牽制
それから両親はこの2年間、僕がどうしていたか質問してきた。そしてそれと同時に2年前と一向に成長していない僕を心配する。
「トルー、なんで昔と変わっていないんだ?」
「そうね…2年も経っているから15歳になってるはずなのに…。」
父様と母様は顔を見合わせて戸惑っている。
僕は自分の成長のことも含めてサンバックの時と同様、自分の前世の記憶について説明することになった。しかし、それなら廊下で待たせている皆にも説明しなければ、と思い皆を部屋の中へ促す。
そして再び僕は口を開いた。
説明をしている最中、2度目ということであることに気付く。姉さんに会い、ゲームをしていたのは3日も経っていない、そして1度だがクリアし、そしてあのリセットボタンを押した。現代に行っていた1日がこちらの1年とすれば…辻褄が合うような気がする。こじつけの様だが、そう思えば自分の中で納得がいった。
「じゃあトルーが成長してないのはアッチの世界で2~3日しか経ってないからなんだ、コッチでは2年以上経っているのにね…。」
そうルート様が呟く。
「そうみたいです。そこは時空の歪み?みたいなものが作用したのではないかと思います。それに皆さんが成長しているのに僕だけ成長していないのもそう思わないと僕が納得できないなと思いまして。」
「そっか…トルーは大変なことに巻き込まれていたんだね…。いくら記憶を無くしていたとはいえ…気付かずにゴメンね。」
「いえ!ルート様のせいじゃありません!僕が少し特殊なだけですから…!」
そう答えたが、次々と周りが僕に謝罪をしだす。僕がそれにあわあわしているとそっとサンバックが後ろから抱き締めてきた。
「兄様…?」
「改めて言わせてくれ、トルー戻って来てくれてありがとう。お前がいてくれて本当に嬉しい。」
そう笑ったサンバックは僕の耳やこめかみにキスをする。
「えっあっ兄様、恥ずかしいよ…!」
僕は身を捩りサンバックを見上げる。すると彼は「牽制だ。」と言って唇の横にキスをした。
途端に「アーッ!」と叫ぶ人達が。コールとオール様だ。
「ずるいです!サンバック様!私だってトルー様と…!」
「トルー君…さっきお互いのことを知っていこうねって言ったばかりなのに…。」
そして静かに「トルー様…。」と呟くイモーテルが不憫でならなかった。