反省
「うっ…うっ…。」
僕はここで泣くのは余計に彼を心配させてしまうと懸命に涙を止めようとしたが、色んな感情が駆け巡り止められない。
「トッ…トルー…。」
サンバックは目に見えて狼狽していた。自分が泣かせた手前、手を伸ばしていいか迷っているようだ。
「にっ…にいさま…ごめ…んなさい…。僕…みんなに…心配…かけてた、でも…それに気付いてもなかった…。本当にごめん…なさい。」
僕は頭を下げて謝る。
「いや…俺も言いすぎた…すまない…。」
「…ううん。にい…さまは謝らないで…僕…が悪いんだ。彼女を優先しすぎて周りが見えてなかった…。これからは兄様の許しが出るまで彼女に近付かないようにする…。」
僕はそう言うと彼に向かって安心させるように微笑んだ。きっと泣いて不細工な笑顔になってたと思うが。しかし、サンバックはいきなり僕を抱き締めると「トルー、俺がお前を護ってやる。だから安心しろ。」と告げた。
それから1ヶ月ー。
結果としてはヒロインは謹慎処分を受けた。
最初に出された期間は1ヶ月。しかし、その1ヶ月は彼女の反省の度合いで期間が延ばされるという未だかつてない処置だった。何故なら彼女は窃盗という前科がある、更に謹慎処分を告げられた時の彼女の反応は反省ではなく激怒だった。
"私は悪くない"の一点張りで先生やルート様も呆れ返り学校長と相談した結果、この処分がなされた。
僕は兄様の言いつけ通り彼女とは関わっていない。元々、僕が彼女を追いかけ回していたようなものなので自然とその距離が離れるのも頷ける。僕は彼女が謹慎処分を受けたと聞かされた時、どこかホッとしていた。中には彼女の退学を希望する人もいたそうだが、僕としては彼女はルート様を助ける重要人物なので彼女が学校を去らないことに安堵していた。
「(これでとりあえず一安心なのかな…。)」
彼女がいつ戻ってくるかは分からない。しかし来年には戻ってきて欲しいのが僕の本音だ。僕は空席になった隣を見ながら度々、そんなことを考える。
この1ヶ月の出来事といえばこれといってなんの変化もない。ブルーマリーもヒロインと対立することがほとんどだったので、その相手がいないということは怒る理由もない。ある意味、穏やかに日々を過ごしている。僕といえばもうすぐ期末テストが行われるのでそれの勉強をしているくらいだ。
ついこの間、中間テストをしたばかりなのにもう期末なんて…。何故かこの1ヶ月が穏やか過ぎて嫌な予感がする…。