第六章「黄昏に暮れる病室」2
一通り今すぐにできる看病を終えて、軽くおかゆを食べさせたが、熱が下がる様子は一向になかった。
「達也のこと、呼んでみるね。きっと様子診てもらった方がいいと思うから」
自分に出来る看病にもすでに限界を感じ、私は不安に思い達也を呼ぶことに決めて、そのことを真奈ちゃんに伝えた。
「たつやにぃが来てくれるの? それなら安心だね」
「うん、だから、大丈夫だからもう少しここで我慢して休んでいてね」
真奈ちゃんの様子は最初に見つけた時よりはマシになったが、それでも心配である事には変わらないので、達也を呼ぶことにした。
その前に浩二に一報を入れたが、浩二からの返事はなかった。
「(……仕方ないよね、だってデートの真っ最中だもん)」
深く考えてしまうと考えたくもないことを考えそうになった私は、他に自分に出来ることも思いつかないので、達也を呼ぶために通話を掛けた。
*
20分程したところで、達也がいつもの白衣でやってきて、聴診器を着けて真奈ちゃんの容体を診てくれる。
「すまないね、準備に時間がかかって遅れた」
「そんなことないよ、いつも遊びに来る時より早いよ?」
「救急車よりは遅い」
「救急車と比べたらそうかもしれないけど……、そこまで達也が必死になって頑張らなくても大丈夫だから」
白衣の下にネクタイまで着けてやってくる真面目さに感心と同時に、そこまでされると逆に申し訳ない気持ちになりながら、この場は達也に任せることにした。
まだ体温も高く、呼吸も落ち着いているとはいいがたい。
医者を目指すものの持つ責任感というべきか、達也は心配そうに、真剣な表情で真奈の容体を診ていた。
「真奈ちゃん、昨日より悪化してるかい?」
優しい声色で達也は聞いた、白衣を着てそう呼びかける姿は医者そのものだ。
「うん」
布団から顔を覗かせる真奈ちゃんがそう答えると、達也は迷うことなく救急車を呼んだ。
「そんなに悪いの?」
私は心配のあまりたまらず達也に聞いた。
「念のために、うちの病院で様子を診るよ。唯花もずっとここで診ていても心配だろう?」
「そうだけど……」
達也は私のベッドを使ってもらっていることも含めて、このままにしておくことに問題を感じているようだった。
「たつやにぃの病院いくの?」
真奈ちゃんがそう聞くと達也は頷いた。
「そうだよ。真奈ちゃんが悪い感染症に感染してたらいけないから、念とために診てもらおうね」
達也の言葉に首を縦に振って真奈は頷いた。
私の肩をそっと叩いて、達也は部屋を出た。
それは達也が私に何か話があるという合図だった。
私は瞳を閉じた真奈ちゃんの様子を確認して、そっと部屋を出ると、達也が腕を組んで部屋の外で待っていた。
「浩二はどうした?」
一言目にそう言ったのには、すぐさま状況を確認したいという達也の意思を感じた。
「羽月さんとデート」
「そうか、了解だ。なら、病院に連れて行って正解だな」
達也は納得したようにそれだけを言った。
もっと、ちゃんと注釈を入れた方がいいかなと思ったけど、達也はそれ以上浩二のことを私に聞かなかった。
浩二のことを責めるような状況でないことは私も理解できた。そう、大事なことは真奈ちゃんが元気な姿に戻ることだから。




