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モテモテで修羅場な私の日常(百合)  作者: みりん
私の修羅場な日々
15/25

月城雫の憂鬱【雫視点】

さすがに不憫だったので……。

最初は理性的で知的なキャラにするはずだったのに。


 週が明けて、月曜日。

 今日も優さんと一緒にお昼ご飯。

 まさか、毎日優さんと会えるようになるとは先月の私は思ってもいなかっただろう。

 なんだかんだで恋人的なポジションにも居座れている。頬にキスだってしちゃいました。

 自分で自分のことを褒めてあげたい。

 

 優さんの教室に着くと、すでに星宮さんと朝海さんが居る。


「優、土曜日はありがとね。また今度も一緒にお菓子作りしてほしいな」

「そうだね。またしようね」


 優さんが照れくさそうに応じている。


「先輩、今日の放課後に冬花とカラオケ行くんですけど先輩もどうですか?」

「あ、じゃあお邪魔しようかな。ちょうど空いてるし」

「今度、2人でも遊びに行きましょうね」

「そうだね。予定が空いてればね」


 星宮さんが耳元でささやくように2人で遊ぼうと言う。

 またも優さんは照れくさそうに応じている。


 そういえばと、先週の私の行動を思い起こす。

 あれ? 私、優さんと何かしたっけ?


 もしかして、万が一、いや億が一くらいの可能性だとは思うけれど__

 私、出遅れてない?



   ***



 学校が終わり、帰宅した私は考える。

 とりあえず、優さんと距離を縮める作戦を立てよう。


 まず、人と距離を縮めるにはどうしたらいいかしら。

 ……わからないわ。

 友達いないもの。この前の佐藤さんの件はあとから思い返すと確実に失敗だわ。


 とりあえず、デートすれば距離は縮まるわよね。


 優さんをどうやってデートに誘えばいいかしら。 

 ……わからないわ。

 よく考えてみれば、いつも優さんに誘ってもらっていたわ。

 クリスマスとカイベント事があれば、誘いやすいんだけど。


 わからないなら誰かに聞けばいいんだわ。

 友達は……ナッシング。頼れる姉妹もいない。

 強いて言うなら母親。


 あれ? 私って割と詰んでない?


 いや、まだ私には最強の味方がついている。

 

「とりあえず、ネットで調べましょうか」


 人類の英知の結晶がネットには詰まっている。


 人間、距離、縮め方っと。

 

 検索して、いくつかの記事を読む。


 ふむふむ、これで完璧だわ。

 しっかり勉強して満足した私は眠りにつく。



   ***



 午前の授業が終わり、昼休みになる。

 いざ、尋常に勝負。

 優さんのもとへと歩みを進める。


「優さん、私は生まれ変わったわ」

「……優先輩、この人またなんかやらかしそうなんですけど」


 星宮さんが怪訝けげんな表情でこちらを見てくる。

 失礼な後輩ね。まあ、見てなさい。


【ネット知識①体の距離から縮めてみる】


 とりあえず、優さんの腕に抱きつく。


「き、急にどうしたんですか? 距離が近くないですか」


 照れた様子の優さん。

 なにやら好感触。二重の意味で。

 ならもっと距離を狭めて__


「__って、急に抱き着いてなにしてるんですか、アバズレ先輩」


 星宮さんに無理矢理引きはがされる。


「何するんですか、まったくこのビッチが」


 せっかくいいところだったのに……。


「やることが極端なんですよ、月城先輩は。今度は何を参考にしたんですか」

「じゃあ、どうしろっていうのよ。私だって優さんにもっと意識してもらいたいし、デートにも行きたいわ」


 そのために私なりに頑張ってるのに。

 どうして邪魔するんですか。


「普通に誘えばいいじゃないですかっ!」

「普通が分からないのよ。優さんが初めてって言っていいくらいの友達だし……」


 それがわかれば苦労はないわ。 


「月城先輩は優先輩のことを好きっていってますけど、それは他に比較対象がないからじゃないですか?」

「……そんなことはないわ」

「本当にそうなんですか? 優先輩に依存しているようにしか見えませんよ」


 もしかして、私は優さんに依存してるだけなんでしょうか?


「カレンちゃん、それは少し言いすぎじゃないか」

「……そうですね。少し熱くなりました。ごめんなさい、月城先輩」


 朝海さんが星宮さんを軽くいさめる。


 そこから少しの間、無言の時間が続く。


「よし、月城先輩。今度、みんなで遊びに行きますか!」


 暗くなった空気を吹き飛ばすように、優さんがそんな提案を口にする。



   ***



 週末、4人で近くのショッピングモール。

 集合時間15分前くらいに着くと、星宮さんだけがいる。


「おはよう、星宮さん」

「おはようございます、月城先輩。というか別にもうそんな硬い呼び方じゃなくていいですよ。何だかやりづらいですし」

「まあ、そうね。なんて呼んだらいいのかしら?」


 星宮カレンだから、ほっしーとか?

