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星宮カレンとのデート

時系列

木曜日:入学式

金曜日:午前…高校のガイダンス的なもの/午後…雫先輩とデート

土曜日:カレンとデート←now

日曜日:凛とデート




 入学式や身体測定、軽いテストなども終わり、ようやくの週末。

 来週からは本格的な授業も始まるためいつもの私なら家でぐだぐだして土日を過ごすところだが、今日は珍しく予定がある。


『今日は、アタシとのデートですよ優先輩。先輩をとりこにしてみせます』


 そんなメッセージの通知が届く。

 そろそろ家を出なければと準備をして、家を出る。

 


   ***



 そして、待ち合わせ場所である駅の改札を出るとカレンが私を見つけてとことこと近づいてくる。

 いつもは下ろしているウルフカットのミディアムヘアも、今日は後ろで団子状にまとめていていつもより可愛らしい雰囲気だ。 


「優せんぱーい! 待ってました」

「待たせちゃったね、待ってくれててありがと。その髪型も似合ってるね」

「あ、ありがとうございます。先輩もいつも通り、いや毎日可愛さに磨きがかかってます!」

「褒めてくれてありがとね」


 照れながら褒めるカレンが可愛くて、髪が乱れないように優しく頭をポンポンとしてお礼をいう。

 いや、こんなことしてるから付き合っていると勘違いを生むのかな。

 慌てて手を引くと__


「先輩は……いや、先輩だけはいつでもアタシのこと撫でてくれていいですよ」


 なんてことを、上目づかいで言ってくる。

 くっ、か、可愛い。略してくっかわ。いや、でも流されちゃだめだ。

 雫先輩の誤解を解くのには失敗したが、今回は間違わない。 

 なせば大抵なんとかなる!


「それで、今日はどこに行くの?」


 今日のプランは全部カレンにお任せだ。

 いつもカレンと外で遊ぶときは、甘いものを食べに行ったり小物や雑貨の店に行ったりすることが多い。


「いつも通り甘いもの食べに行きましょう。ここら辺だとおすすめはかき氷屋さんとかパンケーキ屋さん、フルーツサンドの店とかがありますよ。どこか行ってみたいとこありますか?」


 カレンは相変わらずスイーツには詳しい。

 姉や母親によく連れていってもらうんだとかなんとか。

 私も甘いものは好きなので、よく紹介してもらう。


 そのラインナップだとパンケーキやフルーツサンドも捨てがたいが、今日がぽかぽか陽気なのもあってかき氷かな。


「じゃあ、かき氷屋さんでもいい?」

「かしこまりー! じゃあ、さっそく行きましょう、先輩」


 

   ***



「先輩、先輩。はい、あーん」

「ありがとね」


 差し出されたかき氷をパクりと食べる。

 甘くて美味しいって__


「って、違ーう!」

「急にどうしたんですか?」

 

 これじゃ雫先輩の二の舞になってしまう。

 いつも通りに仲良くいちゃいちゃしたら駄目だ。

 楽しい時間を台無しにするのは申し訳ないけれど、心を鬼にして別れ話を切り出さなければ……じゃなくて、誤解を解かなければ。


「先輩、難しい顔をしてどうしたんですか?」

「いや、とりあえず今日の本題に入ろうと思ってね」

「本題? その前に、かき氷食べないと解けちゃいますよ?」


 店選びミスったー!!

 話をするのに向いてなさすぎるよ、かき氷。美味しいけど。

 とりあえず、この店ではかき氷を食べるのに集中して次の店で話せばいいや。



   ***



 お次は可愛い系の雑貨屋さん。

 

「先輩、このポーチ可愛いですね」

「可愛いね。二人で一緒に買う?」

「いいですね! あ、これも可愛いです」

「カレン、これも可愛いね」


 やっぱり、雑貨屋さんを見て回るのって楽しいね。

 つい夢中になっちゃう。


「いい買い物出来ましたね、先輩」

「そうだね、カレン」


 二人で店を出る。

 なかなかに自分の趣味に合う店だった。

 また今度来よう……って違ーう!


 何度同じことを繰り返すんだ私は。

 そろそろ落ち着いて話せる場所に行かないと。



   ***


 

 やってきたのは、和風系のカフェ。

 歩き疲れて来たところだったし、ちょうどいいタイミングだ。


「そういえば、月城雫さんでしったけ? あの先輩とは何を話したんですか?」

「え、雫先輩!? いや、別に変な事話してないし、変なこともされてないよ」


 雫先輩と聞くと昨日のチークキスを思い出してしまう。

 私の顔が赤くなってないといいけど。


「……」


 はっ!? すごくジト目で見られてる。

 何か言い訳しなくちゃ。


「いやね、雫先輩とはね、カフェに行ってね、付き合っているっていう誤解をとこうとしてね、だから何もおかしいことなんてないんだよ」

「へー、先輩って隠し事できないタイプですよね。で、誤解は解けたんですか?」

「誤解は……解けたような解けなかったような、いや実質解けたようなもんかな?」


 本当にどうしよ。何も解けてないし。何も解決してない。

 むしろ状況は酷くなってる。


「そういえば先輩って、もしかして私と付き合ってるつもりなくて、仲いい友達だと思ってました?」


 あれ? もしかして、カレンの誤解解けてる?

 ここは正直に全部を話そう。

 

「ごめん、カレンのことは友達としてしか見てなかった……今までのも全部、冗談だと思ってたの」

「そうなんですね……でも、それならこれから惚れさせるだけです。先輩ってアタシのことすごく可愛いって思ってくれてますよね? くっついても喜んでくれるし」


 蠱惑的こわくてきな笑みで私にそう投げかける。


「え? もちろん! カレンはすごく可愛い女の子だと思ってるよ」

「なら、後は距離を縮めるだけです。月城雫さんには、キスでもされましたか?」

「え、いや、はい。でも、唇じゃなくて頬だからセーフ、何も問題ない……はず」


 変に言い訳してもバレそうだし、素直に話してしまおう。


「じゃあ、先輩って唇へのキスはまだ何ですか?」

「もちろん、そうだよ!」

「では、いただいちゃいますね」


 そういって私に顔を寄せると、唇へと軽くついばむようなキスをする。

 

 え?


「キス代替わりにお会計は済ませておきますね。また、学校で会いましょう」


 そう言って、はにかみながら会計へと向かっていく。


 えっ???

 私のファーストキスが奪われちゃった……。


 私はそのまましばらく放心したまま固まってしまう。

 キスに嫌悪感を感じてない自分自身に、嫌悪感をいだく。

 私はノーマル。私はノーマル。そう心に言い聞かせる。 

 いや、でもあれはずるいよ……。

 

キマシタワー

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