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第19話:……とクリーム

「待ってたわよ、ドビッチ。」

香蒂 シャンディが、ラスボスっぽいオーラ撒き散らしながらニヤっと笑った。

……てか、“撒き散らし”ってレベルちゃうでコレ。グリッチ粒子、ピカピカ飛んでんねん。どこのRPGや。


「はぁ? 今度はなんや、“ミス・チャイナ”?」

うちの口が勝手に動いた。脳より先にツッコミ出るタイプ。


「チャイナ? ……アンタ、さっきから何度もそれ言ってるけど、なんなんそれ?」

眉ピクッ。殺気と素の疑問が半々。


「……いや、なんでもない、忘れて。」

あ、ヤベ。ここチュクワル国やったわ。

(設定うっかりミス=命の危機。異世界って怖っ。)


「まあええわ、要はアンタがここにおるってことや。──で、今度こそ殺すから!」

香蒂が突然、決戦スピーチ始めよった。即興のわりに勢いだけは一級品やな。


「おいおい、前回うち爆発であんた吹っ飛ばしたやんか。」

うちは鼻で笑って、ちょい煽りモード突入。


「……そ、そうよ! 確かにすごい爆発やったけど……くっ、でもそれでもアンタを殺すんだから!」

顔真っ赤。テンプレ怒りヒロイン。ある意味プロ。


「へぇ? で、どうすんの? 言うだけタダやけど?」

距離とりつつ、声はわざと冷め気味。


「し、勝負よ!! 爆発なし、変なギミックなし、素手で殴り合い!!」

……って言いつつ、息切れしとるやん。舞台のテンポずれてるで。


「あー、じゃあ針はナシってことな?」

軽く笑いながら聞くと、香蒂が目見開いて、

「ち、違う! 針はアリ!!!」

って叫んだ。いやどっちやねん。


「はいはい、針オッケーね。ルール理解。」

うちは両手上げて降参ポーズ。完全に優位。


(……なんでこう、漫画みたいに話まとまってくんやろな。便利やけどツッコミ追いつかへんわ。)


香蒂シャンディが床を蹴った。

速い。けど、見える。うちの〈スピード〉が足首で“ピッ”て点灯、〈パワー〉は肘の奥で低く唸る。

赤い袖(肘まで)ひらり。指ぬき黒グローブが鳴った。

右、針。左、拳。はいはい、全部、紙一重でスルーや。


「なぁ、そこまで必死になって、誰が幸せなん?」

黒ショートの裂け目に風。ベルトのサイド布がひらっと舞う。

「怒って針投げて、婚前に流血ショー? 花嫁衣装どこ行ったんや」


「黙れッ!!」

ガンッ。拳が来る。

半歩下がって、ブーツで砂を切る。鼻先で通過。……惜しい。

「せやけど、うちの顔殴っても、浮気した彼氏の心ん中は治らへんで?」


「うるさいって言ってるでしょ!!」

三連の針。縦、斜め、のち真上から。

うちは体ひねって、肩すかし。

(ほんま器用やな。マルチタスク女王か)


怒りが加速を連れてくる。

次の拳、重い。空気が鳴る。

ゴッ——頬に擦過。熱い線。

「……ほーん。やるやん」

口数、少しだけ削る。舌の血の味、ちょびっと。


さらに一歩、食い込んでくる。

針が太腿の外側をかすめ、サイド布を裂いた。

ビリ。

(あー、それ高かったやつ。あとで返してもらうからな)


呼吸を落とす。胸のメトロノームを、一定に。

避ける。受け流す。流したついでに——“コツン”。

みぞおちへ、小さい音だけ置く。

次の拍で手首を“くい”。指先の向きを少しだけ壊す。

膝には“ちょん”。踏み込みのリズムを半拍ずらす。

痛くはない。けど、効く。効かす。効かせる。


「殺したいんやろ? ほな訊くわ。

 ——それ、あんたの『幸せ』なん?」

うちは目だけで問う。声は低い。

「うちのこと嫌うの、別にええ。

 でも、自分を嫌うための道具に、うちを使うなや」


「っっ……!」

香蒂の顔が真っ赤。湯気、見えるレベル。

拳の角度が荒くなる。それでも速い。

肩、二発。脇腹、一発。

(痛い。けど、折れてへん。大丈夫。いける)


