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没3  作者: 零眼のメルト
1/5

とある夏の日、せっせと朝の身支度をする少女がいた。名前は正偶 理菜。ごく一般的な家庭で育った小学生6年である。テストの成績は良い、頭の回転は早い方である。

「リナ、忘れ物は無い?」

「うん、全部あるよ、ママ。」

その少女は腰ほどの長さに伸びた髪をツインテールに縛った。リュックの中には弁当、お菓子、水筒、地図、筆箱、レインコート、カメラ、懐中電灯、財布、その他荷物が入ってる。理菜は小学生の少女には少し重たげなリュックを背負って玄関で靴を履いた。そしてお気に入りの帽子を被った。

「リナ、これをいつもスグに取り出せる場所に付けておきなさい。」

そう言ってリナの父親は小さなボタンの付いた機械を渡した。

「もし、変な人に襲われた時とか迷子になったり、怪我をして動けなくなったらソレを押しなさい。」

「分かったよ、パパ。」

「うん、気をつけて行っておいで。」

「あまりお菓子を食べすぎてはダメよ。後皆と仲良くね。」

「はーい。」

少女は先程父親から受け取った、『緊急ボタン』と呼ばれる者をスカートのポケットに忍ばせた。

「それじゃあ行ってきます。」

「「行ってらっしゃい。」」


───────────────────


暑い… クーラーの効いた部屋に戻りたくなってきた… 公園までの道のりが長く感じる。リュックは以外と重く、ずっしりしている。公園にやっと辿り着くと3人友達がいた。

「おはよう、リナちゃん。」

他の子達よりも背の高く、年上のあき姉ちゃんが私に声をかけた。

「おはようございます。」

あき姉ちゃんの本名は方霧 亜希。中学二年生でいつも皆の世話や、私たちのリーダーとしているのでみんなから「あき姉ちゃん」と呼ばれている。

「よお、リナ。俺今日早かったろ。」

「おはよう、ガクタ。珍しいね、早く来るなんて。」

ドヤ顔をかましているソイツは海藤 岳太。私の同級生で学年一の力持ち、体型が同じ学年の人達に比べて、一回り横にも縦にもデカい。けど、トラブルメーカーでいつも何かで先生に怒られている。

「リナちゃん、おはよう。」

「おはよう、天ちゃん。」

ガクタのそばにいたそのメガネの彼は木賀峯 天斗。学年一の天才だ。常にテストで満点をとっていて、先生からも凄く褒められている。だから天斗と天才の天をとって「天ちゃん」と呼ばれている。いつもガクタといる。先生が言うことには「天ちゃんがガクタといるとガクタを起こる回数が減った。」との事だ。後1人、来てない。まあ、いつもの事だしな。そう思った瞬間後ろからとてもゆったりした声が聞こえた。

「ごめんね、少し遅れちゃった。」

そこで微笑んでいる彼女は久守 緩音。私の一番の友達。マイペースで歩くスピードを気をつけないとスグに迷子になってしまう。そんな彼女も急に人が変わったように行動的になる事がある。前にそうなったのは私が…

アレは思い出すのはやめておこう。交通事故だったんだけどね。後、彼女は空手を習っているらしく、1度ガクタと喧嘩になり、ガクタを倒している。彼女は髪の毛が真っ白で生まれつきらしい。家もとても歴史があって、代々柔道をしているみたい。

「これで全員揃ったね。忘れ物はない?」

あき姉ちゃんが皆に呼びかける。

「はーい!」


───────────────────


電車に揺られながら外の景色を見ている5人。電車の中で騒ぐわけにもいかず、流れてゆく景色を眺めている。5人が住んでいる所は都会よりの住宅街であり、自然の多く山の近く、所謂田舎の雰囲気は珍しいものであった。

『次は〜美永〜美永〜』

「皆、この駅で降りるよ。」

5人は木造の古びた駅に降りた。駅員が乗客の切符を回収している。街に出ると、いかにも田舎という感じである。5人は都会の騒々しさの中で暮らしていたため、静けさがとても新鮮である。

「あ、あそこにカカシが立ってる。俺本物初めて見た。」

「田んぼがとても多いですね。人も皆親切そうな人ばかり。」

道路を歩いていき、10分ほど経った。「美永キャンプ場」と書かれた看板が見えた。その施設に入っていった。最初に大きめの建物があり、5人は入った。眼鏡をかけた初老の女性が本をペラペラとめくっている。

