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それぞれの思惑【別視点】

【朝海凛視点】


 私にはずっと好きな相手がいる。

 小さい頃から私のことを引っ張ってくれたり、守ってくれたりすてくれて。気づけば恋をしていた。

 ただ、問題は……その相手が女性だということだ。

 そのため、この想いを相手に伝えるべきかどうか迷っていた。


 けれど、私は決意した。

 きっかけはクリスマス。毎年一緒に過ごしていた幼馴染が違う人と遊びに行ってしまったとき、ずっと一緒にいられるわけではないかもしれないと思い悩んだ。


 そして、今日の入学式が終わったあと手紙で呼び出して告白することに決めた。

 手紙の内容は出来るだけシンプルにしたものの、短い内容を書くのに1時間以上かかったうえに何度も書き直した。


 高校へ着き、クラス分けを見ると幼馴染の篠崎優と同じクラス。

 心の中でガッツポーズをする。

 いや、でも告白失敗したら気まずくならないかとも思ってしまう。


 下駄箱に着き、優の下駄箱に手紙をそっとおく。これで準備完了。

 緊張で胸の鼓動が早まる。


 教室に着いてしばらくすると優が教室に入ってくる。

 緊張で顔が見れないっ。

 

 そして、しばらくして優の席を覗いてみると、優は手元の何かをじっと見つめて顔を赤くしている。


「優、どうしたの? 顔を真っ赤にして」


 なんだろうと思い、問いを投げかけてみる。


「いや、久しぶりにラブレターなんてものを貰ってね。真っ直ぐな感じで思わずこっちが照れちゃった」

「そ、それは!?」


 優が持っていたのは、私が書いた手紙で。

 つまり、顔を赤くしているということは私の手紙に照れているということで。

 思わず嬉しくなってしまう。


「どうしたの?」

「いや、何でもない! 屋上には行くのか?」

「まあ、行くだけいってみるつもり」

「そうか」


 頭が混乱していた私は、慌てて返事を返す。

 とっさに取り繕ったがボロは出ていないだろうか?(※出ています)

 不安になる気持ちに蓋をして放課後を待つ。



   ***



 そして、放課後!


「屋上まで来てくれてありがとう、優。手紙で伝えたが、私は優のことがずっと好きだった。女性同士だが、良ければ私と付き合ってくれないか?」


 優が来たと同時に想いを口にする。

 少し戸惑ったような様子の優。ただ真剣にこちらに向き合い__


「私も凛のことが好きだよ。でも__」


 好き。優が私のことを好きだってっ!?  


「本当か!? 私と付き合ってくれるんだな。ありがとう、優。大好きだぞ」」


 思わず勢いに乗って優に抱き着いてしまう。

 この後、優の後輩の邪魔が入り、告白がうやむやなまま解散してしまう。


 でも、優と付き合えた嬉しさを噛み締めて家に帰り、少し落ち着いて状況を振り返り1つの事実に気づく。

 あれ? もしかして私は告白が了承されたと早とちりしたのではないかと……。



   ***   



【星宮クレア視点】


 アタシには中学のときに好きになった先輩がいる。

 中学1年生のとき、ハーフである容姿のこともありなにかと目立っていたアタシはやっかみでいじめられていた。

 当時のアタシは今ほど明るいわけでもなく、1人で誰もいないところに逃げ込み隠れて泣いていた。

 

 そんなアタシに手を差し出してくれたのが、1学年上の先輩__篠崎優( 優先輩)だった。


「そんなところで一人でどうしたの?」


 1人でうずくまるアタシが気になったのか声をかけてくる。

 正直、ほっといてほしい。

 先輩からの問いかけをアタシは答えず無視する。


「まあ、いいや。ここで昼ご飯を食べようと思ってたから、勝手にいさせてもらうよ」


 そういってアタシの隣に座り、話しかけるわけでもなく黙々と昼食を食べ始める。

 そのまま、どちらも話さないまま淡々と時間が過ぎる。


「……少し話を聞いてもらっていいですか?」

「うん、いいよ。気軽に話しな」


 落ち着いたアタシはその人に話しかけてみる。

 その人の温和で柔らかそうな雰囲気が後押ししたのかもしれない。


「実は、クラスで他の人の輪に入れなくて……目立つクラスメイトにも目の敵のようにされてしまっていて、どうしたらいいか……」

「まあ、目立ちそうな容姿してるしね。とりあえず、変わりたいなら自分から何かアクションを起こすしかないよ。他人を変えるのなんて大変だからね。自分が変わる方が何倍も楽だよ」

「……アクション?」

「まあ、何でもいいんだけどね。話しかけてみたりとか……行動に移すのが苦手なら、容姿や雰囲気を変えてみるとか。とりあえず、自分で何とかしようと考えてみるのが大切だよ」

 

 今のアタシに何が出来るだろうか?


