くそビッチは幼馴染みと仲が悪い
ぶ〜んぶ〜んぶ〜んぶ〜ん
スマホの着信が鳴り響く。昨日はあんなことがあったせいでなかなか寝付くことが出来なかった。そんな寝不足の頭ではなかなか意識を覚醒させることは出来ないでいた。
何も考えずスマホを取り電話に出る。
「おーい!何時まで寝てんじゃーーー‼︎」
一瞬にして、俺の意識は覚醒した。スマホ越しから聞こえる騒音によって。
「声でけーよ!鼓膜破れたらどうすんだよ椛!」
騒音の主は、幼馴染みで同じ高校に通っている小宮山もみ……
「椛代われ。おーい!今何時か分かってんのか!」
「……へぇ?」
時刻は八時一◯分。今出掛けないと明らかに遅刻だった。
「ああああぁ〜〜〜‼︎」
今まで無遅刻無欠席の俺の頑張りに傷がついてしまう。それだけは阻止しなければ。指定校推薦を手に入れるために!
急いで家を出ると玄関の前に騒音の主の小宮山椛と村田秀一が立っていた。
「おら、急ぐぞ遥希!」
「遥希〜遅いよ〜これじゃ〜遥希だけじゃなく私も指定校推薦取れなくなっちゃうよ〜」
こいつらは昔からの腐れ縁ということもあり寝坊した俺を待ってくれていた。
でもなら、そんこと言うなよな椛。理想を抱いて溺死しちゃうよ、罪悪感で。
時刻は八時一五分。
今からなら間に合う。動け!俺の足!ペダルを回せ〜!
あ、一応俺らは自電車通学です。結構近いし学校。
俺は、『妖怪ペダル回し』と言われるくらいのハイケイデンスでママチャリを漕いだ。
「「「俺たちは強い!!!」」」
◆ ◆ ◆
一応、HRに間に合った俺たちは遅刻は免れた。
担任の俺ら生徒には興味のない必要事項は全く耳に入って来なかった。
間に合った達成感と高揚感で三人して顔見合わせる。
椛も秀一も同じクラスメートで席も近い。正直、今のクラスが一番楽しい。
ただ、あの女が、平沢きららがいることを除いて。
俺が一瞬平沢を見ると目が合う。
すると、平沢は手を振って口パクで
ア・イ・シ・テ・ル
今日登校して改めて実感した。俺はこのくそビッチに本当に目を付けられてしまったんだど。
HRが終わると椛と秀一が近づいてくる。
そして、にやけながら秀一が口を開いた。
「なぁ、お前ついに目を付けられてたんだってな」
「何にだよ」
「そんなのあのくそ女に決まってんだろ」
秀一が俺に茶化しに来たのだ、平沢のことを。
「はぁ〜勘弁してくれよ。俺マジで困ってんの」
俺が本当に疲れた顔をすると秀一は一層笑顔になる。
「お前のそういう顔………好きだよ」
「死ね」
俺と秀一が話していると沈黙していた椛が口を開いた。
「ね?さっきの話、本当かな?」
椛は表面上は笑っていた。しかし、あきらかに目は笑っていなかった。
「だ、大丈夫だって、も、も、椛!こいつが簡単に堕ちるわけないって!」
「秀一には聞いてない。ただ質問に答えて遥希。さっきの話は本当?」
秀一の言葉はきっぱり切り捨てられ、椛は俺の方を向く。
というかずっと凝視されてたけど。
「狙われてるのは本当だけど、俺は堕ちるわけないから。大丈夫だから!」
「そう」
椛は、一度俯くと鬼の形相であいつの席へ向かう。
俺たちには椛を止めることは出来なかった。
「おい、遥希よ〜い。どうするだよ。朝から修羅場すぎんぞ」
「本当、もう誰か助けてよ」
いつも助けてくれる親友は一人は当事者に一人は傍観者と化した。
椛が歩いて来るのに気付き、あの平沢ですら顔を引きつらせる。
「やぁ!もみっちゃん!ど、どうしたの〜?私なんかに」
「殴るわよ、このあま」
誰にでも温厚で、笑顔を絶えさない椛には、どこにもいなかった。
「わかってんでしょ。私の怒っている理由」
「い、い〜やでも一応は善処はしたんだよ〜」
あの男には絶対に主導権を取らせない平沢が完全に押されていた。俺の温厚は幼馴染みによって。
なんか、はたから見れば不良に絡まれる優等生みたいな構図になってるな。
「私…言ったよね?遥希には手を出さないでって。あんたが約束したから、今まで私たちは動いてなかったのよ?」
「ご、ごめんよ〜〜でもすぐ終わるから。そしたら返すから〜〜」
ブチッ
完全に椛の堪忍袋の尾が切れた。
「お前…許さん…絶対に!」
キンコンカンコン
話が激化しそうだった時、救いのチャイムが鳴る。
助かったのか?
「あんたは、私たちを敵に回したってことだから。それだけは覚えておいて。それじゃ」
「ふぇ〜〜こわい〜〜」
ここで、話は終わったがクラスに重い空気が残る。
あれ?なんで、怒ってんだ椛は?
「別にもみっちゃんだけが遥希を好きなわけじゃないのに〜〜」
修羅場が終わった後、平沢は何かブツブツ言っていた。
ま、聞く気はないが。
俺のじゃないけどビッチと幼馴染みが修羅場すぎる!