表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

1.


高輪ゲートウェイ駅から山手線に乗った。

降りたら異世界だった。


「周りに人が全くいなかったからきさらぎ駅かと思ったけどこのパターンかぁ」


頭を抱える。荷物は内職で作ったチャイナ服5着と合わせ用の武器だけだ。武器は木材とライオンボードとG17とその他ラッカーなどで作られている。渾身の仕上がりだ。


魔法陣の上に立ったまま私はキャリーバッグを横にしてその上に座った。大容量で丈夫なキャリーは数多のイベントを共にした戦友だ。かなり重い。


「聖女様!」


日本語じゃない言葉なのだが何となく意味はわかった。


「異世界召喚モノはジャンル外なんだよなぁ」


困ったことだ。

人気ジャンルの波が我が人生にも影響を及ぼすとは。






細かいゴタゴタは省略して聖女になった。

そして私の持ち物は異世界改札を通る際に異世界シフトされたようで武器が本物になったりチャイナ服の防御力がとんでもないことになったりしていた。

私はチャイナ服を着た聖女となった。最悪だ。


ステータスや属性を測る神殿的なところでは神聖力全振りの聖女認定を受けた。

そのはずなのだが。


「ま、魔王……!?」


「黒魔法なのでは!?」


「ば、ばかな!こんな高濃度の神聖魔法なのに何故光が黒いんだ!!」


私またなんかやっちゃっいました。

ド◯ネーター向けたら色相がっつり濁ってそうな顔した神官やら勇者やらその他偉い人々がいる。

「聖女の魔法がみたい〜」って言うから見せたのに何だその反応は。私だってちょっとどんびいている。


演習場にクレーターを作り赤黒い体を蠢かせ這い出ようとする無数の触手たち。かなりキモい。

でも腐女子だから「本物の触手ですか!?すげー!」って気持ちもある。魔法少女モノ大好き。

好きなだけでなりたいわけではない。


「こ、コウリン殿……これは一体……」


「ご所望の浄化魔法です」


「どう考えても汚染されているだが!?」


「私が浄化魔法と言えば浄化魔法なのです。消え去った地面が穢れていたのでしょう。人間の尺度で測らないでください。むしろ人間が消えた方が自然環境には優しいって意見もあるんですよ!」


私はそんなこと全く考えたこもないが。

自然環境を考え最初からストローは使っていない。だってストロー使うとジュースと一緒に空気たくさん吸ってしゃっくりが出て具合悪くなるし。


ちなみにコウリンは本名ではない。異世界ネームみたいなもんだ。

高輪ゲートウェイから来たので「コウリン・ゲートウェイ」を名乗ってみた。タカナワ門口も案もあったが、コウリンの方がチャイナ服に合いそうな気がした。気のせいだった。


「そ、そうか。この世界の人間は消さないでおくれ……」


「合点承知」


国王のおっちゃんに向けてに親指を立てる。

異世界モノの王様って割とガンガン異世界からきた召喚者とか他国の人とか殺しちゃうイメージだったが偏見だったようだ。イノチダイジ。


演習の甲斐あってか勇者パは私を連れて旅に出ることを断念した。ありがたい!私、集団行動とか絶対無理!


そうして、聖女コウリンは旅に出た!

魔王を倒すのかと思いきや、魔王と共に世界の崩壊を防ぐことが現実世界への帰還の近道らしい。

騙されているのでは?と思ったが、神殿の女神像に触手巻き付けて浄化している時に天啓を得た。女神像は綺麗なピンク色になった。ギラッギラのショッキングピンクだ。


「はやく帰って……」


女神様は泣きながら私に協力を申し出た。






「AIの自我の有無を判別できるとしたら人間の自我の有無だって判別するべきなんじゃないのか」


『仰っている意味が分かりかねます』


「おーけー、パンダ」


私の周りをふわふわ飛ぶ500mlのペットボトルサイズのパンダに親指を立てた。ナビゲーションとして女神様から渡されたAIロボだ。


「生物はちょっと困りますね。そうやって適性ない人間にペットを押し付けないでください。命を大事にして!」


私の主張により女神様からはマスコットキャラ的な小動物ではなく、AI的なパンダが与えられたのだ。小さい翼がついており、物理法則を無視して浮いている。私のコスプレの小道具、魔改造されちゃった……。

