実力テスト
次の日は姉様の宣言通り、馬車を分けられる。
僕は相変わらず不安定な馬車に揺られながら学校に着くまでの間、眠りにつこうとした。
しかし、今日はブルーマリーの代わりにイモーテルが馬車に同乗している。
「…イモーテル、わざわざ学校に行くだけなんだからついて来なくてもいいよ?
(出来れば、気持ちが休まらないから来ないでほしいんだけどね。)」
「いえ!万が一、トルー様に何かあってはいけませんので!…あのトルー様、お休みになるなら是非、私の膝をお使い下さい、学校に着きましたら起こしますので!」
と鼻息荒く告げてくる。
「えっ…うん…ありがとう…じゃあお願いしようかな…。」
正直、イモーテルの申し出に便乗するのは得策ではないと分かっていたが眠たいのは仕方ない。更に膝まで貸してくれるならそれはそれでありがたく使わせてもらおう。
「どうぞ!トルー様!」
とイモーテルが自分の太腿をパンパンッと叩いて待っている。
「じゃあ…失礼するね。」
僕はそう言うとイモーテルを仰ぎ見るように横になる。決して馬車内は広い訳ではない、なので僕は膝を曲げて仰向けに横たわった。
「トルー様、どうぞお休み下さい。」
イモーテルはそう言うと僕の頭を撫でる。
「(イモーテル…僕もう13歳なんだけどなぁ…。)」と思いながら眠りについた。
暫くすると「トルー様…トルー様。」と話しかけられる。
「んん~。」と返事すると「クソッ…!起こしたくない…!」と呟きが聞こえる。
「(また何か言ってる…。)」と思いながら目を開ける。そこには満面の笑みのイモーテルがこちらを覗き込んでいた。
「トルー様、学校に着きました。」
「ふぁ~…ありがとう、イモーテル。脚痺れてない?」と起き上がる。
「大丈夫です、それにトルー様を膝枕して脚が痺れるなんて嬉しいことです。どうぞ、お気になさらずに。」
「…そう?それじゃあ行ってくるね。」
「行ってらっしゃいませ。」
とイモーテルに見送られ、僕は学校の門をくぐった。
教室に着くと、既にヒロインとブルーマリーは席に座っている。
僕は隣の席のニアに話し掛けた。
「おはようございます、バイオレット様。」
するとニアはハッとしたように「あっ、えっ…おはようございます、バルサム様。」と返事をする。
その反応を不思議に思いながらも担任を待った。
今日は入学式の次の日ということで実力テストがある。僕は座学のテストに関しては全く問題は無いが、問題はこの後にやってくる。
先生が全ての答案を集めたところで「では、次は実技テストです。皆さん、昨日のホールに集まって下さい。」と告げる。
会場に着くと各能力別に並ばされた。
課題は1~10まであり、数字が増えていくごとに難易度が増していく。それを何番まで出来るかで加点が違うというわけだ。
僕の能力である風はクラスで20人中5人がその能力者。僕の前の人が6番までクリアしていた。
いよいよ僕の番が来る、3番までは難なくクリア出来たが4番の時点で少し躓いてしまう。それでもなんとかこなし、5番へといけた。しかし、先程ほどの時点で躓いた僕は到底5番はクリアできず4番止まりとなる。
「(うわぁ…これはマズイ…。)」
と僕は後々の成績のことを考え頭を抱えた。
自分の番が終わり、周りを見渡してみるとちょうどヒロインがテスト真っ最中だった。
「(今、何番までしてるんだろう…?)」
と野次馬のように光魔法を実践している人達に近付く。
「では、ニア・バイオレット。次は6番です。」
「はい。」
ヒロインはそう返事をすると課題をこなしていく。
僕から見たら簡単そうにやってのけているので、羨ましく思う。「(てっきり7番も余裕なんだろうなぁ。)」と思っていると、急にヒロインが倒れた。
周りが騒然とする。
「誰か!保健医を呼んできて!」
担当の先生の声が聞こえ、ドアの近くにいた生徒が走って出て行く。
僕は倒れたヒロインを見つめ、状態を心配するがそれと同時に疑問にも思った。
「(こんなシーン…姉さん言ってなかったけど…。)」
暫くすると保健医と先程の生徒が担架を運んできた。担当の先生が「魔力切れかも。」と説明している。ヒロインは担架に乗せられ、保健室に運ばれて行った。