賛同と反発と
「3人とも好きなので、全員私の彼女になってください!」
頭を下げて、全員付き合ってください宣言。
恐る恐る顔を上げると、私の発言が衝撃だったのか凍り付いている3人。
まあ、そうだよね。
最悪、殴られるくらいの覚悟はある。
「どういうことですか優先輩? 笑えない冗談ですね」
「そうだ、優。それは無いんじゃないか?」
カレンと凛から圧を感じる。
それも仕方がない。
私でも同じことをされたら怒る自信がある。
父親は同じようなことを母に言って、たこ殴りにされていた。
「じゃあ、3人とも私の友達としてこれからずっと仲良く出来る? 振った後も今までと同じように。私は今の3人との関係が好きなんだ」
だけど、開き直った私はへこたれない。
無理矢理3択を迫られたんだ。
こっちから2択を突き付けてやる。
「優さん、私は歓迎よ。2人が駄目だっていうなら私とだけ付き合いましょ」
雫先輩が提案を受け入れようという意思を見せている。
あれ? この人は怒ってないのかな。
「ちょっと、シロ先輩! そんな勝手なことを言って」
「そうだ月城先輩。そんな不誠実なこと許せない」
その発言に対して2人が反発の意思を見せる。
その反発に対して雫先輩は余裕の笑み。
「でも、そうしなきゃ優さんが付き合ってくれないのよ? それに、ライバルがその他大勢から3人になるわけだし。メリットしか見当たらないわ」
「それは……」
いや、出来れば付き合うとしても平和なお付き合いがしたいんですけど。
カレンが考え込んでいる。
提案を受け入れるメリットとデメリットを考えてるのかな。
「それでも、私は優に私だけを選んで欲しいし、その結果として振られるならまだ諦めもつく。振られたとしても、一緒にいれなくなるわけではないし」
凛が食い下がる。
凛は誠実な人柄だし恋愛の価値観が人一倍きれいなのもあって受け入れがたいんだろう。
「本当にそうだと思う? この先、優さんが男性と付き合うことになったらわからないわ。一緒にいられるとしても確実に一緒にいる時間は減る。それに、1度完全に振られたらもう優さんは今までみたいな距離感で接してくれることはなくなるわ。一緒にいても、確実に友達の距離を維持する。そうよね、優さん?」
「まあ、疎遠になることはないよ。でも、好意を伝えられて断った相手と手をつなぐ以上の距離感では接しないかも」
私も1度友達でいようと言った以上は、期待をもたせるようなこともしないだろう。それに今までなら意識しなかったけれど、友達であることの区切りとしてそうすると思う。
それがずっとそうかと言われればわからないけど、高校にいる間くらいはそうするだろう。
「それでも、私は……。少し考えさせてくれ」
そう言い残して、凛は屋上から出ていく。
こういう反応をされることも予想できていた。
だけど、やっぱりどこか楽観的に考えていた。
みんな受け入れてくれるだろうと心の底で思っていた。
自分に甘かったなと反省する。
「カレンさんはどうするの?」
「アタシは……正直なところ、迷ってます。なんだかんだ、アタシもこの4人の関係が好きなんですよね。それでも、私だけを見ていて欲しいって気持ちもあるし。そんな、行き当たりばったりの関係が上手くいく気もしないし」
カレンも4人の関係が好きだと言ってくれて安心する。
それでも、不安がどうしても残るんだろう。
「もし、みんなと付き合うことになったら私なりに出来る限りの努力はする。誰か1人を優先できなくても、他の人よりは3人のことを優先する。それが無理なら……いや、無理にならないように全力を尽くす」
今から駄目だったときの関係を考えても仕方がないだろう。
誠実でない関係に対して、最大限に誠実に向き合う努力は惜しまないとは決めている。
「それで、そんな関係が嫌だったら私のことは見限ってくれて構わない。それでも、駄目かな?」
この言い方は少し卑怯かもしれないと思いながら口にする。
「その言い方は卑怯ですよ。わかりました、アタシもいいですよ。後輩としてじゃなく恋人として見てもらえるなら。それで、優先輩がアタシの魅力に釘付けで、アタシだけしか見れないようになっても知りませんけどね」
「ありがとう、カレン」
カレンからも了承の返事をもらえる。
「で、優さんは朝海さんがもし受け入れなかったらどうするの?」
「私のわがままですからね。その時は、全力で土下座して不誠実なこと言い出してごめんねって凛に謝ります。それで、2人にも恋人じゃなく友達でいて欲しいって懇願します」
「仕方ない優さんね」
現時点で見捨てられてないだけで奇跡に近いだろう。
「でも、そうならないように凛を全力で説得します。2人が関係を受け入れてくれたのを無かったことにしないためにも」
「まあ頑張ってくださいね、優先輩」
「頑張ってね、優さん。期待してるわ」
カレンからは呆れた表情で見られる。
雫先輩からは期待のまなざしを送られる。
頑張ろう、いや凛とちゃんと向き合おうと私は決意する。
次回で好き嫌い別れそうな論理展開は終わらせます。