表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/20

第20話 裾

 ロケット花火に、ネズミ花火、噴火花火……。時間をかけて花火を減らした。残るは線香花火のみ。

「勝負だな。最初に落ちた人はさっきのダンスをもう一回やろう」

「いいねー、愛桜ねおちゃん」

「なんで私の企画が罰ゲームなのよ!」

「僕があたるのはごめんですけどね」

 というわけで、始まったわけだけど、20秒行かないくらいだろうか、まだ誰も落ちていない。長い……よね?

 ポトッ。

 あ! 由紋ゆもんちゃんのが落ちたのかな。

「ありゃ、由紋さん、誰とダンスするか考えといてくださいねー」

 意地悪く愛桜ちゃんが言う。そして全員の火種が落ちた。

「さて、由紋さん誰にします?」

「……」

「決まってなかったら二番目に落ちた雫さんと」

「……くん」

「香くん! お願いしていいかしら?」

 へ?

「いいけど、いいの?」

「ええ、もちろん」

 由紋ちゃんは美女と野獣の曲をかけた。さっきとは違い、外で音楽が流れている。ネイルで紅くなっている指を気にしながら僕の手を掴む。最後、吸血鬼はその紅い唇で僕の《《気》》を吸うように口を塞いだ。それが終わるとまた顔を真っ赤にしている愛桜ねおちゃんが言った。

「ゆ、由紋さん、そろそろだいちゃん帰ってくるんじゃないんでしょうか?」

「愛桜ちゃん、もう帰ってきてるみたいだね」

 既に僕の視界には彼がいた。

「泰ちゃん、おいで!」

 さっきと同じように腕を開いたが、お腹に飛び込んできたのは小5とは思えない強さのグーパンチだった。

「あの! ごめんなさい、メイドさんにグーパンはダメでしたね。でも、これ以外思いつかなくて」

「そっか。あの子はうわさの彼女さん?」

 僕は頭をでてやりながら後ろの子に話を反らす。

「うん。この後、家で少し遊ぼうかってなって」

神賀かみが佳歩かほです」

「うぇっ!? 佳歩、なんでいんの?」

 愛桜が反応した。

「なんでって、泰輔くんが言ったでしょ。遊びに来たの」

「そっか……。由紋ちゃん! これで企画終わりだね? 今日はみんなあざした。千円あれば、足りるかな? じゃ、おいとまさせてもらいます。行くよ茉生!」

「ちょっと……」

 愛桜ちゃんは茉生まきちゃんの腕を掴み、千円札をおいて出ていった。

「えっとー、終わろうか」

 由紋ちゃんが悲しそうな顔をして言った。

「じゃあ会計しましょう」

 花火と野田くんたちが持ってきた大袋のお菓子を割り勘して終わることにした。


 僕は衣装のまま外に出ていた。由紋ゆもんちゃんに聞かれたけど、雫に裾を引っ張られ止められている気がしたからやめにした。外に出てから雫は改めて僕の裾を掴み放そうとしない。しゃべりもしない。なんとなく彼女の歩く方向に気をつけ歩みを進めていた。

 中に入ると、彼女のお母さんが出迎えてくれた。毎週毎週来ているので覚えられている。最初、あったのは運動会の前の週末。あのときの少女が男だと伝えたときは動揺していたが、雫の親だからなのか、すぐに受け入れてくれた。

 部屋に入ると雫はすぐに抱きついてきた。ぎゅーっと、放さないといつもより力強く。

「ご、ごめん。寂しくなっちゃって」

 目元の涙を指で拭いてあげる。

「ずっとこうしていたい」

“寂しい”の言葉がなぜか重くのしかかる。

「少しはいいよ」

 こちらからも抱き返す。

「ねぇ香、こっち向いて」

「どした?」

 振り向くとすぐに視界は暗転し、先ほどよりも柔らかい彼女の唇が僕の唇にあたった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