ヒロイン登場
「(確かヒロインは迷って裏庭に行くんだった…!)」
僕は記憶を遡りながら目的地に急ぐ。
「(あっ!いた!あれだ!)」
裏庭に不自然な新入生が立っている。
僕がちょうど見つけるとヒロインは周りをキョロキョロと見渡し、困っているようだった。
「(おぉ!あれがヒロインか!茶髪でセミロングの髪型にクリッとした眼の可愛らしい感じの女の子だ。確か姉さんにゲームのジャケットを見させられたときにセンターにいたな…。このまま僕が助けてもいいんだけど…僕もここに詳しいわけじゃないし…とりあえず様子を見よう…攻略対象も確認しとかないといけないし。)」
僕は草むらに身体を隠すと、これから起こるであろうイベントを眺めることにした。
暫く様子を見ていると「…そこで何をしている?」
とヒロインに話しかける男性の姿がいた。
男性の風貌は赤髪に赤眼の少しキツそうな雰囲気で、ヒロインを怪しんでいる。
「あっ…あの…入学式に出たいのですが、会場が分からなくて…。」とヒロインが告げると「チッ。」と舌打ちをする男性。
僕もヒロインもその態度にビクッとなった。
「…こっちだ、来い。」
とその男性は面倒臭そうな顔をしながらも案内してあげている。
ヒロインも「…ッ…ありがとうございます!」とお礼を言い、着いて行った。
僕はその後ろ姿を見ながら「(あんな人、居たっけー?)」と記憶を掘り起こす。
その時「(あぁ!あの人、確かこの学校の生徒会長だ!姉さんがツンデレ属性だって騒いでた!)」と思い出した。
「(成る程…じゃあアレは一種の照れ隠しってこと…?でも舌打ちって…。)」
と半端、呆れていると入学式が始まるベルの音がする。
「(ヤバっ!早く行かなくちゃ!)」
と僕は会場に向かって走り出した。
その時、僕は入学式会場に間に合うことしか考えておらず、校舎の角から出てきた人とぶつかってしまった。
ドンッ
「すっ…すみません!」と思わず謝る。
その人は僕より体格が大きいらしくフラつく僕を抱き留めてくれた。
「いいえ、こちらこそ。」と和かに笑うその人は銀髪に緑眼の美しい人だった。
僕があまりの綺麗さに驚いていると「おや?新入生かな?」とその人は微笑む。
その瞬間「(入学式!)」と思い出した僕は「あっ!ありがとうございます!急ぎますので!」と男性に頭を下げ会場へと急いだ。
「何をしてたの、トルー!?ギリギリに戻ってくるなんて!」とブルーマリーが怒っている。
「ゴメンね、姉様。」と謝りながら隣に腰掛ける。
ご立腹のブルーマリーをよそに入学式は滞りなく進んでいく。途中、先程見かけた赤髪、赤眼の人が生徒会長として挨拶していたので僕の記憶は正しかったのだろう。
では、銀髪の人は誰か…。
僕がヒロイン見たさであの場所へ行ったばかりに予想外の人に出会ってしまった。
「(それによってストーリーが悪い方向に変わらなければいいけど…。)」と僕は不安になりながら入学式が終わるのを待った。
入学式が終わり、各クラスへ移動となる。
「(ヒロインとブルーマリーは同じクラスになるはず…じゃあ僕は…?)」
とドキドキしていると運良く同じクラスになることが出来た。何故ならこのクラス分けは実力重視、成績重視で決められるからだ。
「(…普通は姉弟って離されるものだけど、僕は飛び級してるくらいだからテストでは1位でブルーマリーは8位…ヒロインは…このクラスの最下位だったはず…。)」
この成績についてもブルーマリーはいつだったか、ヒロインにやっかみをつける。更にヒロインは平民出身なので、それについても馬鹿にするはず。
僕は「はぁ~…。」と溜息を吐きながら教室へと向かった。




