篠崎優の受難
きっと睨みつけてくる凛、激おこぷんぷん丸なクレア、真顔で圧をかけてくる雫先輩。
やばいですね!
現実逃避して、事態が好転することもない。
とりあえず、詳しいことを聞けていない後輩のクレアから話を聞くことにするか。
「クレアはいつから私と付き合っているの?」
「……え。そんな、酷いです先輩。忘れたんですか?」
会話だけ切り取ると、私はとんだクズ野郎である。
記念日って大事だよね。
まったく身に覚えがないけれど。
思い返してみれば、そういう風にとれる言動がクレアに対しても多かったかも……。
多くて逆にまったく検討がつかないや。
クレアとは私が中学2年生のときからの付き合いだから約3年。
つまりは約1000択問題。分が悪すぎる。正解するまでアタックチャンス的なものも無いだろう。
「えーと、去年くらいから?」
年単位にすることで、確率は約4分の1。出会ってすぐの年はないとして、一昨年、去年、今年の3択。
今年はまだ3ヶ月しか経っていないので確率的に低い。つまりは実質2択。
私の名推理が冴える。
年単位にすることで薄情さ加減が増す? うるさい、気にしたら負けだ。
「酷いっ! 一昨年の4月からですよ……」
「惜しいっ」
「「「……」」」
2択を外し、思わず惜しいと口からこぼれてしまい、3人から冷めた目で見られる。
クレアはショックを受けて、若干うなだれている。
「……まさか先輩と付き合ってたと思っていたのはアタシだけなんですか?」
「え、いや、その」
見捨てられた子猫のような目で問いただされる。気まずさ100%。
確信をつかれて困惑してしまう。
状況的に浮気がばれたときのような状況になってしまっている。なんでだ。
こうなってくると、全面的に自分が悪い気がしてくる。
「そうよ、優さんと付き合っているのは私だけよ。勘違い女は去りなさい」
雫先輩は、仲がいい人に対しては優しいが、関りが薄い人に対してはなかなかに口が悪い。
突き放すような言動も多く、姫と呼ばれる所以にもなっている。
本当はすごく優しい人なんだけどね。。
「今はアタシと先輩が話してるんです! そっちこそ引っ込んでてください!」
「2人とも落ち着いて」
さすがにヒートアップしているので、止めに入るが止まる様子がない。
原因は私なんだけど。
2人が揉めている間に。凛へと話しかけて1人でもいいから誤解を解くしかない。
そう思い、凛へ話しかける。
「凛、聞いてほしいことがあるの。」
「なんだ、優?」
「実は昨日の告白なんだけどね、ちょっと勘違いがあってね。私は凛の告白を了承したわけじゃないの……」
「え? まさか、優は私と一緒にいるのが嫌なのか?」
そんな見捨てられた子犬のような目で見ないで。
思わず告白を受け入れてしまいたくなる。
でも、私はノーマルなんだ。
「いや、違うの。凛のことは好きだよ。でも、いきなり付き合うっていうのはね」
「友達からってことか? 私は優と一緒にいれるだけでも嬉しいけど、出来ればもっと傍にいて欲しいな」
いい子過ぎる。
すると、凛と話しているうちに雫先輩とクレアの争いにも一段落ついたようだ。
「まあ、いいわ。で、結局優さんは誰とお付き合いしてるの? 私でしょ? 私よね? 私だよ」
「優先輩と付き合ってるのはアタシです!」
「いや、優と付き合うのは私だ」
3人の主張がぶつかり合う。
もう少しで凛を説得できそうだったのに……これだと元通りだ。
このままじゃ、さすがにいけない。
「3人とも聞いて! ごめん。3人に勘違いさせたのは私が悪かったわ。でも、私は誰とも付き合ってるつもりはなかったの」
クズ発言になってしまうが、正直なことを伝えるしかない。
そして、その言葉を受けた3人は__
「「「優(先輩)(さん)と付き合ってるのは私(アタシ)だ!!」」」
揉めてて、聞いてなかった……。タイミングが悪い。
「このままじゃ、埒が明かないわね。もうすぐホームルームも始まってしまいますし……お二人とも昼休みは空いていますか?」
「「空いてますけど(が)?」」
「少し3人で話し合いたいことががあるわ。3人で集まりましょう?」
そう言って3人とも解散してしまった。
私を置き去りにして。
私は???
***
~放課後~
3人が私の教室へと一緒にやって来る。
一体、昼休みに何を話したんだろうか?
「優さんが3股するような人には思えないし。とりあえず、私たちと優さんの間になにかのすれ違いがあると思うの」
そう雫先輩が口にする。
そう、まさにその通りだよ。さすが、雫先輩。さすしず!
「だから、とりあえず誤解を解くためにも放課後、順番で私たちの誰か1人とゆっくり時間をとってデートしましょう」
「へ?」
「そこで、私たちの中から彼女を1人に絞りなさい。まあ、私になるでしょうけどね」
どうしてそうなるの?
ねえ、本当に何を話し合ったの???
次回は別視点。