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閑話:あたしの姉の様子が少しおかしい【篠崎妹視点】

妹視点。


 あたしの名前は篠崎莉子。少しだけシスコンな中学3年生。

 だけれど最近、というかここ数日の姉の様子がおかしい。


 例えば、高校の入学式があった木曜日。 

 全力疾走したのか息もたえだえな様子で家に帰ってきた姉。そのまま、部屋にこもってしまう。部屋からはどうしてこうなったんだ……、どうすればいいんだ……みたいな呟きが漏れ聞こえてくる。大丈夫かと声をかけてみても何も言葉は返ってこなかった。

  

 入学式の翌日の金曜日。

 ほうけた表情で帰ってきた姉は、話しかけても返事をせずに部屋にこもってしまう。これは本格的に何かあったようだ。


 そこからの土曜日。

 真っ赤な顔で姉が帰ってくる。朝、星宮カレンみゃーちゃんと遊びに行くといっていたが、何があったのだろうか? これは問いたださなくてはならない。姉に質問してみるも気の抜けた返事しか返ってこない。どうやって聞き出そうか。


 そして今日は日曜日。


 昨日の件を聞きたかったのと姉と一緒にゲームしたかったのもあって姉を誘うも今日もなにやら予定があるようだ。今日も朝からどこかに出かけに行ってしまった。怠惰な姉にしては珍しい。いつもなら部屋でぐうたらしてるのに。

 どうしようかと思案していると、1つの案を思いつく。昨日の姉の様子をみゃーちゃんに問いただせばいいんじゃないかと。

 さっそく連絡をとってみる。



   ***



「お待たせ、莉子」

「急に誘ったのに家に来てくれてありがとね、みゃーちゃん」

「いえいえ。で、何のゲームする?」


 彼女は星宮クレア。姉さん経由で知り合って以降、仲良くなったあたしの親友。

 苗字が星宮でネコっぽい雰囲気なのもあってみゃーちゃんと呼んでいる。


「ゲームの前に少し聞きたいことあるんだけどさ」

「何?」

「昨日、お姉ちゃんと何かあった?」

「え、うーん、秘密! あ、ゲームで勝てば教えてあげるよ」


 少し慌てた様子を見せたものの、すぐに取り繕ってしまう。姉くらい単純ならいいのに。

 それにしても、みゃーちゃんゲーム激つよなんですよね。ハンデありでもなかなか勝てない。

 でも、勝てる可能性は0じゃない!


「分かったよ、みゃーちゃん。勝負しよう」

「オッケー。で、莉子は何をかけるの?」

「え?」

「だって勝負でしょ? 莉子もなにか賭けるのが当然じゃない?」


 相変わらずちゃっかりしている。

 でも、言っていることはもっともだ。


「……何が欲しいの?」

「そうだね、アルバムはだいだい見せてもらったし……じゃあ、優先輩の寝顔写真で! 今度、撮っといて」

「くっ、わかりました」 

 

 その後__

 ばたんきゅ~。無事、連敗。

 なぜだ、なぜ勝てないんだ……。優先輩と一緒で莉子も割と単純だよねーなんてみゃーちゃんに笑われる。


「じゃあ、約束通り寝顔写真ね。3つのゲームで勝ったから3枚かな」

「くっ、欲張りですね。仕方ない……この3枚をみゃーちゃんの携帯に送信しておいたよ」


 携帯のお姉ちゃんフォルダから3枚、寝顔写真をみゃーちゃんの携帯に送る。

 誰にも渡すつもりなかったのに……。まあ、ストックはまだまだある。


「えっ、何ですでに持ってるの?」

「妹として当然の嗜みだよ」


 お姉ちゃんの写真を持っているのは、妹として当然でしょ。

 みゃーちゃんはなにを言っているんだか。やれやれだぜ。


「うーん、まあ深くはつっこまないでおくね。で、先輩のことについて聞きたいんだっけ?」

「えっ!? 教えてくれるの?」


 優しい。惚れちゃいそう。

 でも、あたしにはお姉ちゃんがいるんだ。ごめん、みゃーちゃん。


「まあ、土曜日にアタシと先輩の関係が今までよりワンランクアップしただけだよ」


 ドヤ顔で少しはにかみながらそんなことをいう。

 友人から親友ってことかな?


「何ですかそれ……。でも、家族の絆に勝るものなんてないんだからっ!」

「まあ、その通りだね。だからアタシも頑張らないとね」

「ん? どういうこと?」

「じゃあ、十分遊んだしアタシはそろそろ帰るね」


 そして、よくわからないことを言い残して帰ってしまう。

 結局、なにも詳しいことがわからなかった……。



   ***


 

 それからしばらくの時間が過ぎて、昨日と同じく真っ赤な顔でお姉ちゃんが帰ってくる。

 え? また何かあったの?


「お姉ちゃん、何かあったの?」

「え、いや、何もなかったよ。ホントウダヨ」


 絶対、何かあったやつだー!

 相変わらず、隠し事が下手な姉だ。


「あ、そうだ莉子に1つ聞きたいことがあるんだけどいい? 今日のこととはぜんぜん関係ないことなんだけどね」

「ん? いいよ。なに?」

「……女性同士の恋愛ってどう思う?」

「えっ!? 急にどうしたの?」


 えっ、お姉ちゃんがついに百合に!?

 妹的にはぜんぜんウェルカムですよ。姉妹なら子供も出来ないので、異性の兄妹きょうだいと違って結婚してもまったく問題ないですからね。あたしの時代だァ!

 

「ぜんぜんいいと思うよ! むしろ男性じゃなく女性同士で恋愛すべき! 超ウェルカム! 」

「え? そんな感じなんだ……そっかー。……女性同士の恋愛って普通なのかな?」


 そんな呟きを残し、自分の部屋に去っていく。

 よし、とりあえず姉妹百合本を姉の机の上に何冊か置いておこう。

ここまでで1章完結。

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