自白
「トルー様、元気ないですね?」
僕にとって唯一の友人であるセイロンが僕に話し掛けてくる。僕はそれに机に突っ伏したまま不満気に応えた。
「う~ん…前に兄様にバイオレット様に近付くなって言われて何も動けないんだ…。」
するとセイロンはフハッと笑うと「そりゃそうですよ!」と言う。
「まだ彼女の疑いが晴れてないのに近付くなんてお兄様が許さないのもわかります、それにトルー様は被害に遭われてるんですよ?尚更ダメです。」
彼まで同じことを言うなんて。
「そりゃあ周りが心配してくれるのは分かるけど、気になるものは気になるんだよ~…。」と僕が悶々としていると「そんな落ち込んでいるトルー様に朗報です。」とセイロンが笑顔になる。
「えっ⁉︎何!」
僕は飛び起きた。
「彼女が自白しました。」
「えっ…。」
セイロンの言葉に乾いた声が出る。
「あの影はやはり自分が操作して自分を攻撃したのだと、こんな大ごとになるとは思わなかったと言ったそうです。あと、よく分からない供述も。"私が主役なのに"と発言したそうです。」
えっ…ヒロイン、ポロっと言っちゃってる…。まぁ他の人からしたら主役とか言われても何のことかからないよね。
「取り敢えず、彼女の身辺捜査をした際に彼女のトラウマになるようなことが孤児院であったと判断されました。彼女には3つ年上のお姉さんがいらっしゃって、彼女も孤児院に保護されていたそうです。そのお姉さんは昔からとてもしっかりされた方で自然とバイオレット様にも周りがそういう期待をしていました。ですが、昔のバイオレット様は今の様に愛想も良くなく笑わない少女だったそうで、勝手に周りが期待してそうじゃないと分かると途端に離れていったそうです。それでいつも話題はお姉さんのことでバイオレット様はいつも1人だったと。だから"主役"であること、自分中心でなければ嫌だというのはそこからきているのではないかと言われています。更に今の男爵家に養子にしてもらう為に相当努力していたそうですから、きっとお姉さんより上の位の人に養子にしてもらい勝った気でいたかったんでしょうね。」
「…ちなみにそのお姉さんは?」
「そのまま孤児院で養母として働いているそうですよ。」
「そう…。バイオレット様の処遇は決まったのかな…。」
「まだそれは…。それにトルー様にしたことはまだ供述してないみたいです。」
いや、それはこの際どっちでもいい。周りはそうではないかもしれないが僕のことよりヒロインのことだ。せめて休学か謹慎にして退学だけは避けてもらわないと…!