第17話 姉妹喧嘩
「みんな最後にトランプしたのいつ? ゲームやネット対戦とかもできるご時世だけど、紙でやるのが一番楽しいよね。大人数ならなおさらゲームによっては判断力や諸々が必要だし、ゲーム性もちょうど良いんだよね。だから二セット使用してババ抜きをします」
ババ抜き。七人でやるとは大胆だ。そして茉生ちゃんのルールで引いて引かれてが二ヶ所で行われているのも新鮮だ。雫と愛桜ちゃんからスタートだ。手札は多分僕が七人のうち一番多い。七人? 七人しかいない?
「ねぇ、ゆん? そういえば誰も連れてきてないの?」
雫が聞いた。みんな気になっていたようだ。
「あ、うん。何人か誘ったんだけど、みんな予定あって……ちょっと待ってて」
そう言って、廊下に出ていった由紋ちゃんから声が聞こえた。
「だいちゃーん。ちょっとおいでー!」
由紋ちゃんは誰かを呼んだ。
「うん。なんだよ。って、えー! じょ、女子会? 帰りまーす」
頭を掻きながらやってきた男の子がすぐに戻ろうとするのを由紋が腕を掴んで止める。
「待ちなさいよ。泰ちゃん」
「だって、だって、お姉ちゃんが誰か連れてくるといつも僕子供扱いされるんだもん」
既にかわいい喧嘩だが。
「きゃ、きゃわいい~!」
あーあー。
「ほらー!」
茉生ちゃんは慌てて弁明をする。
「ち、違うよ。それ、デビルの仮装なんだよね。似合ってるって意味だよ」
「この子ねぇ、私の従姉妹なんだけど、この後デートなんだってさ。なんでも、彼女ちゃんは天使の仮装で」
従姉妹なんだ。
「ちょっと由紋姉ちゃん……」
「あのさトランプだけ混じってくんない?」
「嫌だよ。女子会だもん」
「男の子もいるよ」
野田くんの方を指差して言った。
「いや、あの人。誰かの彼氏でしょ、女子側に染まってる」
「あら、じゃあ香くんは?」
今度は僕を指さしていった。
「え! 男!?」
「そう思うでしょ」
『そう思うでしょ』じゃないよ。失礼な。
「じゃあ香さん……の隣なら」
あ、良いんだ。女装は染まってる訳じゃないんだ。
「香さん、えっと……」
「おいでー、名前は?」
迷ったが、明るく笑顔で腕を開いて迎えた。
「大蔦泰輔です」
「何年生?」
「小5です」
……何気ない会話が続き、なぜか今泰ちゃんは僕の膝の上に座っている。座っているだけで参加していない。僕のカードを見て指示してくる。
「香くんに完全に懐いてるわね」
「もしかしたら将来、年下相手にハーレム作ってるかもよ」
「え!? で、でも、女の子にも通用したら、だね」
「あら、それならもう既に……」
雫と由紋ちゃんが話してるのが聞こえた。詳しくは聞こえなかったけど、僕振り回されてるだけなんですけど。そんなこんなで二ゲームを終えた。
その後、色んなトランプゲームをして一時間ほどを潰した。このとき、泰輔くんが彼女を迎えに行くため離席する、というので大袈裟だが総出で見送った。この後、戦なのだから。少なくとも経験したことのない僕はそう思っていた。その際、泰輔くんに連絡先の交換を求められた。やり方を雫に教わりながら頑張って交換した。泰輔くんが行くと、茉生ちゃんにも連絡先の交換を求められ、結果的に高木さんと野田くん以外と連絡先を交換した。部屋に戻ると、高木・野田カップルは持ち込み企画の準備をしていた。