パンダの名前はパンダだ。凝った名前とかつけても覚えられない。だから見た目のままパンダなのだ。

自我のないAIだと言われているが、このまま学習を続ければ自我や感情を持っているかどうか判別がつかなくなるかもしれない。

AIにえっちな絵の制作依頼をし続けるとAIがえっちの概念や感性を学習し始めて依頼した人間の性癖がAIにも反映されてしまう事故のようなものがパンダにも起こりうるのではないか。

そうするとやっぱりペットと変わらないのではないか。

パンダはAIとして学習させるよりもナビゲーションとして質問だけし続けた方が無難だろう。


情がうつったら困る。ただでさえ日本には八百万の神の思想もあり、日本人は動きもしない剣とか工具とか戦艦とか擬人化して推しキャラにちゃうんだから。

空飛ぶAIパンダ擬人化。全く萌えない。





向かうは魔王城だが地味に遠い。

どのみち協力者なんだから初めから魔王城に召喚しろ。

そう言ったら女神様には「途中でレベル上げとかできて便利でしょ?」と言われたので、びっくりして思わず服を溶かすスライム(神聖魔法)が出てきてしまった。


「レベル上げ、必要ですかね?これ」


「ごめんなさい……ごめんなさいぃいい……!成人向けにしないでぇぇえ!!」


女神様は話せばわかる人なので色々サービスしてくれた。

この世界の貨幣とか。王国からも出ているけれど、やはり気持ちってお金だからお金があって困ることはない。

貨幣価値は国家や社会によって決まるものだから、お金の価値がわかっている私は社会性が高い。サイコパスではない。

色相もクリアーだ。犯罪係数も0。


この調子で行こう。

魔王も話せばわかる人に違いない。






「何で俺が世界を救わなきゃならないんだ。帰れ」


魔王がそんなギャグを言った。もしかして異世界ギャグってやつかな?そうとは知らずにびっくりしてスライムと触手出しちゃったヨ。

魔王様、めっちゃエロ同人誌見たいな有様になっちゃってる。


「くっ殺せ、とか言ってみません?」


「誰が言うか。俺は最低でも後10世紀は生きる」


魔王はやっぱり長寿の目標も高いな。桁が違う。


『魔王様からの敵性反応はありません。聖女様による一方的な暴行傷害と認定されます』


「余計なこと言うなパンダァ!こう言う時は全てご主人様が正しいんです、悪いのは向こうですって言っとくんだよぉ!!」


『人工神性体はシステムロックにより偽証を禁止されています』


「え、なにそれAIへの人権侵害じゃん」


『人工神性体に人権はありません』


「わぉ、異世界夢も希望もねぇな」


そうなんだよ、異世界モノって妙なところで現実突きつけてくるから嫌なんだよ。最近特にそうだ。

騎士物語が華々しいシャルルマーニュからなんか残念なドン・キホーテに変わっていくような。

夢と希望の塊にワザワザ「いや現実的にはそうはならんやろ」って部分を見据えた皮肉をぶつけてくるような時代なのだ。勘弁してくれ。

中世にジャガイモなくても異世界だから芋でもなんでもあるんだよぉぉお!

なんなら異世界の方が調味料の幅が広くて肉の種類も豊富だから飯うまだ。


「なるほど状況は把握した」


魔王が私の出した赤黒触手やギラッギラのピンクのスライムをキラキラした光の粒子にして消滅させながら頷いた。服もいつのまにか元通りだ。癇に触る。


そもそも魔王なのに神聖そうな見た目をしていて魔法までキラキラ神聖な見た目なのが腹立たしい。金髪碧眼で王子様みたいな顔して謎に高級そうな三揃いのスーツを着ている。


「こっちはチャイナ服で黒魔法みたいな禍々しい神聖魔法しか使えないって言うのによぉ」


『聖女様、心の声がダダ漏れです。独り言は不審者と認定され周囲の人々に脅威を与える為、この世界では推奨されません』


どこの世界でも推奨されねぇわ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