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第13話 お姉ちゃんの和

 ******雫側の視点です******

 重い。

 重い。重い。重―い。なんでこんな空気になってんの? さっき彼を中に招き入れた。数分お菓子とジュースを取りに行くために香くんを部屋に1人きりにしていた。そして戻ってくると、昨日の彼に戻ってたんだけど。さっきまでのは全部夢? いやいや、そんなことはない……はず。部屋に変なもの置いてたっけ? どちらにせよ、仕方がない。本がないだけ昨日より話しかけやすい。そうか? ううん、こちらから切り出すしかない。

「ね、ねー香くん。私に謝りたいんだって?」

「え!?」

 ……

「うん」

 そんなに驚かなくてもいいのに。

「謝らせないよ」

「私の胸の中であんなに可愛い顔して寝ちゃって本当に妹みたいで……とにかく、気にすることないよ!」

「妹……」

 引っ掛かってる? 間違えたかも…。

「可愛い…。そ、そうだよね、お、お姉ちゃん、なら大丈夫だよね」

「そうだよ! おいで!」

 少し躊躇ちゅうちょしつつ、こっちに来るのが可愛すぎる。彼の頭を優しく優しく撫でる。そうしてると、また彼の目がとろんとしてくる。手を背中に回し、抱きしめてあげる。

「お姉ちゃん」

「ん?」

「ありがとね。運動会のとき。助けに来てくれて。嬉しかった。お姉ちゃんのために頑張れた」

 背中をさすっていた手の動きが彼の言葉と鼓動を噛みしめる度に遅くなる。

「そっか」



 ******香側の視点に戻ります******

 その日を境に学校生活がとても楽しくなった。雫は勉強は得意なんだと勝手に思ってたけど、数学は苦手なようでよく聞いてくるようになった。僕は勉強は全体的に普通だから得意不得意はないけど、強いて言うなら社会が苦手で国語と数学が得意かな。そんな僕でも教えられるほど数学が致命的なようだった。

「お姉ちゃん、宿題終わった?」

「香か、わかんないや。教えて」

 そういって僕の腕をつんつんする。違和感はあるけど、お姉ちゃん呼びの方が安心する。一度間違えて学校でお姉ちゃん呼びをしたときに、彼女がそのままがいいと強く願い出てきた。もちろんすぐに反対したがこの前の寝顔写真をおどし道具にとられ承諾しょうだくせざるをえなかった。数日後には僕自身もお姉ちゃん呼びを気に入っていた。自分が彼女にとって特別な存在であることの証拠だからだ。その頃、雫は僕を『かおる』と呼びたいと提案してきたがさすがに断った。それじゃあまるでカップルみたいだもん。彼女が今日のように僕のもとに来ていると、雫に会いに茉生ちゃんや由紋ちゃんがやってくるので、彼女たちとも仲良くなった。雫のおかげで輪が広がっていく。もう本はいらない。たまたま陸上部が休みだった一昨日、由紋ちゃんの家に引きづり込まれ由紋ちゃんとお姉ちゃんの手によっておめかしをさせられた。あの日は本当に疲れた。体育祭の日、雫姉ちゃんにハチマチをしてもらっているのを茉生ちゃんがうらやましがっていたのは過大かだい評価ではなく、本当に僕が可愛くされてたかららしい。もちろんそれを由紋ちゃんも目撃もくげきしており、雫が頼むと何のためらいもなく、お洋服を貸してくれて、おまけにネイルアートなんてものも教えてくれた。気づかないうちにまたしても女の子の部屋に足を踏み入れている自分に驚愕きょうがくしていたら、知らぬ間にお姉ちゃんが由紋ちゃんに僕の寝顔を公開していた。そうして2人の関係が他の人たちにもじわじわ知られ始め、『どういう関係なの?』とか、全く話したことのない人からも事情聴取じじょうちょうしゅを受けるようになった。隣の席だからわかっているが、彼女への追求は先週ひどい日があって心配になったけどそれっきり。そういう話は女子は、陰口でされて終わりというのを聞いたことがある。直接的に何かされてないならいいけど。


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