❄✧☆【OTA1】雪のこぼれ話と小さなグノームたち(1/3)☆✧❄
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【 OTA1 】
雪のこぼれ話と小さなグノームたち
(1/3)
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✰✰✰
【OTAについて】
OTA(Original Text Animation)は、
本編とは少し距離を置いたかたちで描かれる
“外伝的テキストアニメーション”です。
物語の流れから一歩外れ、
季節の空気や、特別なひとときを、
より自由に、気ままに切り取ります。
今回は――
雪と灯りに包まれた、小さな冬のお話。
どうぞ肩の力を抜いて、
あたたかい気持ちでお楽しみください。
❄️ それでは皆さま、よい冬を。
――少し早めの、メリークリスマス&ハッピーホリデーズ。
✰✰✰
「走れソリよーーっ!!」
『風のようにぃぃーーっ!!』
「月見原をぉぉーー!!」
「『 パドゥル パドゥルゥゥゥ!!!
ぷはははははッ!! 』」
「……な、なにそれ……?」
気むうが、じと〜っとした目でうちを見てきた。
「っははは、ちょ、これこれこれ!!」
うちは腹抱えて、イスシアの方を指さす。
『こっちのオタク文化、マジで腹筋死ぬわ、姉ちゃん。
ほらほら、もっと探しぃ!!』
「はいはい、お嬢さん方。歌っとる暇あるなら歩け歩け。
この辺から雪、だいぶ深くなってきてるぞ。」
マイルズがそう言って、前を行くうちらに呆れた視線を向けた。
見渡すかぎり、一面まっ白。
……いや、マジで全部真っ白やん。
けど本来なら、もうすぐ果樹林エリアの出口に着くはずなんよな。
ちなみに──
ここ数日、その果物たちはガチガチに凍ってもて、
木にぶら下がっとる状態のまま、完全に“冬眠”しとる。
寒さの方はというと……
三日前、見事に風邪ひいて死にかけた。
せやけどマイルズが、冬用の簡易魔術を教えてくれてな。
「体温だけをちょい上げる」、そんな冬仕様のスペル。
人間ストーブにならんギリギリの調整やけど──
……これが、めっっっちゃ便利なんよ。
魔法って、ほんま実用的やな。
『……なぁ、お前ちょっと黙れへんか、猫。』
……。
マイルズは全然反応せん。
聞こえてへんらしい。
『ふん。』
「で、イスシア。……そっちはどうなん? 地球、今どんな感じなん?」
『んー? ちょい待ち……
“地球”ねぇ……
はいはい、そっちの世界の──
ああ、これや。
……ふむふむ。めっちゃ華やかやん。
イルミネーションと緑の飾りだらけで、完全に“冬の祭りモード”。
どう見てもクリスマス直前やな、これ。』
「そらそうやろ。人間ども、年末で金むしる気満々やし。
クリスマスなんて、一番ええ“稼ぎ時”なんよ。」
『人間の経済とか、うちは興味ないわ。
ああいう社会のゴタゴタ、関わったら負けやろ。』
「まあ、そやな。
もしうちがあんたみたいな“全知全能っぽい薔薇”やったら……
経済とか社会とか、全部どうでもええわ。」
『……話分かるやん、姉ちゃん。』
相変わらず、道中は全員で止まらん雑談大会。
いつものことや。
そんな中──
うちらの前を、野ウサギみたいな勢いで
人型の小さな影が、ぴゅっと横切った。
身長は……せいぜい、うちらの太ももくらい。
ちっさ。
全員、思わず足を止めて、その光景を見送った。
「ちっさ……え、ドワーフやん!!」
そう叫んだ瞬間、うちはもう走り出してた。
「待て、神い!!」
マイルズが慌てて追いかけてくる。
「……はぁ……」
気むうも、心底めんどくさそうに後ろから続く。
「ははっ、なんて行動力だ。ほんと冒険者向きだねぇ!」
最後尾から、フルカフトの呆れ混じりの笑い声。
その小さなドワーフは、
凍りついた果物を木箱に詰め込んだまま、
明らかに焦った様子で走っていた。
「ひっ……!?」
後ろを振り返って、うちらに気づいた瞬間、
びっくりした声を上げて──
さらにスピードを上げた。
「ふふっ。」
そう言いながら、うちは遊ぶみたいに追いかけた。
ドワーフは必死で、
木々のあいだや、太い根っこの隙間──
自分だけが通れる場所へと、するする潜り込んでいく。
「おい、待てって!!」
うちは枝を避け、根っこを飛び越え、
必死に追いつこうとするけど……
いや無理やって。
さすがに、体格差ってもんがある。
「うぐっ!!」
「神い!! ちょ、落ち着け!!」
マイルズの焦った声が後ろから飛んでくる。
「……うぅ。」
気むうは、何か言いたそうにして──結局、黙った。
「ロアァァッ!!」
フルカフトが、枝をかき分けながら唸る。
その頃──
哀れなドワーフはというと。
完全に涙目、冷や汗だらだら。
“理性ちょっと怪しい集団”に追われてるとは思えん勢いで、
死にもの狂いで逃げ回っていた。
「や、やめてくれぇっ……!