言葉を一瞬、しまう。

かわす。いなす。砂が弧を描く。

赤い袖が閃き、黒グローブが乾いた音で合図する。

リズムは、もううちのものや。


——バンッ。

香蒂が大きく跳んだ。距離を取る。

髪飾りが光を弾いて、砂煙の上に火花みたいな残像。

肩で息。目はまだ獣。でも、その奥に滲む“迷い”。


うちは親指で頬の血を拭って、口角だけ上げた。

(さて。ここで一回、止まったな。ほな——次は、出番やろ)


——舞台が息を飲む。

静寂。

天井の提灯がチカっと点いた。


「じゃあねっ!? あんたに見せてあげるわよ!!!」

香蒂シャンディが顔を真っ赤にして叫んだ。

「なに?」

うちは首をかしげた。


彼女はポケット(え、ポケットあったんかい)をガサゴソ探って、

ドンッ——何かを取り出した。


……白いボトル。ラベルには

《SUPA・CHUKU BALM》って書いてある。

フォント、やたら未来的。いや、ダサ未来的。


「クリームぬるぞぉぉぉぉぉ!!!!!」

「やめろぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

……いや、まて。


「……え?」

一瞬、時間が止まった。


爆発でも魔法でもない。

ほんまに、ただのスキンケア始まった。


「……え、ちょ、マジで塗ってるやん……」

うちは完全に固まった。

香蒂は真顔で、両腕に白いクリームを塗りまくってる。

顔、めっちゃ真剣。集中のオーラ。


「……えーっと……うん。がんばってな……?」

気の利いたツッコミすら出てこーへん。

ただ、目の前で繰り広げられる“保湿儀式”を見守るだけ。


突然、 香蒂シャンディの体から真っ赤なオーラがぶわぁぁっと溢れた。

その中に、黄色いキラキラが混ざってて……まるでスーパー銭湯の炭酸湯。


「な、なにごとぉ!?」

思わず声が裏返る。


視界が赤く染まって、空気がパチパチ弾ける。

……でもなんか、すっごい“家庭的”な光景なんやけど。

派手なのに、日常感すごい。


「ムアッハッハッハ!! 今こそ見るがいい、これが本当の力よ!!!」

香蒂が両手を広げて、高笑い。

背景、謎の雷と紙吹雪。演出、雑。


うちは眉を二段階で上げた。


「……へぇ。で、それ、どういう系のバグ?」


ドガァッ!!

香蒂シャンディが一直線。拳、ド真ん中。

肺の空気、全部もってかれた。視界が白いノイズで満ちる。


(一、二、三……十。……ようやく吸えた。死ぬかと思ったわ。)


足首で〈スピード〉もう一段階。肘の奥で〈パワー〉を噛ませる。

普段の“赤ゲージ”から“黄色点滅”へ。やりすぎると吐くやつ。知らんけど。


「はぁ、はぁ……お前、バームに炭酸でも入ってたん?」

返事は拳。

ゴゴゴッと床が揺れるたび、赤いオーラに黄色の火花。

バーム超サイヤ人、物理説得力バグってる。


来る。重い三連。

うちは《エネルジア・シールド》をパキン、パキン、パキンと前三枚、角度違いで即席展開。

蜂の巣みたいな六角が一瞬だけ浮かんで、衝撃を潰す。

代償で手首がビリビリ。耐久、秒で溶ける。


「ちょ、待っ——」

言い切る前に、横薙ぎ。

二枚目のシールドが悲鳴して砕け、肩が焼けるみたいに熱い。

(痛っ……けど、まだいける。まだ笑える。)


押される、押される、押される——!

