戦い
その瞬間、近くにいた警備の人が吹き飛び、出口である扉がバタンッと勢い良く閉まる。
「なんで⁉︎なんで私がこんな目に遭わないといけないの⁉︎私…私はゲームのシナリオ通りに行動しただけなのに!これはゲームの世界でしょ⁉︎ ゲームの世界なら私が何しても許されるはず…!てか、ヒロインの私がモテずになんでどうでも良い奴が好かれるの⁉︎そうだわ!それもこれも余計なキャラクターがいるからダメなのよ!そんな奴ら消えてしまえば私に注目がいくはず!…ねぇ、トルー・バルサム?」
彼女はゆっくりとこちらを振り返ると不敵な笑みを浮かべながら僕に告げる。
「そもそもアンタをサポートキャラとして放置してたのが問題だったのよね、先ずはアンタを消してその後…従者の男が居たわね、あの男も要らないわ。それから…。」
「バイオレット!何をするつもりだ⁉︎」
サンバックとルート様が僕を庇うように盾になる。
「何…って、ソイツを消すに決まってるでしょう?アンタが初めから邪魔しなかったら上手くいったのに…。まぁ、アンタを消す前にこの際だから教えておいてあげるわ、私がなんであの試験の時、影を使って自分を攻撃したのか。あれは私が怪我すればルート様か隠れキャラのフラン先生が治癒してくれると思ったからよ。そして目が覚めた時に私を好きになる魅了の魔法をかけたの、でも目が覚めたら目の前にどうでもいいアンタがいた、はぁ~…魅了の魔法って結構魔力を使うのよ、なのに目的の人はいなくてどうでもいいアンタがいるとか…私の方が可哀想じゃない?」
「じゃあ、トルーが倒れたのはそのせいか⁉︎」
「…さぁ?私はルート様かフラン先生限定で魔法を使ったからその人物じゃないソイツには効かなかっただけじゃない?特定の相手じゃないってことで変に魔法が作用して倒れただけかもしれないし。まぁ私にはそんなことどうでもいいけど。今からソイツを消してゆっくり2人にも魅了の魔法をかけてあげるからね?」
ヒロインはニヤリと笑うと手を構える。
「そうはさせない!」
ルート様が防御の魔法を使う。しかし彼女は笑ったままだ。
「ごめんなさい、ルート様。こんなこと貴方にしたくないのだけど…ソイツを消すには貴方2人は邪魔なのよ、とりあえず退いてくれる?」
そう言った彼女は僕達に向かって魔法を唱える。ルート様が険しい顔をしながらそれに耐えているが、崩れるのも時間の問題かと思われる。僕はヒロインに「バイオレット様!」と叫び一歩前に踏み出した。
「トルー!止めろ!殺されるぞ!」
サンバックが僕を止めようと必死に背後から抱き締めてくる。僕は振り返るとニコッと笑い口を開いた。