風神の祠 絶望を覗く
「ここらじゃな。降りるぞ」
「おう」
ゆっくりと高度を下げていく大妖。振り落とされない様に大翔は再び背を握る手を強めた。少し間をおいて雲の群れを突き抜けた辺りで、ようやく目的地の祠がある森が小さく見えてきた。
「小僧、得物は持ったか? 」
「あぁ」
鞘と柄糸を薄紫に仕上げられた拵えの小太刀を背負っていた袋から取り出して握り締める大翔。背中の感触で大翔の状況を把握して、森に向かって降下速度を上げていった。
「さ、着いたぞ。怪我はないか? 」
「問題ないです。それより…… 」
祠の方を見やると、もちろんと言うべきかやつらがいた。薄緑色と紺色の狩衣の妖が二匹、こちらを見つめたまま突っ立っていた。
「やはりというべきか…… 得物は持っとらんようじゃな」
「まぁ、通してくれませんよね」
示し合わせることなく同時に歩き始める大翔と大妖。それに気づいた向こう側もゆっくりと二人に向かって歩いてきた。
「俺は秋月 大翔! ここにいる天狗様の名前探しの同伴者としてここに来た!! 」
大翔の名乗りに呼応して足を止める相手方。そして薄緑の衣の方が名乗りを上げた。
「私は名を祇蟷螂と申します、以後お見知りおきをば。ささ、あなたも名乗りなさい」
「……疾風薙」
しばし流れる沈黙を木枯らしが駆け抜けた。そして大妖が口を開こうとしたその瞬間、逆に祇蟷螂が大翔たちに話しかけた。
「さて…… この前も述べましたように我々は力がほしい、しかしこの祠は開いてくれませんでした」
「……元はワシの名前が保管されとる祠じゃろうが。当たり前のことを報告するな三下が」
「失敬。そこでなんですが……開けめてもらえませんか? ついでにあなたが取り戻したであろう力も欲しいんですよ我々」
「喧嘩を売っとるのか? 」
一瞬怒りをあらわにする大妖。それだけのことと言えばそれだけなのだが、簡単に辺り一帯につむじ風が吹き荒れた。
「まぁまぁそう怒らずに…… 」
「待てよ、祇蟷螂」
他の三者が驚くほどの怒気であった。いつの間にか手に握られた脇差は鞘から抜かれていた。
「迦穂は…… お前らが連れ去った、あいつはどうした」
「……いただきました。名前を」
「そうか」
斬りかかろうとしたその右腕を、大妖が後ろから握り締めた。
「分かっているのか小僧 お前、今の実力じゃ…… 」
「黙ってろ! これは勝てるか勝てないかじゃない、俺の問題だ!! 」
怒りに任せて手を振り解く大翔。祇蟷螂を狙ったその一撃は、間に割って入った疾風薙の得物が受け止めた。
「面白くなってきタナ…… その心、俺ガ試シテヤロウ!! 」




