従者としての選択
両親との会話が落ち着いた後、僕は部屋に戻りイモーテルを呼んだ。
「イモーテル、大事な話があるんだ…。」
僕の緊張した様子にある程度覚悟をしたのだろう、彼は何も言わず静かに「はい。」と答えた。
「…さっき兄様と婚姻届を出してきたよ。」
僕がポツリと呟くと彼はフゥーと息を吐き「覚悟しておりました。」と答える。
「サンバック様のあの慌てた様子、トルー様をお連れした時点でそうなのかと予想しておりました。やはり私はトルー様と主人と従者という関係以上のものは築けなかったのだと。」
彼の悲壮に満ちた様子に言葉を失う。しかし、彼はフッと微笑んだ。
「トルー様が出かけている間、自分の進退について考えました。正直に申し上げますとトルー様の従者を辞職する考えも過ぎりました。…しかし私はそれ以上に貴方と共に生きていきたいと思ったのです。貴方が小さい頃から側で成長を見守っていた私です、貴方と生涯を添い遂げたいというのが本音ですが、いつの間にか親心というのも生まれました。このままトルー様の成長とお子様の成長を側で見守りたい、そして従者として自身の最期を迎えたいと。トルー様、ワガママな申し出ではありますが…どうか…どうか私をこのまま最期まで側に置き、皆様の成長を見守らせてはくれませんか?」
彼は最後まで言葉を言い切ると涙を流し懇願する。そんな彼の姿に胸を締め付けられた、彼をそんな気持ちにさせたのは紛れもなく自分なのだと。
「イモーテル…ゴメン…。君に辛い選択をさせてしまって…。でも僕は君がこのまま僕の側に居たいと言ってくれてとても嬉しいんだ。僕だって凄く勝手なことを言うけどイモーテルがもし辞めるって言ったら引き留めるつもりだった。だって君は僕にとって1番信頼の置ける人で頼れる人だから。それに僕にもし子供が生まれたらその教育は是非、イモーテルにして欲しいと思ってるんだ。これから僕はこの家を支える為に努力しないといけない、でもそれにはまだまだ未熟で子供だ。ただ家に対しても今後生まれてくる子供に対しても中途半端なことはしたくない。だから君には側にいて支えてほしい。僕の方こそ勝手なことばかりで君を呆れさせてしまってると思うけど、それでも僕の側にいてくれる?」
そう言って僕は握手をするように手を差し出す。イモーテルは涙ながらに僕の手を握ると甲の部分を自分の額に押し当て「勿論です、生涯貴方と共に。」と応えた。