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出会う奇跡の咲く道に  作者: はなさき
第一章 初めての出会い 
3/16

3話 食卓と出発

「き! さき! 咲ってば!」

突然、私を呼ぶ声が聞こえてきた。


バタバタバタ


こちらに向かってくる忙しい足跡が聞こえてくる。


バタン


そして、不意に扉が開く大きな音が聞こえた。


「咲!」


さっきと同じように誰かが私の名を呼ぶ声が聞こえて、私は眠たい目を擦りながらベッドから起き上がった。

どうやら私は鈴香さんと秀さんに会った後、藍姉と一緒に帰って、自分の部屋に入って寝てしまったようだった。


拓弥さんが誘ってくれたとはいえ、思ってたのと違った出来事と久々に長時間話したので疲れていたのだ。

でも、初めて会った鈴香さんと秀さんと会って良かったと思っている。


部屋の扉の前を向くと、そこには私の名を呼んだ人物、藍姉が不機嫌な顔をしながらこちらを見ていた。

不機嫌になりたいのは私なのに……。


「咲、いつまで寝てるの! 晩御飯なのに!」

藍姉は私の気持ちも知らず、怒鳴りつけるような大きな声を出した。いつまでと言っていたけれど、実際そんなに経ってなかった。それでも、寝起きの私の耳には鼓膜が破れるんじゃないかと思うほどの大きな声だった。


「分かったから。今、リビングに行くから!」

私は寝起きにも関わらず、藍姉の言葉と同様に大きな声で答えた。


「早くしてね! 何時だと思ってるのよ」

藍姉はそう言い残して私の部屋から出ていってしまった。私は、少し休んでからリビングへと向かった。




私がリビングに着くと、食卓には既に今日の晩御飯が並んでいた。藍姉とお母さんとお父さんが座って待っていた。

「咲、早く座って! いつまで待たせるのよ」

私は無言のままその場に立っていたので座っていた藍姉が待ちきれないのか私に座るように言った。


「藍、落ち着きなさい」

お母さんは藍姉に言う。


「ごめん」


「いたっだきまーす」

私が食卓の椅子に座るのを合図に藍姉が元気に声を出した。


私は食卓に座ると、直ぐに食事を口にはせず、お父さんをチラッと見た。お父さんは私に気付かなかったけれど、もう一度チラ見をする。すると、その様子に気付いたお父さん。


「何だ?」

「ん?」

あまり良くない雰囲気を漂わせる声の低さで問い掛けるお父さんだったけど、視線は私のほうを向いていないものだからお母さんが首を傾げて反応していた。


「……」

私は黙っていた。


「おい、咲。どうしたんだ?」

しかし、お父さんは無視するところかしつこく更に問い掛ける。


「何も、ないよ」

苦笑いをして答えた私。藍姉とお母さんはぽかんと『何の事?』と言いたそうな様子だった。

けれど、二人は何も言わずそのまま食事を続けていた。

「そうか。一人で抱え込まないで誰かに頼りなさい」

「はい、」

予想外のお父さんの言葉に驚いた。


あの時と変わったと感じた瞬間だった。あの時のお父さんは私に好きな人がいると分かった時は厳しい顔をして私を睨みつけた人だった。

だから、今のお父さんにちょっとだけ安心したものもあった。


それから私はやっとの思いで箸に手を伸ばし、食卓に並んでいる食材を目にした。茶碗には湯気が立つ程の熱々の白米があり、定番のおかずの唐揚げがあり、その他にも餃子や温野菜がある普通の食卓だけど、いつもより豪華な気がした。

確か、久々に家族揃っての食事だったけ。


実を言うと、優真さんが亡くなって少し経ってから家族で食事をする事があまりなかった。

私が落ち込んでいた時期があったからかもしれないのもあるけれど……。

その後、私達は今日の出来事やその他の事を話しながら食べたのだった。



________________


二日後。


鈴香さんと秀さんの幼馴染みである龍輔さんの命日の日がきた。


朝起きると、私は藍姉から教えてもらった鈴香さんのメールの連絡先に連絡をした。

待ち合わせの確認の連絡だけれども、それよりもなぜ藍姉が連絡先を知っているのかを考えると疑問が浮かんだ。と同時に再び私だけが仲間外れにされた気持ちになった。


私はお墓参りに行く為に出掛ける準備をして家を出た。待ち合わせ場所の駅に着くと、鈴香さんと秀さんが来ていた。


私に気が付くと、手を振って「こっちだよ」と言わんばかりに手招きをして合図をしていた。


「咲ちゃん、急なお願いで御免ね。今日はよろしく」

二人の居る場所まで来ると、鈴香さんが微笑みながら私にそう言った。

秀さんは鈴香さんの言葉の後に私に挨拶するように軽く会釈をし、鈴香さんを横目で心配そうに見ていた。私から見たら、今の鈴香さんはそんなに心配そうに見るほどの元気がないわけではないのだけれど、何かあるのかなと思い始めた。


「そういえば、咲ちゃんって車大丈夫かな?」

突然、秀さんが私の方を見て尋ねてきた。


秀さんの質問に私は頭にクエスチョンマークを浮かべて首を傾げた。


「もしかして、車苦手かな? 長時間乗ることになるけど、酔いとか大丈夫かな?」

秀さんが言葉を続けて問い掛ける。私は必死に首を左右に振った。

「車は大丈夫ですよ! 酔いません」

私はそう答えると、秀さんは安心した表情に変わった。


「良かった! じゃあ、今から車の場所に案内するから僕達についてきてね!」

「はい!」

私が元気に返事をして車の場所へ移動しようとした時だった。


私と秀さんは歩みを進めるのに鈴香さんはまるで静止するロボットのようにその場に立ち止まったまま動かなかった。


その様子が予想していたのだろうか秀さんは鈴香さんの肩を叩いて「すーちゃん」と声を掛ける。

けれど、鈴香さんはそれでも上の空で気付いてない。すると、それも予想していたのだろう。秀さんは鈴香さんの腕を掴んでは「行くよ!」と言って引っ張り無理矢理連れていこうとする。


「秀! また私ったら。御免。もう大丈夫だから離して。行こう、咲ちゃんも」

鈴香さんは我に返って、私達と一緒に歩き出した。


さっきのは何だったんだろう。鈴香さん、大丈夫かな...…。

秀さんの心配そうな表情が今になって分かった。鈴香さんは何かを抱えてる。そう思うと、私も秀さんと同じように鈴香さんの事が心配になった。


数分後、数メートル先にあった駐車場にある車の前に止まった。車は至って普通の軽自動車だった。


秀さんが運転席に乗り、助手席には鈴香さん。その後ろの席に私は座った。

「だいたい一時間半くらい掛かるけど大丈夫かな?」

秀さんが私の方を向いて私に聞いた。

「大丈夫です」


「咲ちゃん、本当に御免ね」

鈴香さんがそう謝った。

「こちらこそわざわざすみません」

私もつられて謝ってしまったけれど、どうやらさっきの何かを抱えてそうな表情は消えていた。

私の見間違え? と疑ってしまう程に。


「じゃ行くね」

秀さんの言葉で車が動き出した。


私達は車に揺られて『龍輔さん』という人のお墓参りに向かったのだった。

次の更新は1月27日の水曜日の予定です。

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