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没3  作者: 零眼のメルト
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「おい、早くしろよ。歩くの遅すぎだろ。」

「うるさい、こっちは怪我してんのよ。そんなに早く歩けるわけないじゃない。」

この村の探索に出かけて早々、もう既に喧嘩が始まった。まだ彼女たちが泊まっていたペンションは普通に見える距離でこの有様である。岳太が理菜につっかかって、緩音が鎮めるといったループである。彼女たちが出かける時、亜希も連れていこうという話になり、誘ったのだが、まだ彼女は落ち着けていない状態だったため、連れていけなかった。その間、芳江さんと共にいることになった。さて、喧嘩から始まった彼女たちの探索であるが、まだ立ちはだかる問題があった。

「あ、ここの村の地図持ってないけど…。」

そう、地図がないのである。ここの村がどれくらい広いのか、どこに何があるのか、そんなものは全くわからないのである。人類の叡智であるスマートフォンを用いた地図検索も、山奥の電波の悪さには勝てない。今彼女たちがいる魂集村は電波が一切通じていないのである。しかし、彼女たちはそう簡単に諦めるはずもなかった。小学生の飽くなき探究心というものである。彼女たちはリュックサックからスケッチブックと鉛筆を取り出した。自分たちで地図を書くことにしたのである。最初はペンションの方に聞いて地図を貰おうとしたのだが、折角ここにいるのだし、警察の迎えが来るまでは楽しもうということである。道を辿っていく途中で駄菓子屋や色々な骨董が売っている店があった。都会育ちの彼女たちにとって、そのような木造の店は珍しく見えた。さらに歩いていくと誰かが歌っている声を聞いた。彼女たちは声のする方に行ってみると理菜達と同い年かそれより下の子供達が歌を歌いながら盆踊りの様な事をしていた。まだ昼間だったのだが。そして、彼らの服装も着物や袴といった和装だった。3人が彼らを見ていると、彼らの1人が理菜達に気づいてヒソヒソと話し始めた。岳太が彼らのその様子にイラついてつっかかっていった。

「おい、お前ら喧嘩売ってんのか?なんかあるなら正々堂々と言えよ!」

緩音が岳太を抑えた。

「すみません!なんでもありません!ご迷惑かけました!」

理菜と緩音は岳太を引っ張りながらその公園から出ようとした。

「あんたら、外から来た人でしょ?」

彼女たちの後ろから元気のいい少女が話しかけた。

「そうです。」

こちらを警戒してた和装の少年少女達は急ににこやかになった。何か緊張から解けてホッとしたような様子だ。

「私はソノ、あんた達が噂のここに事故で来ちゃった人かい。」

「はい、車が崖から落ちちゃって。あ、私は理菜です。よろしくお願いします。」

「私は緩音です。」

「岳太だ。」

「よろしく、3人とも。まあ、ゆっくりしていきなよ。私たちと皆あんた達を歓迎するから。何か聞きたいことがあれば答えるよ。」

理菜は少し気になっていた事を聞くことにした。

「今日はお祭りですか?」

「うん、そうだけど…。よく分かったね。」

「着物を着ていたから……。」

彼らはキョトンとした表情をした。

「いつもこの服だけど……。」

「逆にあんたらすごい派手な格好しとるもんで、そっちがお祭り行くんと思っとった。」

坊主の少年がそう言ってガハハと笑い始めた。岳太はやっぱりつっかかっていった。

「なんだてめぇ!ふざけてんのか!」

「お?やんのか余所者が。」

「待てアホ!外の人傷つけたらいかんってお父ちゃんとお母ちゃんから聞かんかったか!バチが当たるぞ!」

「ああ、姉貴、すまんかった。」

緩音が岳太に正拳突きをかました。岳太はたまらず倒れた。

「あっちにも姉貴みたいに強い女の子がおるのう。」

幼稚園児くらいの男の子がそう言うと笑いが起きた。

「どうせなら私たちと一緒に踊らない?」

ソノが聞いた。

「はい、でも、私たちどうやって踊ればいいか分からなくて。」

「大丈夫。皆思うままに踊っとるだけやから、どんな踊りでもいいのよ。」

その後理菜達は公園での踊りに加わって踊っていた。歌の歌詞もだいぶ分かって、一緒に歌えるほどになっていた。


祭りなければ人はなし

祭りなければ神はなし

誰とそのとも知らぬ人

多く食らいて踊りましょ

食がなければ人はなし

肉がなければ力なし

神は飢えたる人々に

肉を与えて救ってな

一緒に力を貰ってな

食えば食うほど近づいた

祭りなければ人はなし

祭りなければ神はなし


気づけば太陽も傾き、少し暗くなっていた。

「はあ、疲れたね。」

「そうだね。」

「あんたら、暗くなる前に帰った方がいいで。『赤緋紅』に攫われるぞ。」

「せいひこう?」

「神とか祟りとか、でっかい力を持った化け物の近くに現れて、人とか犬とか生きとるもんに取り憑いて、そのでっかい力を持った奴に食わせちまう奴だ。」

「そうなんだ…。気をつけます。」

「すみません、ちょっといいですか?」

「かんねちゃん?だったよね。何かあった?」

「私たち、車が崖から落ちる前にお化けに襲われて……。」

「どんな奴?」

「姿は見えないけど、鎖の音をジャリジャリ立てて、追いかけてきて、でっかい刃物を持った奴です。」

ソノは顔をしかめた。

「そいつは色んなもの奪ってくるから厄介な奴だ。気をつけな。」

「なんか呼び名とかは無いのですか?」

ソノは首を振った。今までの元気な表情とは打って変わってとても深刻そうな顔をしていた。そして小さく口を開けた。

「そいつの話をすること自体が縁起の悪いことだから、気をつけてとしか言いようがないのよ。」

「そうなんですか……。すみません。」

「いいよ、あんた達が悪い訳じゃ無いし。とにかく少し暗くなってきちまったから早く帰りな。」

理菜達が帰ろうとしたその時、公園の入口の辺りに犬が走っていった。でも、何かがおかしい事に気がついた。その犬は丸で死ぬ寸前の様な姿なのに真っ直ぐに歩いているのである。その様子はまるで、寿命で死ぬ寸前の老犬の中に何かが着ぐるみの様に入っていて動かしているようだった。しかもその周りには怪しい赤い霧のようなものが出ている。

「赤緋紅に取り憑かれちょる!さっさと逃げろ!他の赤緋紅が来るぞ!」

公園にいた子供たちはわあわあと叫びながら走り帰った。理菜達も同様、ペンションまで走って帰っていった。帰るなり、ペンションの職員の人は子供たちが無事であるかを確認して、安心した様子だった。くたくたになった理菜達は部屋に戻って倒れるように腰を下ろした。扉を叩く音がしたので理菜は扉を開けると職員の人が立っていた。

「夕飯が出来ていますが、今から食べますか?」

理菜達はお腹がとてもすいていた為に大きくうなづいた。理菜は大切なことを思い出して職員の人に聞いた。

「あき姉ちゃんはどこにいますか?」

「まだ帰ってきていませんね。」

その時ペンションの前に軽トラックが荒い運転で止まった。中には芳江さんの夫と敦士がいた。芳江さんの夫は窓から顔を出し、叫んだ。その言葉は彼女たちを戦慄させるものだった。

「亜希と芳江が赤緋紅に攫われた!今から探しに行くから手伝ってくれ!」


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