結婚
「僕は正直、この家を継ぎたくないと思ってるよ。」
「…ッ!何故⁉︎」
「だって僕にはそんな器量はないし、兄様が継ぐ方が適任だと思う。ましてや、それが僕に遠慮して継ごうとしてないなら尚更ね。僕としては兄様が後々この家の当主になって僕はそれを支える人物になる、それでこの家を守っていくんだ。」
僕がそう言うと彼は俯いて暫く考え込んだ。そして
「…本当にいいのか、俺が跡を継いでも…。」と自問自答するように呟く。
「いいんだよ、兄様には血の繋がり以上にその資格がある。それに…僕達、結婚するんでしょう?なら、必然的に兄様だってこの家に居るんだよ。」
僕の言葉に彼は今気付きました、とばかりに顔を上げる。そして、ほんのり顔を赤くすると「そうだな…俺達、結婚するんだから…。」と答える。
「うん、父様も僕に嫁げ、って言ってくるくらいだし、兄様が継ぐことに反対なんてしてないから安心して。それに僕…兄様との子供が欲しいと思ってるんだよ。」
「…えっ⁉︎」
僕は兄様にニコッと微笑むと彼に抱く着く。
そして「兄様…僕、なにもかも初めてだから優しくしてね?」と耳元で呟き頰に口付けた。
その後、機嫌の良くなった兄様と共に教会に着いた僕達は婚姻届をその場で記入し、提出した。
そして、彼は僕の前に跪くと左手を握る。
「トルー、これで晴れて俺達は夫婦だ。順番がおかしくなったが…言わせてくれ。俺はお前を必ず幸せにすると誓う、一生一緒にいてくれないか。」
僕は彼の真っ直ぐな瞳に「はい。」と応えると彼からの口付けを受け入れた。
帰りの馬車の中、お互いに隣同士に座りながら手を握り帰路に就く。
すると徐ろにサンバックが口を開いた。
「トルー、このままルート様に挨拶しに行かないか?色々、お世話になったし1番に報告に行きたいんだ。」
「うん、分かった。でも急に行って迷惑じゃないかな?」
「…まぁ大丈夫だろう、緊急って伝えるさ。」
そう言ってサンバックは笑う。そして暫くするとルート様のいる王宮へ辿り着いた。