内緒事
「なるほど…。話を聞く限りトルー様には比較対象が必要かと思います!」
「比較対象?」
するとセイロンは急に声を潜めた。
「そうです。この際、一度他に目を向けてみたらどうですか?今のトルー様には選択肢が少なすぎると思うんです。トルー様が今、親しくしている方々はこの世界の極限られた方達だけです。勿論、皆さまが素晴らしい方達だとちゃんと分かっています。しかし本来なら学校に通いながら色んな人達と関わることで誰が好ましくて誰が好ましくない、という感情が生まれてくるものです。でも僕が知る限りトルー様は数人の限られた方達としか付き合っていません。僕は新入生歓迎会のことがあったのでトルー様とこうやって仲良くさせてもらってますが、本来ならお話さえ出来ない立場です。話を戻しますが、今のトルー様には色んな人と関わり合うことが必要なんだと思います。ただトルー様のことだからそんなことをしたら4人の方々を裏切るようで嫌だとか失礼なんじゃないかとか、そういうことを思うかもしれませんが、こういう荒療治的なことをしないとなかなか自分の気持ちには気付かないものなんじゃないですか?きっとその経験が最終的に自分の隣には誰がいて欲しいのか本当に好きになって欲しいのか、その答えのヒントになると思いますよ。どうです?トルー様が良かったら僕の提案に乗ってみませんか。」
僕はジーっとセイロンの顔を見ながら考える。
確かに僕はゲームの世界だと思って今まで生きてきた。だから、自分に関わる人物は必要最低限でいいと思っていたし、必要以上に攻略対象とも関わってはいけないと思っていた。ましてや恋愛感情なんて以ての外だ。だからだろうか…いまいち気持ちが入らないのは…勿論カッコいいとか可愛いとかは人並みには思うのだが、それ以上の感情が伴わない。
「…そうかもしれない…。僕、あんまり周りのこと見てなかったから4人それぞれの良さがよく分かってないのかも…。」
「でしたら、やってみます?勿論、4人には内緒で。」
「うん、セイロンにお任せする!」
それから僕の内緒のお見合いが始まった。
この事は絶対に4人にバレてはいけない。バレたらどんなことになるのか想像もしたくない。4人を裏切るようで気が引ける部分はあるのだが、この気持ちをハッキリさせる為にはこういう刺激も必要だと思う。
その後、セイロンと話し合い何人かめぼしい人がいるらしく僕に数人の女性と男性を紹介してくれることになった。また詳しい詳細は後日ということでこの日はこれで彼と別れた。