 いや、これはないわね。


「私は後輩なんで適当に下の名前で呼んでもらえたらいいですよ」

「そうね……じゃあ、カレンさんとでも呼びますね。私も砕けた呼び方でいいわよ」

「雫先輩は優先輩と被るんで……そうですね、月城先輩なのでシロ先輩とでも呼んでいいですか?」

「いいわよ。それにしても以外、私はあなたに嫌われていると思っていたわ」

 

 いつもけんか腰だから、すっかり嫌われてると思っていた。


「嫌ってるわけじゃないですよ。なんか昔のアタシを見てるみたいでイラッとしたり、優先輩に近くて目障りに思うことはありますけど」

「昔のあなた?」

「はい、アタシも中学の時ぼっちだった時期があるんで。まあ、アタシははそこで一回折れちゃいましたけど。シロ先輩は、自分がしっかりあるうえにスペックが高いんで1人でも何とかなってきたんじゃないですか。いい意味でも悪い意味でも」


 今のカレンさんを見てるとぼっちだった姿が想像できない。


「そんなに不思議そうな顔で見られても……。まあ、一回折れて優先輩のおかげで開き直れたから今があるんですよ。アタシだって昔はコミュニケーション苦手でしたし」

「意外だわ。あなたは最初からコミュニケーション能力が高いと思ってたわ」

「誰だって最初はゼロからのスタートですよ。人と嫌々でも関わって、経験値を得ていくものです。人によって成長度合いに差はありますけど」


 そんなことを話していると優さんと朝海さんが来る。


「お待たせ、待ってくれてありがと」

「待たせたな、すまない」


 そこから、各々(おのおの)の行きたい店を周っていく。


 一通り遊び終わったところで優さんが告げる。


「たまにはみんなで遊ぶのも悪くないでしょ、雫先輩?」

「まあ、たまには悪くないわね」


 たまには優さん以外の他の人と休日を過ごすのも悪くないかもしれない。

 1人で過ごす方がらくだけど、楽なだけだと成長できないのかもしれないし。


「カレン、凛、帰り道は雫先輩と2人にしてもらってもいいかな?」


 優さんが、私以外の2人に提案する。


「しょうがないですね、今日はシロ先輩に譲ります」

「私もそれで構わないぞ」



   ***



 買い物が終わったあとの優さんとの帰り道。


「月城先輩みたいな素敵な人が私を恋人っていってくれるのは正直、嬉しい気持ちもあります。でも、カレンと同じで私も思うんです。私が先に仲良くなっただけ。だから私じゃなくても雫先輩は良いんじゃないかなって……。友達じゃ駄目なのかって。だから、今日は他の人のことももう少し知ってもらおうと思って誘ったんですけど」


 確かに、優さんが1番に私を見つけてくれたから懐いている部分もある。

 他の誰かが運命の人なのかもしれない。


 だけど、それは違う。

 私の目の前まで来てくれたのは優さんなんだ。


「そんなことはないわ、優さん。私に最初に手を差し伸べてくれたのは、優さんであって他の誰でもない。私にとってそれだけの理由で十分なの。優さんなら、私のことを見ていてくれるって安心出来ますから」


 だからそんなことは言わないでほしい。

 いや、そんなことは言わせない。


「今日ではっきり自覚したわ。やっぱり私は優さんが他の誰よりも好きなの。優さんと一緒にいるときは他の誰といるときよりも心が安らぐわ。変に片意地や見栄もはらずにありのままでいれる。だから、絶対に逃がさないわ」

「そ、そうですか」


 私の言葉で照れた様子の優さん。

 そんな顔されたら嬉しくなるじゃない。


「そんなことをいう、優さんにはお仕置きよ」

「__って、なっ!?」


 優さんの口を自分の口で塞ぐ。

 

 顔が真っ赤なゆでだこみたいになる優さん。


「絶対にあの2人には負けないわ」


 普段、なんだかんだ女子に密着されても嫌がったそぶりを見せない優さん。

 

 優さんは、嫌なことははっきりと嫌って口にする人だ。

 けれどキスしたと言っていたカレンさんに対して、距離が広がるどころか近づいている。

 なら私も全力で押すのみ。

 

 覚悟しててね、優さん。

凛……1番、優に大切にして欲しい

カレン……1番、優に近くで見ていて欲しい

雫……1番、優に近くで支えて欲しい

 こんな感じ?

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