処遇
服越しだが彼の腹筋を撫でているとそれに気付いたサンバックに「トルー…何してるんだ?」と聞かれる。
「あっ…ごめん兄様!騎士団で鍛えてるだけあって逞しいなって…!」
彼はチラッと自分の腹部を見ると「ああ…なんだ、てっきりトルーに誘われてるのかと思った…。」と笑う。
「あっ!いやっ!そんなつもりじゃなくて!」
僕は顔を真っ赤にしながら否定した。
「ハハッ!分かってる、トルーにはまだ早いな。もう少し大人になったら俺が教えてやろう。」
彼はそう言って僕の頰を撫でる。
「(えっ…えっ⁉︎大人になったらって…。)」
彼の言葉に動揺しているとサンバックはゆっくりと僕を離し、隣に腰掛ける。そして真剣な表情をするとこう続けた。
「なぁトルー、思い出したくないことかもしれないがバイオレットが襲撃してきた時のことを教えてくれないか?」
「うん…。」
僕は赤く染まった頰を引っ込め静かに口を開いた。
次の日ー。
「トルー様~!!!」
前回と同様、いち早く情報を聞き付けたセイロンが走ってきた。
「セイロン…相変わらず情報が早いね…。」
僕は苦笑いになりながら告げる。
「はい!それが僕の自慢ですから!それよりも!バイオレット様のこと、大丈夫だったんですか⁉︎」
「うん、僕はなんとも。特に何もされてないから安心して。それに今は僕の方がセイロンに聞きたいことがあるんだ。」
「僕にですか?はい、なんでしょう?」
彼は先程の雰囲気から一変し、僕の発言に聞き入る様に身を乗り出す。
「今後のバイオレット様の処遇についてだよ。セイロンのことだからバイオレット様が他人に魔法を使用したことも知ってるはず…だよね?」
「はい、知っています…今後のバイオレット様についてですが…退学処分になるのも時間の問題かと。その後、騎士団に捕らえられ処罰される確率も高いです。」
「えっ…。」
「トルー様、他人に魔法を使う場合は正当防衛の時や人助けの時のみと決まっています。それを私的理由で使用ましてや攻撃するなど、あってはいけないことです。少なくとも投獄はされるでしょうね…その期間は分かりませんが…。」
「そっ…そうなんだ…。」
彼の言葉に重罪過ぎるのでは…と思ってしまう。
「重すぎると思われますか?ですがトルー様、ご自身の立場をお分かり下さい。貴方は公爵家の次男、対してバイオレット様は男爵家それに加え養女です、位が違い過ぎます。その様な方を襲撃となればどうやっても言い逃れできません。」
セイロンの言っていることが真っ当過ぎて、僕は素直に納得してしまった。