第四章「取り戻せない時間」1
季節は巡っていく
学園祭が終わり、秋桜の咲く誇る秋から、ゆっくりと街を白く染め上げていく長い冬へと移り替わっていく
終わりの見えない長い冬へと
人を避けて歩く寒冷化する街のほとりでブーツを踏みしめて
一人でいると凍えそうになる身体を暖めてくれる人を求めて、凍傷しそうになるその手を伸ばす
でも、この気持ちは、この想いは
後悔と自責の中で、降り積もる雪と共に心を冷やし続ける
たゆたうと続くこの想いを乗り越えて、長い冬が終わるその時まで
第四章「取り戻せない時間」
学園祭から数日後、羽月は自分の暮らすアパートに浩二を招待することにした。
二人にとって予想だにしないまま唐突に訪れた交際の始まりだっただけに、まだ実感の乏しいまま、数日間の間、初々しい二人の関係が続いた。
連絡一つとるのも、今までよりずっと相手の気持ちを強く感じるようになった。
「楽しみにしてる」
「早く会いたいね」
「私も浩二と一緒に演劇してみたいな」
「同じクラスにはなれるかわからないけど、来年は一緒にできるといいな」
「羽月は特進クラスにはいかないのか?」
「うーん、まだ決めてない……」
学園では付き合っていることを秘密にしていることもあり、話すのは家に帰ってからが多かった。
羽月はVR空間で話すのは苦手なようで、時にお互いにカメラの画面で顔を合わせたり、通話やメッセージでやり取りをした。
お互い、学園でお互いの姿は確認できていたから声を聞くだけで安心できた。離れていても声は変わらない、そういうコミュニケーションを羽月は特に好んでいた。
パソコンを使って資料の作成をするものの、羽月は自分のことを古典的な人間と自虐していた。
それだけ時代と共に技術進歩が進んだ結果とも言える。
二人は消化不良のままだった学園祭後夜祭の続きを羽月の家ですることとなった。
一気に関係が発展し、付き合うことになった学園祭の日以来、なかなか恋人同士でありながら、恋人らしいことが出来なかったこともあり、両者ともに二人きりでの時間を心待ちにしながら当日を迎えることとなった。




