選べない
「あの兄様、聞きたいことがあって…今、大丈夫?」
「ああ、今日は休みだからな。入っていいぞ?」
そう言ってソファーに促される。サンバックと対峙しながら僕は緊張した面持ちで口を開いた。
「兄様、兄様はこの家を継ぐんだよね?」
僕の問いにそれまで笑顔だった彼は急に顔を強張らせる。
「…いや、トルーはもう知ってるかもしれないが俺は父さんの実の子じゃない。だから、この家を継ぐ資格はないんだ。」
「えっ…でも兄様はこの家を継ぎたいんじゃなかったの?兄様はこの家の長男なのに…。」
「長男でも血の繋がりは大事だろ?俺は母さんの連れ子だ。それに見た目だって父さんに全く似てないし、周りになんて言われてるのかも知っている。だから俺からは継ぎたいという意思は表せない。」
「でも…。」
「それに俺は今の立場でも十分だと思ってる、ルート様の護衛でいれることを誇りに思ってるんだ、だからこの家はトルーが継げばいい。」
彼のハッキリとした口調に意思の固さを感じる。僕はサンバックの答えに驚きはしたものの、無理にどうこうはできない為「わかった。」と声を掛け、部屋を後にした。
「…そっか…兄様は継がないのか。
(じゃあ僕が継がないとなぁ…あんまり本気で考えてなかったんだけど、本気で考えないとダメなのか…。でも父様は僕に嫁げって言ってたからあながちサンバックが継ぐのも許してると思うんだけど…。)」
僕はグルグルとそんなことを考えながら部屋に戻る。
「(はぁ~…とりあえずこの2年間のこと、聞かなくちゃって思って聞いてみたけど、結局、僕まだ皆のこと、恋愛で好きなわけじゃないんだよね…友達としてなら今後もずっと一緒にいたいくらい好きなんだけど…。この際、誰か他の人を見てみるのがいいのかな…?でもそんなことしたら4人に失礼だし…。ん~誰かに相談したいなぁ。あっ!相談といえばセイロンがいるじゃん!セイロンに連絡しよう!)」
そう思い立った僕はセイロン宛に手紙を書き、自分の悩みを聞いて欲しいと綴った。
それから数日後、セイロンとの待ち合わせの日になった。僕は久しぶりの遠出にドキドキしながら彼を待つ。
「お待たせしましたー!トルー様ぁ!」
セイロンは急な誘いにも関わらず手を振りながら笑顔でこちらに走ってきた。
「セイロン!急にゴメンね!」
僕は彼と近くのカフェに入り、これまでの経緯を説明した。
4人から言い寄られていること、それなりにデートなどを重ねたがイマイチ友情を超えた感情が生まれないこと。これからどうすればいいか分からないこと。セイロンは僕の話に相槌を交えながら最後までしっかりと聞いてくれた。