魔法
それから更に数日経ち、期末テストも間近に迫ったある日、僕の予感は的中した。
その日、僕はいつも通り授業を受け帰宅し馬車から降りて家の門を潜ろうとした。その時、大声で呼び止められる。
「トルー・バルサム！」
突然の呼び掛けに驚いて振り返るとなんとそこにはここにいるはずのないヒロインが立っていた。その姿は急いで来たのが分かる程に服装は乱れ、いつも綺麗にしていたはずの髪型も所々はねている。
「(なんで彼女がここに⁉︎)」
彼女の様子から、屋敷から抜け出してきたことがわかる。そして、それ程までに僕に用事があるなんて只事ではないことに不安を感じる。僕はピシッと身体を固まらせるとドンドンと近付いてくる彼女に恐怖心を募らせた。そして近付いてくるほどに分かる彼女の形相に恐怖し、余計に縮こまる。
その様子にいち早く気付いたのはイモーテルだった。彼は彼女の前に立ちはだかると「お嬢様、お止まり下さい。」と告げる。しかし彼女はイモーテルを無視しながら「トルー・バルサム、アンタに話があるわ。」と続ける。
「お嬢様、お止まり下さい！」
「ねぇ。」
「お嬢様！」
「うるさいっ！部外者は黙ってなさい！トルー・バルサム！アンタなんで私を助けに来ないのよ！」
「お嬢様！落ち着いて下さい！トルー様、この方をご存知ですか？」
「うっ…うん…クラスメイトのバイオレット様だよ…でも…！」
「バイオレット…様…？確か謹慎中のはずでは…？」
僕達がそう話した瞬間、
「アンタ、私のサポートキャラじゃないの⁉︎助けに来るまでどれだけかかってるのよ！アンタのせいでもうすぐ半年終わっちゃうじゃない！」
「えっ…いや…。」
ヒロインやめて！僕だけならともかくイモーテルもいるから…！
「お嬢様！謹慎中でしたらお帰りください！ましてや連絡無しに突然押し掛けてくるなど言語道断です！」
「…さっきからグチグチと煩いわね！アンタは引っ込んでなさい！」
そう言った彼女はイモーテルに向かって手をかざした。
