしゃい、トルー君!」とオール様が出迎えてくれた。


僕は慌ててオール様に駆け寄り「わざわざ出迎えて下さったのですか?」と告げる。


「うん!トルー君に早く会いたくて!」と満面の笑みで応えるオール様に不覚にも「(なんだ、この可愛い人は!)」と思ってしまう。


「(僕は異性愛者だったけど、この人は可愛く見えるな…いやいや!姉さんの趣味が移ってきてる…危ない危ない…!)」


と僕はかぶりを振ると改めてオール様を見直し「こんにちは。」と挨拶をした。

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