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第19話 対抗心

******香側の視点に戻ります******

 ものすごく視線を感じる。右隣からの視線。その手にはわさびが塗りたくられたアップルパイ。

「わさび、辛いなー。苦手」

 ぼそっと彼女がつぶやく。なんとかしてあげたいと思うけど、僕もそもそも得意でないのにあの量は……。困ってるなら助けないと……。

「ふ、二人で食べよう? あとちょっとだし、僕も苦手だから、いっしょに」

 愛桜ねおちゃんの優しさで量は多いが乗ってる部分は少ないから、一気に食べる作戦だ!

「いいの?」

「うん。いっしょに。せーので」

「わかった。せーの!」

 ツーンとする。鼻の中がすごい。

「んっ! 鼻は水飲んでも変わらないかな」

「ふふっ。かわいい反応するわね、こうくん」

「え、雫、わさび大丈夫なの?」

「まあ、この量はきついけど騒ぐほどじゃないわ。香くんなら助けてくれると思って甘えてみちゃった。ごめんね」

 頭をでられている。これでちゃらにはならないよ。


「大分お菓子も減ったしそろそろ普通に食べましょうか。ゆんちゃんと茉生ちゃんが作ってきてくれたものもあるし」

「あれー、しずく、香くんにあんなこと言っておいて、もしかして本当はきついのかなぁ?」

 雫をからかう高木たかぎさんに続き野田のだくんが口を開く。

「まあ、雫さんの言う通り、二人のお菓子普通に食べたいし、そろそろ良いかもよ」

陽貴はるきが言うならそうしましょ。パイもちょうど七切れあるし、あとは好きに取ってっていいわよ」

 野田くん、雫を助けたのか? いや、別にそんなことはないか。


「よし、次は私の企画で、『社交ダンスしてみよう~!』です。私たち、もう中学生だし、せっかくパーティーをするなら、大人のパーティーらしくダンスをしようと思ってね!」

 由紋ちゃんの企画だ。大人のパーティー……?

「ダンスはいいけど、《《社交》》ダンス?」

「うん。みんなが連れてきているゲストと組んで2人ずつダンス! お手本として美女と野獣のワンシーンを流すね~」


「じゃあ次はしずくこうくんだね」

 既に茉生まき愛桜ねおのターンが終わっていて、愛桜ちゃんはほおを紅くしている。

「行きましょう、香くん?」

「う、うん」

「ちょっとー、そこの海軍さん、メイドさんはお持ち帰り禁止ですよ」

「わかってますよ。よし、香くん、私が誘導するわね」

 音楽がかかる。

「ルルルルルー、ルルルルルー」

 雫は小声で歌っている。それでも、ここまで聞こえる。ぐらぐら体が彼女の右腕から左腕、左腕から右腕へと優しく投げられる。さっきの茉生ちゃんと愛桜ちゃんの二人のときより揺らされているのは気のせいだろうか。でも、意識を持たせながら身をまかせることしかできないので仕方ないのだ。なんとか、踊りきった、頭に残っているのは正面に広がったときの由紋ちゃんの顔だけ。さ、最後は本命の美女と野獣だ。


「ちょっと、由紋ゆもん! あなたはやらない気?」

だいちゃんが帰ってきたらやるから……ね?」

「まぁいいわ。見てなさい、私たちのダンスを。いくわよ」

 先ほど手本に聞いたものと同じ音楽を高木たかぎさんが流した。音楽に合わせた滑らかな動き。静と動のキレ。息があっていなければこのレベルで出来はしないだろう。野田くんのエスコートも見事だ。すべてで先導しつつ、後ろも支えている。そして最後に本家に合わせて《《誓いの》》キス。

 え!? キス……した……?

「流石っすね、2人とも」

 愛桜ちゃんが苦笑いで呟く。

「さ、最後は私たちの企画で花火です」

 雫が明らかに動揺して《《僕ら》》の企画を始めようとする。といっても、僕は何も聞かされていないし、花火なのも今知ったんだけど。

「あ、じゃあ外行こっか? 水バケツ用意してくるね」

 由紋ちゃんが外に案内してくれる。


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