うちは後退しながら盾を足し、足し、足す。

前、左、斜め下、そして真上。

(この子、針の射線がエグい。空間の“穴”が読めるタイプや。)


「ほらほら、どうしたの? 逃げ足だけは一人前ねぇ!」

「うっさい。……防御は正義や。」

強がって言い捨てる。実際、ギリギリの防戦一方やけどな。


呼吸が浅くなる。

汗がグローブの内側で滑って、指の感覚が少しズレる。

それでも、カウンターの穴は必ずある——


「——ここ。」

みぞおちへ二連“コツン”。

続けて膝、顎下、肘の関節、その“継ぎ目”だけを狙って乾いた小突きを置く。

さらに、指先で《エネルジア》の微小刃を一瞬だけ走らせて、表面を“削る”。


……パキ。

髪飾りの根元に、髪一本ぶんのヒビ。以上。

本体? 石像。

硬すぎ。ビスコでももうちょい崩れるわ。


「効かないわねぇ?」

「そりゃ石やし。……鍋で煮る時間、足らんかったわ。」


逆に、拳が再起動。

ドン、ドン、ドンッ——盾三枚が連続で割れて、砂が花火みたいに舞う。

うちは歯を食いしばって、肩を入れて、ステップで衝撃を逃す。

視界の端が滲む。耳がキーンと鳴る。


(マズい。今のうち、負けムーブや。切り替えろ、カミイ。)


深く一発、腹に入った。

足が半歩、勝手に下がる。喉で空気が縺れる。

《エネルジア・シールド》を展開——間に合わん。

肘で受け流し、背中から転がって距離を作る。砂の味。まずっ。


立つ。

赤い袖が汗で重い。サイド布はさっき裂けたまま揺れてる。

正面、シャンディ。

オーラがさらに膨張して、床の模様が波打つ。

拳を握る音が、遠雷みたいに低く響いた。


うちは呼吸を整える。

胸のメトロノームを、もう一回だけ刻み直す。

(まだ倒れてへん。うちは、まだ止まらん。)


——次の一歩が来る。

砂が鳴る。

拳が、星みたいに瞬いて迫る。


けど——

星みたいに光ってたの、拳だけちゃうかった。


天井もや。

ギシギシ……バイブ機能つきスマホみたいに震え出した。


ズズズズ……!

砂がパラパラ落ちてくる。

“神回直前に限って建築基準法が負ける”って、誰が決めたんや。


その振動に、香蒂シャンディの拳が途中で止まった。

「……え?」


ブワァァァァァンッ!!


白い閃光が天井をぶち抜いた。

瓦礫と砂が渦を巻いて、視界が真っ白。

そこから——虎。


白虎。でっかい。眩しい。神話サイズ。

背中には、クール顔の気むうと、ふわふわの猫球マイルズ。


「……は?」

口が勝手に開いた。


その光景、マジで——仏降臨。

(いや、仏どころか、オープニング映像やこれ。)


天井の穴から光が差し込み、砂煙の中で虎のたてがみが神々しく揺れる。

香蒂 (シャンディ) も拳を下ろして。

うちも見上げながら、

「……もう勝敗どうでもええわ。ありがたや……」

って、自然に手ぇ合わせてた。


「神い、アンタ……ここで何してんの?」

マイルズが白虎から降りながら、めっちゃ冷静に聞いてきた。


「えっと、それがな……長い話やけど、うち──」

「アンタらアホなの!? なんでうちの闘技場ぶっ壊すのよぉぉぉ!!!」

香蒂シャンディの絶叫、炸裂。

あ、会話、強制終了。


「いや、まあ……その……」

「“まあ”!? “まあ”って何よ!? ここ作るのめっちゃ時間かかったのに!!!」


(……知るかい、って言いたいけど命惜しいしなぁ。)


香蒂のこめかみピクピク。怒りゲージMAX。

その後ろで、気むう(キムウ)がスッと手を首の横で横切らせた。

——“殺される?”ってジェスチャー。


うちは同じ動きで返した。

——“うん、殺される。”


気むうが、目を細めて、こくり。

——“了解。”


(なんの了解やねん。)


⋯⋯⊹⊱✿⊰⊹⋯⋯


ドスッ! ドスッ! ドスン!!


