両想い
僕はその日の夕食後、ある人の部屋を訪れた。
コンコンッ
「トルーだけど、入ってもいい?」
僕の突然の訪問に彼は快く中に入れてくれた。
「ゴメンね、急に。」
「いや、むしろ来てくれて嬉しい。トルーにお触り禁止と言われてから俺は絶賛トルー不足だからな。俺の部屋に来たということは何か俺にとっていいことがあるんだろ?」
そう言って彼はフフッと笑う。
「うん、兄様に大事な話があるんだ。」
僕もつられて笑うと絶賛トルー不足だというサンバックの首に手を回し抱き着いた。するとピシッと思考停止するサンバック。しかし、すぐに慌てて僕を引き剥がそうとする。
「…ッ!おいっトルーやめろ!お前が触るなって言ったんだぞ!」
でも僕は頑なに彼に抱き着いて離れようとしない。しまいに彼は「ハァー…。」と溜息を吐くと引き剥がすのを諦めた。しかし、かといって僕には触れない。
「…どうしたんだ、急に。」
僕は意を決して口を開く。
「…兄様、好きだよ。」
僕の突然の告白にサンバックの身体が緊張したのが分かる。そしてだんだんとその言葉の意味を理解した彼は素っ頓狂な声を出す。
「ちょっ…ちょっと待て!お前の気持ちは嬉しいが突然どうしたんだ⁉︎お前、本当にトルーか⁉︎」
あまりの急展開に彼の頭が追いついていないようだ。
「ちゃんとトルーだよ。それにやっと自分の気持ちに気付いたのに…兄様は抱き締め返してくれないの?」
僕は恨めしげに彼を睨む。
「あっ…いや…そうじゃなくてだな…あぁ~…どうなってるんだ…?」
サンバックは頭をガシガシと掻き、困惑しながらも僕をギュッと抱き締めた。
「本当にいいんだな…?やっぱり冗談でした、とかは無しだぞ。」
「うん!こんな大事なこと、冗談でも言わないよ。」
「そうか、良かった…。よし!早速、婚姻届を出しに行こう!」
そう言ってサンバックは僕を抱っこしたまま立ち上がる。
「えぇ⁉︎気が早過ぎない?」
今度は逆に僕の頭がついていかない。
「何言ってるんだ!トルーの気が変わらない内に既成事実を作らなければ、いつアイツらが手を出してくるか分からないだろ!おい!誰か馬車を用意しろ!」
それから僕はサンバックと共に教会へ行くことになった。