「そうやって考えてみてね、わからないことがあったらまた相談に乗るよ。まあ、何かアクションを起こしてクラスで総スカンにあったら、私とでも仲良くしよ。いい子そうだしね」


 そういって、アタシのことを後押ししてくれた。


「とりあえず、何か変わってみる努力をしてみます」

「しばらく昼休みはここに来ることにするから、困ったらここにおいで」


 そういうと、その人はここから去っていきました。

 そういえば、名前も聞いていない……。今度、聞かなきゃな。


 それがアタシと優先輩との出会いだった。

 そこから、たまに相談に乗ってもらったりしながら、クラスにも馴染なじむことが出来た。

 そんなアタシにとって先輩は女性ではあるがアタシの王子様であり、いつしか好きな人になっていた。

 

 そして、先輩が卒業する前の年の夏、先輩に想いを伝えようと決心した。


「優先輩のことが好きです。先輩、これからもずっと一緒にいてください!」

 

 そう伝えると、先輩は__


「こちらこそ、これからもよろしくね」


 と笑顔で返してくれた。

 つまり、アタシと先輩はこれから恋人!?(※勘違い)


 現在、高校に入学するまでで手をつなぐところまでしかいけてないけど、高校を卒業するまでにキ、キスまでしてみせると自分に誓った。


 それが、高校の入学式の日ラブレターを貰ったらしい先輩が気になって、入学式が終わってすぐ先輩を探しに屋上を覗いてみたところ__なぜ先輩は告白された相手と抱き合っているんだろう???


「どういうことですか、先輩!? 先輩と付き合ってるのは私ですよね!」


 そういって、アタシはその場に乱入した。



   ***


【雫視点】


 ~入学式の次の日~



「現実から目を背けるのはやめて、優」

「先輩、その女の人は誰ですか? 先輩の彼女は私ですよね???」

「優さんは私の彼女さんですよね? その女から早く離れてください! お仕置きですよ?」


 私の予想通り、場が混沌としている。


「クレアはいつから私と付き合っているの?」

「……え。そんな、酷いです先輩。忘れたんですか?」

「えーと、去年くらいから?」

「酷いっ! 一昨年の4月からですよ……」

「惜しいっ」

「「「……」」」


 優さんなりに予想して当てにいったのだろが、さすがの私も後輩の少女に同情してしまう。

 後輩ちゃんは、あれ? 今まで付き合っていたと思ってたの、もしかしてアタシだけ? いやいや、それはありえないでしょ。といったような目で優さんを見ている。(※正解)


「……まさか先輩と付き合ってたと思っていたのはアタシだけなんですか?」

「え、いや、その」


 十中八九そうだろう。

 ここは釘を刺しておこう。


「そうよ、優さんと付き合っているのは私だけよ。勘違い女は去りなさい」

「今はアタシと先輩が話してるんです! そっちこそ引っ込んでてください!」

「2人とも落ち着いて」


 いけない、少し冷静ににならなければ。

 私と後輩ちゃんが喧嘩している横で、昨日告白したと思える少女に優さんが話しかけにいっている。

 

 その少女は、昨日の告白って本当に受け入れられていたのかな? でも、好きっていってもらえたし、私の勘違いじゃないよね? というような少し不安げな表情で優さんを見ている。(※正解)  

 

「凛、聞いてほしいことがあるの。」

「なんだ、優?」

「実は昨日の告白なんだけどね、ちょっと勘違いがあってね。私は凛の告白を了承したわけじゃないの……」

「え? まさか、優は私と一緒にいるのが嫌なのか?」

「いや、違うの。凛のことは好きだよ。でも、いきなり付き合うっていうのはね」

「友達からってこと? 私は優と一緒にいれるだけでも嬉しいけど、出来ればもっとそばにいて欲しいな」


 なんか向こうがいい雰囲気になっている。

 後輩ちゃんと喧嘩している場合じゃない。



「まあ、いいわ。で、結局優さんは誰とお付き合いしてるの? 私でしょ? 私よね? 私だよ」

「優先輩と付き合ってるのはアタシです!」

「いや、優と付き合うのは私だ」


 誰も譲らない。


「3人とも聞いて! ごめん。3人に勘違いさせたのは私が悪かったわ。でも、私は誰とも付き合ってるつもりはなかったの」


 誰も聞いていない。

 私は、聞こえたけど聞こえないふりをした。


「「「優(先輩)(さん)と付き合ってるのは私(アタシだ)!!」」


 このままじゃ、らちが明かない。


「このままじゃ、埒が明かないわね。もうすぐホームルームも始まってしまいますし……お二人とも昼休みは空いていますか?」

「「空いてますけど(が)?」」

「少し3人で話し合いたいことがあるわ。3人で集まりましょう?」



   ***


~昼休み~


 集まった3人は互いにけん制しあっている。

 そこで私は口にする。


「実は、優さんは誰とも付き合ってる気がないんじゃないかしら?」

「「……」」


 二人ともそんなはずはないと思いながらも、心当たりがあるのか黙ってしまう。


「そこで、私に提案があるの」


 私からみて、優さんはノーマルだ。男性に苦手意識を抱いているけれど、女性に恋愛感情を持っているわけではない。

 だからこそ、何か策を講じる必要がある。


「もし、彼女が女性に対して恋愛感情を持っていないなら私たち3人とも友達で終わるかもしれない。ただ、3人の内から1人恋人にしなければいけない状況だとしたらどうでしょう?」


 彼女たちも考え込んでいる。


 優さんに女性を選んでもらうにはどうするか?

 女性と付き合うかどうかの2択だと勝率が低いだろう。

 なら、女性3人の誰かを選ばなければいけないような状況に持ち込み選択させる。


「とりあえず、私たち3人で今日から彼女と順番にデートしてもらって彼女に私たちを意識させましょう」

「しょうがないわね、乗ってあげるわ」

「私も異論はない」


 2人とも乗ってくる。


「今日は金曜日だし、先に私の番でもいいかしら? 土日はあなたたちに譲るわ」

「わかった」

「いいですよ」


 私たちという選択肢を認識してもらうためのデートだ。

 先に私がデートにいくことで、彼女が3択から選ばざるを得ない状況に上手く持ち込んでしまおう。

   

 さあ、私たちのデートを始めましょう。

月城雫は腹黒だ……

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