うち、今まさに人生で一番のボコられタイム真っ最中。

容赦ゼロ。安全装備ゼロ。心の余裕? マイナス。


どんだけ避けても、どんだけ瞬間移動シュンカニド決めても、

あのドビッチのほうが一枚上手。

結局、頼れるのは《エネルジア・シールド》だけ。


でもそのシールド、展開するたびにうちのエネルジア吸っていく。

(今ので三割消えた。あと二枚展開したら貧血やな……)


もう隠してる場合ちゃう。限界や。


「アンタらああああ!! なに座っとんねんこのバカ集団!! 助けろやああああ!!」

砂煙の向こうで叫ぶ。


「無理だよ、神い。」マイルズが淡々と。

「これは“1対1戦”の宇宙規約だからね。」フルカフトが胸を張って言う。

「がんばれ、お姉ちゃん。」気むうがいつもの無表情で。


三人とも、ちゃっかり観客席スタイル。

ひまわりの種でも食ってそうな雰囲気や。


「宇宙規約はケツでも拭けやぁぁぁぁ!!」


(なに? ここドラゴンボール? セルゲーム? うち、悟飯ポジション?)


砂がはぜる。音は二つ——殴打の鈍いドン、と、うちの歯がかちんと鳴る軽いやつ。

香蒂シャンディは間合いを潰すのがうますぎる。前に寄って拳、離れたら針。波みたいに出し入れして、呼吸の隙を吸い取っていく。


「遅いじゃない?」

唇の端だけで笑うその顔が腹立つ。

うちは足裏のバネを深く沈め、視界の“枠”を一段狭めた。

(派手に爆滅エクスプロージョン火星破カセイハぶち込めば、たぶん話は早い。せやけど——)

それ、ここでやったら安売りや。約束は約束。1v1、殴り合い。


拳が肩口をかすめる。皮膚の下で血が跳ねた。

うちは薄い光膜を、斜めの角度で一枚、時間差でもう一枚。

《エネルジア》が紙みたいにめくれて、音もなく消える。守れてる、けど削られてる。


「ねぇねぇ、いつまで小細工?」

「小細工ちゃう。延命や。」

軽口は出るのに、肺は焼けてる。

針が三方向から編まれて、空気が布みたいに硬くなった。


退く。三歩。床がたわむ。

踏み返す。二歩。砂が跳ねて視界に細い火花。

(合わへん。テンポが噛まへん。向こうの拍のほうが速い)


拳の甲が鎖骨をはじく。肺の奥に錆の味。

香蒂の笑いが近い。「その程度ぇ?」

うちは上目で睨み上げるだけで、言葉を飲んだ。

——飲んだ瞬間、観客席から声が飛んだ。


「いけるぜ、マミィ!!」


フルカフトの叫び。馬鹿みたいに真っ直ぐで、胸に刺さる。

「誰がマミィやねん!」反射で怒鳴って、息が整う。

そこでやっと、脳みそのどっかでカチっと噛み合った。


(間合いは殴る前に作れ。森んとき、逃げる木、追いかけすぎて空振ったやろ?

——力より拍。先に呼吸を合わせろ)


視線を一点に結ぶ。

手はまだ空。拳も使う。けど刃が要る。

うちはベルトに触れて、ためらいなく《エネルジア・ナイフ》を引き抜いた。

細い光が、うちの呼吸に合わせて“すう”っと伸びる。長さは欲張らん。短剣サイズ、刺すためやなく割るため。


香蒂がわずかに距離を開けた。正解。近寄らせへんつもりで、針の密度を上げる。

シュ、シュシュ——空が譜面みたいに線で埋まる。


うちは半拍遅れで前に踏み、四分だけ体をずらす。

刃の面を傾け、針の列の“面”に触れて——撫でるだけ。

キィン、と乾いた高音。線が二つに割れて、足元で細い“|”になる。


「……切った?」

「切った。まだ“前座”やけどな。」

二列目、三列目。耳の横、顎の下、肩の外側。

全部、面で裂く。強く振らん。振ったら遅れる。

腕は短く、肘は柔らかく、呼吸は同じ長さで。


針の雨が少しだけ粗くなる。そこに薄い隙が生まれる。

うちは一度、あえて大きめに下がった。

香蒂の視線が追ってくる——追った瞬間、前に置き去りになった軌道が空白になる。


(はい、そこ空きマス)


踵で砂を押し返し、床の弾力を全部つま先に集めて——

前。

刃をさらに短くして、肘の内だけで動く近接仕様。

目の前で、赤いオーラが波立つ。

うちはその波の“引き際”を待った。拍が、合うまで。


シャッ──!!


