ゲーム
それから僕は金曜日の夜から土日の2日間をかけてゲームをやりまくった。しかし、最後までどうしても出来なかったことがある…それは1人に絞って攻略対象を落とすことだ。ついさっきまで一緒にいたみんなの顔がチラついて1人になんて絞れない。結局、僕は友情エンドを選んだ。
エンディングが流れる。僕はコントローラーを放り投げベッドに倒れこんだ。
「はぁ~…。
(結局、僕は何がしたかったんだろ…誰も攻略しないなんて、時間の無駄だったのかな…。)」
その時、タイミング良くコンコンッと部屋の扉がノックされる。
「透、全部終わった⁉︎」
姉さんが嬉しそうに顔を覗かせる。
「1周目はね…けど、これ全員ってなったら凄い時間かかるでしょ?」
「まぁそうね。それにハッピーエンドとかトゥルーエンドとか友情エンドまで含めたらもっとかかるわね!透は誰推しなの⁉︎」
「うーん…?」
僕はジャケットを見ながら考える。実際に共に過ごしてきたからこそゲームのストーリーだけでは言い表せない想いがある。
「僕は…「あっ!透、エンディングが終わるわ。この後ね、スペシャルシーンがあるの。」
「スペシャルシーン?」
そんなシーン、攻略本に書いてたっけ?
ジッと画面を見つめると一瞬、画面が真っ暗になりカッと画面が光る。すると新入生歓迎会の時に教会に飾ってあった石像の写真と2つの選択肢が現れた。
リセット
→Yes
→No
「リセット…?何これ?」
「…これは透だけに与えられた選択肢よ。」
急に真剣なトーンで話す姉さんに驚く。
「えっ…?」
「どうするの、リセットしてまた"元の世界"に戻るかリセットせずにこのまま"現代"にいるか。」
「えっ…姉さん…なんで…?」
僕は目を見開き、姉さんを見つめる。姉さんは哀しそうな顔をしつつも懸命に笑顔を作り身を起こした僕を抱き締めてきた。
「透、ちゃんとケジメをつけてきなさい。私は貴方の幸せを"こっちの世界"で見守っているわ。」
「姉さん…なっ…知って…?」
姉さんは何も言わず更に僕をギュッと抱き締めると背中をポンポンと叩いた。
「ほら、選びなさい。」
僕を離した姉さんは僕にコントローラーを握らせると優しく笑う。
僕は未だに状況を把握しきれなかったがチャンスは今しかないのだと感じ取る。僕の背中を押してくれた姉さんにお礼を告げると"Yes"のボタンを押す。
その瞬間、画面と身体が光った。
「姉さん!僕…!」
光で身体が見えなくなるほぼ同時、「幸せにね!」という姉さんの声を聞き僕の意識は再びなくなった。