「すみません、先日予約した方霧です。」

その女性は顔を上げて5人の顔を見た。

「おやおや、ようこそ美永へ。遠いところからわざわざ来てくださって。」

その女性は棚から鍵を取り出し、カウンターを出た。

「付いてきてください。部屋を案内します。」

そう言って歩きだそうとすると後ろから扉の開く音がした。

「おばあちゃん、ただいま!あれ、お客さん?」

そこに居たのはスカーフを頭に巻いた少女だった。買い物をしてきたのか大きめの手提げを持っている。

「そうよ。ほれ、挨拶しなされ。」

その少女は荷物を持ち替えた。

「アタイの名前は花芽 つぐめ。高校1年生、この店の買い物係をしてるんです。宜しくね。」

その人は何故か敬礼のポーズをとった。

「そうじゃった、孫に自己紹介させたが、わしがまだじゃった。私の名前は花芽 いさめ。見ての通りただの年寄りです。どうぞ宜しくお願いします。」

私達も礼をした。

「おばあちゃん、もしあれだったらアタイが案内するよ。ちょっと危ないからね。」

「そうかい、じゃあお願いするとします。」

つぐめはさっさと荷物を持っていきいさめさんから鍵を受け取って歩き出した。

「そう言えばアンタたちはどっから来たの?」

「私達は莱京から来ました。」

あき姉ちゃんが答えた。

「へえ、すっごい都会から来たんだぁ。てことは、皆電車とか乗り慣れてる感じ?」

ガクタ以外が頷いた。ガクタはつられて首を縦に降った。

「アタイなんて中学生の頃なんて年に1度電車に乗るか乗らないかだったよ。高校になって電車通学になったけどね。」

私はそう言えばと思って後ろを見た。カンネちゃんがぼーっとポスターを眺めてた。

「カンネちゃん!置いてかれちゃうよ!」

私が呼ぶとカンネちゃんはハッとしたようにこっちを見て、小走りで走ってきた。

「このログハウスね。」

私達はログハウスを借りていた。かなりお金はかかったが、5人でこの日のためにお小遣いをコツコツ貯めてきたのだ。

「それじゃ、ごゆっくり。」

「ありがとうございます。」

私達はログハウスに入った。荷物を置いて、予定を確認した。11時からハイキングと昼ごはん。19時からはBBQの夜ご飯がある。今日も楽しみだ。


───────────────────


BBQも終わり、私達はログハウスに戻っていた。つぐめさんとも仲良くなって、一緒に楽しんだ。いさめさんもニコニコ微笑んでいて、とても楽しい一日目だった。私は座布団の上に腰を下ろした。一息ついて目を瞑った。楽しい思い出を思い出し、嬉しくなっていた。目を開けるとふとなにかに気がついた。扉に何か挟まっている。

「リナ、みんなでトランプやろうぜ。ババ抜きやるぞー」

「僕は大富豪がいいです。」

「え?俺そのルール知らないぜ。」

「え?あ、うん。ちょっと待って。」

私は扉に挟まっているモノをすっと引いて手に取った。それは御札だった。古くてふにゃふにゃしているが、変な模様が1面に描かれている。御札に二文字大きく文字が描かれている。でも、かすれていてどうにも見れない。全体的に赤く、何か分からなかった。

「どうしたのリナちゃん?」

後ろを振り向くとすぐ真後ろにカンネちゃんがいた。私はびっくりして尻餅を付いた。皆が笑っている。私は恥ずかしくなって顔が赤くなるのが分かった。するとドアをノックする音が聞こえた。私は起き上がってドアを開けた。そこにはつぐめさんがいた。