な、なにも持ってないから!!」
ドワーフはそう叫びながら、
二本の木のあいだへ、必死に身体をねじ込んだ。
「ま、待てって――!」
……その瞬間。
──ズルッ。
「っ……!」
足元の太い根っこに引っかかって、
うちは派手に前のめりに転んだ。
「ま、待っ……――あっ……?」
顔を上げた、その先。
そこに広がっていたのは──
小さな村。
それも一つや二つやない。
見渡すかぎり、
ちっちゃな家、ちっちゃな道、ちっちゃな広場。
数えきれんほどのドワーフたちが、
笑いながら、話しながら、
村じゅうを飾り付けていた。
灯り。
緑のリース。
雪に映える色とりどりの装飾。
……作り物ちゃう。
ほんまもんの、
あったかいクリスマスの空気や。
「……おお……」
思わず、声が漏れた。
「神い!!」
マイルズが追いついてきて、息を切らす。
「……なんだ、これは……」
「いやぁ……こりゃあ……」
フルカフトも足を止め、
目の前の光景に、素直に息を呑んだ。
立ち上がろうとした、その瞬間──
目の前に、数人の小柄な影が立ちはだかった。
軍帽みたいな帽子をかぶったグノームたち。
そして、その中央に立つのは──
これでもかってくらい立派な、長く白いヒゲの老人。
その背後には、
さっきまで必死に逃げていたあの小さなグノームが、
怯えきった顔で隠れるように立っている。
「おい!!
お前、ウィリーに何をしようとしてた!? あぁ!?」
老人が、低く響く声で怒鳴った。
「ひっ……!
い、いえっ……な、なにもしてません!!
えっと……だ、大きな……えらい……方!!」
「ワシは“ドワーフ”じゃない!!
……グノームだ!!」
「し、失礼しました!!
偉大なるグノーム様!!」
「……ふん。」
鋭い視線が、うちを貫く。
「それで……
お前は何だ?
チュクワル人か? それとも魔女か?」
「に、人間です!!」
「……人間?」
老人は白ヒゲを撫でながら、
ゆっくりと言葉を反芻する。
「人間……人間……
聞いたことのない種族だな。」
「あ、えっと……
わたしたち、別の位相から来まして……」
「……別の位相?」
「はい。」
「………………ふむ……」
その一言で、
場の空気が一段、重くなった。
「ぷ、プリーズ……!
飾り付け、手伝わせてくださいぃぃ……!!
ずっとやってみたかってん……お願い、お願い、お願いぃぃ!!」
地面に座り込んだまま、
うちは両手を合わせて、必死に拝み倒した。
「う、うーん……
まぁ……人手は、確かに足りてへんけど……」
「やったぁぁぁ!!」
その瞬間、ぴょんっと立ち上がって、
服についた雪をばさばさ払う。
「ほらほら、みんな!!
デコレーション行くでーーっ!!」
「……やれやれ。」
気むうが、いつもの調子で小さく息をついた。




