最後の心配事
僕は慌ててサンバックから距離を取ると「兄様、今後はこういうこと禁止ね!」と強めに告げる。
サンバック以外にも僕を好いてくれている人がいるにも関わらず抜け駆けのようなことは極力避けたかった。今までは自分の気持ちを後回しにして没落ルート回避に奔走していた為、ある意味彼らからのアピールも好きなようにさせていた。しかし、心配事がなくなった今、彼らの気持ちに応えるために真剣に考えないといけない。先程、オール様にもお付き合い自体はできると言ってしまった手前、いろんな人に触れさすのはどうかと思う。
「兄様、ゴメン。これからはちゃんと考えるから…。」
僕がそう言うとサンバックは仕方ないなとばかりに諦めたようだった。
それから僕はルート様にある質問をする為に彼に向き直る。
ヒロインがいなくなり、ここがゲームの世界ではないことは十分理解できたが、最後に1つだけどうしても確認しておきたいことがある。その答えによっては今後、本当の意味で自分の為に生きることが出来る。
僕はこちらを微笑ましく見ているルート様に向かって「あの…ルート様…変なことを聞きますが、シスト様と"今は"仲が良いですか…?」と質問をした。
すると彼は一瞬驚いた顔をしたが、すぐにハハッと笑って「ああ、シスト兄さん?そうか、トルーは兄さんが王の座に就いたことは知らなかったね?」と笑う。
「えっ?」
「昨年、兄さんは王になったんだ。あっでも父さんは生きてるから安心してね、自分が弱くなる前に王座を譲りたかったみたいだから。それにね、王座が変わる時、気付いたことがあるんだ。ずっと兄さんは私のことを目の敵にしていると思い込んでいたからなるべく兄さんを避けていたけど…実際、兄さんは私のことを大事に思っていたらしい。最初はそう言われても信じられなくて…だって私が王族らしからぬ態度をとっても何の反応も見せてこなかった人に急にそんなこと言われても信じられないでしょ?だから少し反発もしたんだ、でも兄さんは王という立場は長男である私が引き継ぐが、お前には私と変わらない位置で共にこの国を守っていって欲しいと言われたんだ。そこで初めて兄さんの本音が聞けてすごく嬉しかったよ。勿論、表立って私が何かするわけじゃないけど、今の私の仕事は王の代わりに他国との外商をしたりするのがメインで、他にもこの国を良くする為に兄さんとよく意見交換もしているんだ。」
驚いた…僕がいない間に色んなことが進んでいる。
「それに兄さん"にも"奥さんが出来て、そりゃあもう毎日嬉しそうだし。」
「…にも…ですか?」
「そう、私にも婚約者がいるのはトルーも知ってるでしょう?ブルーマリーと半年前に結婚したんだ。」
ええっ⁉︎