「さっき叫び声が聞こえたけど、虫が出ちゃった?」

「すみません、私がただ驚いただけです。」

「そっか、大事じゃなくて良かった。」

「すみません、わざわざ来ていただいて。」

つぐめさんはスカーフを直した。

「今日お邪魔していていい?」

私達は目を見合わせた。皆ニッコリと笑った。

「いいですよ。」

「ありがとう。それではお邪魔します。」

つぐめさんは私達がトランプを中心に作っていた円の中に入った。

「ふう、少し暇になってね。実はお客さんもっといたんだよね。」

つぐめさんは少し呟いた。

「え、どういうことですか?」

「あっとね、実はここに中学生の空手部も泊まることになってたんだけど来なくてね。忙しくなると思って、職場の人がたくさん来たけど、君たちしか来ないからね。」

「…連絡とか取れないんですか。」

あき姉ちゃんが不安そうな顔で聞く。

「…うん、取れてない。しかもバス業者の会社もバスの運転手と連絡が取れないらしい。」

なんだか不気味な雰囲気が漂ってきた。私はふと思い出したようにポケットからあの御札を取り出した。

「「え?」」

つぐめさんとカンネちゃんが驚いた顔でこちらを見ている。

「ごめん、少し貸して。」

カンネちゃんが真剣な表情になっている。何かあったのか。二人はカーテンを開け、御札に月の光を当てた。御札は月の光が当たるとその部分だけ青い色になり、まるで急に新品になったようだった。

「これ、凄いね。何かのお宝かな?」

私は二人に話しかけたが、何故か二人は固まったままだった。私は二人の手元にある御札を見た。そこにはさっき見えなかった文字が見えていた。一文字難しくて読めない。

『月爪』


───────────────────


「カンネちゃん、さっきの何だったの?」

「んー、ウチの無くなったお宝だよ。まさかこんなところで見つかるなんてね。」

「そうなんだ。見つかってよかったね。」

二人はお風呂を済ましてログハウスに戻る途中で話し始めた。少し薄暗い森の道を歩いている。亜希はつぐめから高校受験について聞いていて、岳太と天斗はまだ出てきていない。

「そう言えば、カンネちゃんの家って凄い大きな家だよね。」

「うん、空手で大昔から有名みたい。」

久守家。おおよそ江戸時代から続く家系であり、代々柔道と空手の流派である「久守流」の継承をしている。現在は緩音の祖父が投手である。時期継承者は緩音の父である。今はまだ決定してないが、彼女の父親から継ぐのは緩音である。彼女は才能の上に努力を重ねた結果2人の兄を打ち負かすほど強くなったのだ。

「あのお宝、もう1回見せてくれる?」

「うーん、ごめん。もう頼んで送ってもらっちゃったの。」

「そっか、残念。」

急に理菜が足を止めた。顔は青ざめ、汗がダラダラと出ている。緩音は優しくハグし、励ました。

「大丈夫。止まっちゃダメ。」

二人はまた歩き始めた。二人の耳には後ろから付いてくる鎖を引きずるような音を聞いていた。それは徐々に近づき、今は既にほぼ真後ろから聞こえてきているのであった。

ガチャリ… ジャラ…ジャリジャリ…

その音は止まることを知らない。理菜はフラフラとしていて、それを緩音が支える。息遣いが聞こえる。息を不気味に吐き出すおとが頬に吹きかかっていると感じるほど近づいていた。緩音も目を瞑り覚悟した。

ギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリ!!!!


二人は驚いて跳ね上がった。理菜が倒れて緩音に支えられた。緩音が素早く後ろを見ると、そこには疲れきった顔のつぐめがいた。手にはギザギザの金属でできた板と鉄の棒を持っていた。

「二人とも、大丈夫!?アイツの姿見てないよね!?」

「大丈夫です。助けていただいてありがとうございます。」

緩音は力が抜けてへなへなと座り込んだ。

「よかった。久守家の娘さんだもんね。この類の対処法は分かってるみたいで。心強いよ。」

「あの…つぐめさん。」

「…ん?」

「やっぱりつぐめさんって…」

つぐめさんが口の前でバツを作る。

「聞かれたら困る。」

緩音は黙ってうなづいた。


───────────────────


つぐめさんは私達をログハウスに送ってから置いてきてしまったあき姉ちゃん、あとガクタと天ちゃんを迎えに行った。

……

まさかこんなところで…彼女もだが、あの御札。アレはきっとお爺様が言っていた、とんでもないものだと思う。とりあえず何とかするにも私じゃ力不足だから早く父上とお爺様に言わなきゃ。だってアレは強すぎる。『月爪』…。リナちゃんの方を見た。さっきの怪異をつぐめさんが追っ払ってから眠っている。ログハウスのドアをノックする音が聞こえたのでドアを開けた。

