1. 転生先は未読の恋愛漫画でした
一人称(主人公)視点で話が展開されます。
……なんでこんなことに!?
目が覚めると全く知らない部屋のベッドにいた。
昨日はいつも通り大学から帰ってきた後、変わったことは何もしていない。それが何をどうすれば平凡な部屋がこんな豪華な部屋に変わるというのだろう。読もうとした恋愛漫画も寝落ちちゃって1話も読めてないような限界大学生にこの仕打ちは如何なものか。
「分からない…何も分からない……けどとりあえず起きるか…!」
理解が追いついていない頭を無理やり回転させ、ベッドから起き上がる。ベッドの横にある鏡に自分が写った。
「…ええ!?これが私…?…美しすぎない??」
鏡に映った自分は素晴らしいほどに美しかった。緩くウェーブのかかった銀色の髪にスカイブルーの瞳(光が当たるとピンクがかって見えて綺麗だ)、そして何より雪のように白い肌が妖精のような儚さを体現していた。
なによりこの姿を見て、ひとつ分かったことがある。この子の容姿は、昨夜見る予定だった恋愛漫画の表紙に写っている2人の女性のうちの1人にそっくりだからだ。
(……てことはこれって最近流行りの転生ってやつ?でも私…)
「…1話も読んでないんですけど!?」
「お嬢〜はよーございます」
「おはようございます…?」
突如ドアを開けて入ってきた青年に驚いて声が裏返ってしまったが、一応挨拶は出来た。でもこの状況は非常にまずい。なぜなら私は自分の名前も分からなければ、あなたの事も知らないからだ。漫画だって1話すら読めてない。
なので早急にあなた様には出ていって欲しい。そう今すぐに。
(そもそも転生者って最初からある程度の知識があるものじゃないの?なのになんで私はなにも知らない世界に来ちゃうかなぁ…!)
「お嬢…どうしたんです?いつもとキャラ違いすぎませんか?頭でも打ちました?」
「打ってないですっ…!あ、やっぱり打ったかも!!」
「…………あなた"誰"です?」
(…怖いっ!この人笑ってるけど目が笑ってない…!)
焦りすぎてしどろもどろな答え方をしてしまい、逆に怪しまれてしまったが、私にはどうしようも出来ない。いっそ"頭を打った影響で記憶喪失になりましたぁ〜"とか言っておいた方がいいかと思ったが、現実は上手くいかないようだ。
よく見ると17,18くらいの年齢だろうか、私より若く見えるのに大人びていて、さらには綺麗な顔をしている青年だった。漆黒の髪はとても艶があり、光が当たって輝いている。瞳は紅色に白縹色(薄めの水色)が混ざったような色をしていてとても綺麗だ。背は180センチくらいだろうか、ジャケットを羽織っていることもありスラッとして見える。
これが恋愛漫画効果というものだろうか。出てくる男の人全てがイケメンになるっていうやつ。
青年の美貌から意識を戻し、"あんた誰です?"という問いにいかに怪しまれないように答えるかという問題を、どう対処するか考える。正常に働いてない頭をフル回転して作った選択肢は3つだ。
1.「…私は誰なんでしょう…?」
2.「何言ってるんですの?私ですわよ!寝ぼけているのではなくて?」
3.「私、別の世界から来た人間なんです!!」
記憶喪失(記憶ないからもってこいの選択肢)か、見た目から推測して身分が高いお嬢様のフリか(この青年も"お嬢"って呼んでるしね)、正直に別世界の人間だと話してしまうか(これはできればしたくないけど)。
(全てを考慮した上でやはり1が最適解…ここは1しかない!)
「…私は誰なんでしょう…?」
「無理があります」
「ええ!なんで!?」
「記憶喪失のフリするならもっと上手くやってください。こんなの誰も騙されませんよお嬢?」
(……失敗した。絶対上手くいくと思ったのに、この青年にはバレてしまった)
「で、お嬢正直に話せますよね?」
「うぐっ…言えないって言ったら…」
「無理やり言わすまでですよね?」
そう言って怖いくらい爽やかな笑顔で、青年は太ももベルトについている拳銃に手を添えた。
(怖いっ!なんで拳銃なんて持ってるの!?この人怖い怖すぎる…!!)
「言います!言いますから!」
「初めからそうしてればいいんですよ。ね?」
「……すみませんでした……で、っでも今から言うことはあなたには信じられないようなことかもしれないんですけど……うぅ…
えっと……私この世界の人間じゃないんですっ!!」
誤字脱字等チェック漏れありましたらすみません。
日本語表現等、駄文な節が御座います。ご了承ください。