鋭い音が砂を裂いた。

香蒂シャンディの腹を、刃がほんの一刹那だけスライドした。

深くはない。血がドバッと噴くレベルじゃない。けど、確かに「そこ」に入った。


「う、う……」

彼女が目を見開いて、声を漏らす。足がふらついて、膝を折った。

布だけが先に裂けて、赤い線が細く見えた。服の端に滲む暗い色。刃は、肌を掠めただけで止まってる。


——と思った、その瞬間。


また、天井がブルブルッと震え出した。

(……は? また? もう今日は勘弁してや。)


「今度は……誰やねん……?」

うちがそう呟いた時、

――ブオオオオオオオオォォン……

低いモーター音が天井の向こうから響いてきた。


全員、同時に見上げる。

砂煙の中、光の筋が走って、瓦礫が細かく落ちる。


ドゴォォォォンッ!!!


天井を突き破って、謎のカートリッジ車体が落ちてきた。

いや、車体っつーか……馬車ショベル?

前方にツノみたいなクレーン、後ろに花の装飾、タイヤは金色。


(……は? 物理どこ行った?)


着地。

ガッシャーンッ。

四輪が地面で ドスン! ドスン!って跳ねて、なぜか完璧にバランス取って止まった。

(え、それ可能なん? 物理法則と友情出演?)


砂煙の中で光がキラキラ。

ほんまにシンデレラ(工業版) やん。


数秒間、全員ポカン。

沈黙のあと、馬車ショベルの扉がギギィ……と開いた。


出てきたのは——

香蒂シャンディの両親と、あの浮気ボーイ。


「……うわ、マジか。」

うちは思わずつぶやいた。

けど、よく見たらあの男、スーツ着て花束持ってる。

(……なんやそのトロピカル結婚式スタイル。)


「ワタシタチ、ミテルヨ! アナタ、ヤレルヨ!」

「ガンバルネ! イマ、イクノヨ!」

親二人が後ろからボーイをぐいぐい押し出した。


男がすっとひざまずいた。

香蒂シャンディの目がキラッとして、完全に“王子様フィルター”。

(……あーあ、もう目がハートやん。やばいモード入った。)


「シャンディ、ワタシ、マチガッタ。アナタ、キレイ、スゴイ。ワタシ、アナタ、ダイスキ。ココロ、ポカポカ。ドキドキ、マジ。」

男はへらっと笑いながら、花束を差し出した。


「ワクくん……」

香蒂が赤くなって、差し出した手に男がキス。

(……うわ、ラブコメの世界線、ここだけ異常発達してるわ。)


男がポケットをゴソゴソ。

「アナタ、ケッコン、スルカ? ワタシ、ケッコン、ホンキ。」

小さい箱を出した。中には、ドラゴンの形した金ピカ指輪。


香蒂は手で口を押さえながら、涙目で叫んだ。

「は、はいぃぃぃぃ!!!」

そのまま飛び跳ねて、男に手を差し出す。指輪、装着完了。


(……いや、何この光景。仏でもツッコミ入れるレベルやろ。)


「ソレデネ、プロミタ、ワタシタチ、イマ、カエル! ケッコンスル!」

「シィ!!」

香蒂シャンディが男の腕にぎゅっとしがみつく。

……二秒前まで殺意マシマシやったのにな。今は新婚旅行テンション。


フルカフトもマイルズも気むう(キムウ)も、なぜか拍手。

全員、笑顔。

(……いや、地面開け。今すぐうちを飲み込め。)


三人+二人が馬車ショベルのほうへ歩いていく。

BGMが聞こえる気がした。エンディング風の壮大なやつ。


香蒂が乗り込む直前、ふと振り返った。

「……ドビッチ。」

「ん?」

暖かい笑み。初めて見るやつ。


「アンタ、ツヨイネ。」

「ふん、そっちもな。」

眉をしかめて笑い返す。

たぶんこれが、うちらの新しいライバル関係ってやつや。


……いや、ほんま、こういうの、ちょっと泣けるやん。



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