「ありがとう、カンネちゃん。」

「つぐめさん、ありがとうございます。」

「どうってことよ。」

つぐめさんは頭に巻いたスカーフを取った。アホ毛がピンと立つ。

「つぐめ姉、オレは幽霊なんて出てきてもぶん殴って倒してたぞ。」

ガクタが拳を握ってニヤニヤしている。

「ガクタ、今はホントに危ないから。」

ガクタは渋々拳を下ろした。私に喧嘩に負けてからこの調子だ。

「カンネの奴、スイッチ入ってるな。」

「それほどとんでもないことが起こってるんじゃないですか。」

ガクタと天ちゃんがひそひそ話をしている。

「ごめん、カンネちゃん。リナちゃん起こしてくれる?」

私はうなづいた。リナちゃんの名前を呼びながら揺すった。

「うん…ん?」

リナちゃんが目を覚ました。よかった。

「私、いつ寝ちゃったの?」

「さっきあの時だよ。」

リナちゃんの顔が青ざめていく。うつむいて少し震えている。

「あの、何が起こっているのでしょうか。」

あき姉ちゃんがつぐめさんに聞いた。

「ああ、えっとね、こっから先はかなり真面目な話になるからおふざけ無しでね。」

つぐめさんが全員を見渡した。

「ええっと、簡単に言うと、ここの近くは今怪異、あーっと幽霊とか怪物とかに囲まれている。だから絶対に外に出てはいけないっていうことでね。」

「怪異…ですか。」

「うん、うじゃうじゃとね。」

ガクタがまたニヤニヤしている。天ちゃんは首を横に振っている。

「幽霊か、面白そうだな。今日は肝試しか?」

「ガクタ!今はおふざけは無しって。」

「あの、お言葉ですが、つぐめさんもカンナ君も幽霊をお信じで?」

天ちゃんが割って入った。

「そんなものは存在するわけがないでしょ。だって大体聞き間違い、見間違いなわけで、全部化学的な証明がなされてるんですから。そんな作り話をマジのように話すのはやめてください。」

沈黙が広がる。天ちゃんの目は少し勝利の色に輝いた。

「あっそう。」

つぐめさんはたった一言で追っ払った。そこにはバカにしたり、得意になっている表情はなかった。

「で、これからの事なんだけど…」

「ちょっとあのですね!僕の話を無視しておいてまだ続けるっていうんですか!?いくらなんでも大人気ないですよ!年下の僕達を怖がらせてそんなに面白いんですか?早く答えてくださいよ!」

「そうだ!そうだ!」

つぐめさんはため息をついてチラッと目線を逸らした。その目線の先はあき姉ちゃんだった。しかし、あき姉ちゃんは窓を一点に見つめガタガタと震えている。

「そうだな。怖がらせて楽しんでるのは断じてアタイじゃない。アイツらだ。」

つぐめさんは窓を指さした。そこには無数の顔、目、手、指、足、口…

私は息を飲んだ。リナが叫び、それに呼応してあき姉ちゃんも叫んだ。ガクタは後ろによろめいた。天ちゃんは相変わらず。

「バカバカしいですね。どうせ何か細工でもしているんでしょ。向こう側から見てきますよ。」

天ちゃんが立って玄関に向かった。つぐめさんは止めない。私は止めようとして立ち上がろうとした。

「どうせ出られないよ。」

つぐめさんが呟く。天ちゃんは一瞬こっちを見たが、扉に手をかけた。しかし、開かない。

「くっ…なんで開かないんですか?」

「向こうから開かないように細工しておいたの。」

天ちゃんがつぐめさんを睨む。

「じゃあ、出られないじゃないですか!」

「私が朝になったら出してあげるから、こんな状況で夜の中に飛び出そうなんてことは考えないで。」

天ちゃんは地団駄を踏むがごとく足を踏み鳴らしてもと座っていた所にまた腰を下ろした。窓にあった無数の何かはもう消えていた。

「話戻してもいいかな。」

私はうなづいた。天ちゃんは不機嫌そうにしていたがガクタはオドオドしていた。リナとあき姉ちゃんはガタガタと震えている。

「これからの事だったね。明日、私付き添いで、ここの職員の方に車で直接久守家まで送ります。」

「僕達だけで帰れますが」

「「黙れ」」

私とつぐめさんが同時に言った。つぐめさんも流石にイライラしている。

「危ないから、いや、ここまでしても充分危ないけど…」

つぐめさんが1度深呼吸をして顔をあげた。

「とりあえず、今日は寝よう。どうせ夜に起きてても怖いものしか見ないじゃない?」


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