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モテモテで修羅場な私の日常(百合)  作者: みりん
私の修羅場な日々
13/25

私と先輩とぼっち脱却


 それは部活動見学の翌日の昼休み。

 雫先輩とカレンの言い争いの何気ない一言がきっかけ。


「星宮さんは、新入生活そうそう優さんに会ってばかりでいいの? クラスに馴染まないといけないんじゃないかしら?」


 遠回しにどこかに行けという雫先輩。


「アタシは大丈夫ですよ。クラスに中学からの親友もいますし。むしろ、凛先輩とか優先輩は新入生からも人気あるんで、関わってれば箔がつきますしね。変にクラスで地位を築くより楽です。アタシはそんな目的でここに来てませんけどね」

 

 変なファンクラブのせいで後輩からも人気がある優と凛。本人たちはそのことについてまだ詳しく知らない。


「月城先輩こそクラスの人間関係とか大丈夫なんですか? 優先輩以外と話してるの見たことないですけど」


 あおるようにカレンがいう。


「ふっ、私は心配いらないわ。クラスどころか学年に友達いないもの」

「……あっ。ごめんなさい」

「謝るのは辞めて。なんだかみじめな気持ちになるわ。孤独じゃなくて孤高なのよ」


 空気が悪い。

 雫先輩は割と豆腐メンタルなんだから、そろそろ止めないと。


「あ、でもカレンちゃんと月城先輩ってなんだかんだ気が合いそうですよね」


 私が動く前に、そんな様子を見かねたのか凛がフォローを口にする。


「「……え゛?」」


 息ぴったりだ。


「私がいつこの女狐と仲良くしてると?」

「アタシも凛先輩とは仲良くしようと思ってますけど、このアバズレと仲良くなったつもりはないですよ」


 それ以上、雫先輩を傷つけるのは止めてあげてカレン。

 その先輩、もう若干涙目になってるから。

 今日なんか凛とカレンが仲良くなってるのを羨ましそうな目で見てたから。

 

「あ、どうしてもっていうなら、友達になってあげてもいいですよ。その代わり、もうビッチとか女狐って言わないでくださいよ」


 いたたまれない空気を感じたのか、カレンが譲歩をみせる。


「あ、カレンちょっといい? 篠崎先輩、少しお邪魔しますね」


 そんなタイミングで冬花ちゃんが私の教室に入ってくる。

 カレンに用事があるようだ。


「今日の放課後、クラスの女子でカラオケ行くからカレン空けといてね。あんたがあんまり教室にいないからね、カレンと仲良くしたい子から私が直接誘いに行けって言われちゃって」

「りょーかい、空けとくね冬花」

「用事はそれだけ。じゃあね、カレン。篠崎先輩と凛先輩も今度カラオケでも行きましょ」


 用事を済ませて、クラスから出ていく冬花ちゃん。

 なにかおかしいことがあったわけじゃない。ただし、タイミングが最悪だった。

 冬花ちゃんがカラオケに私と凛を誘ったのも、昨日仲良くなった私と部活で仲良くなったらしい凛を誘っただけだ。他意はない。


「ビッチはクラスメイトと仲良くすればいいじゃない! 私は優さんと仲良くするからいいもん!」


 語尾と情緒が不安定だ。

 そういって、食べ終わったお弁当を抱えて教室から出て行ってしまう。

 

「あっ……」

「えーと、何かごめんなさい」

「カレンが謝る必要はないよ。今のは誰も悪くなかったよ……」


 

   ***



『友達ってどうすれば出来るものかしら?』


 放課後、携帯にそんなメッセージが届く。

 わりと深刻そうだ。


 とりあえず、教室で待ってて下さいとだけ送って雫先輩に会いに行く。

 雫先輩の教室に着くと中から話し声が聞こえてくる。


「月城さんも来ない? これからみんなで遊びに行くんだけど」

「ごめんなさい、私は人が多い場所苦手なの。誘ってくれたのは嬉しいわ、ありがと」

「そうなんだ、ごめんね。じゃあまた明日ね、月城さん」

「ええ、また明日」


 あれ? これ私が何かする必要ある?

 もう解決してるんじゃ。


「あ、優さん来てたのね」

「えーと、雫先輩。さっきの人たちは友達じゃないんですか?」

「え? さっき話してたのはただのクラスメイトよ。義理で誘ってはくれてるけど」

「一緒に遊びに行かないんですか?」

「行ってどうするの? 友達でもないし、話す話題がないわ」


 この人、コミュニケーション能力以前に考え方に問題があるんじゃ。


「私のときは来てくれたじゃないですか?」

「だって、あの時はあの本について話せば良かったから」

「じゃあ、文芸部は?」

「友達がいたら図書室でなく、部室で本を読むわ。漫画やラノベ好きが多くて、あんまり趣味が合わないのよ。昨日は新入生のために協力したけど」


 この人は本当に友達を作る気があるのかな?


「それに私ってモテるじゃない? 優さんと出会ってからは雰囲気が柔らかくなったらしくて、さらに前より告白が増えたのよ。だから変な嫉妬もたくさん買ってしまうし」


 嫌味なくこんなことを言えてしまうのが雫先輩のすごいところだ。

 実際、うちの高校で1番モテてるかもしれない。

 女性人気なら凛が勝つだろうけど、男性人気ならピカ1だ。

 凛に対しては本気で告白してくるような人が多い一方、雫先輩には記念受験的な意味合いで告白する人が多い感じがする。告白された回数なら絶対に1番だろう。


「本当は優さんが居てくれさえいればいいのよ。でも、星宮さんに馬鹿にされるのもくやしいじゃない?」


 この人は本当に友達を作る気があるのかな???



   ***

 


 翌日の昼休み。


「あれ? 今日は月城先輩も凛先輩もいないんですね」

「うん、凛は生徒会があるって。雫先輩は何か友達作りを頑張るって。昨日、アドバイスだけはしたけど」

「え? 昨日のこと、そんなに気にしてたんですか? アタシも言い過ぎたかも……」

「気になるなら見に行ってみようか」


 私も気にはなるため、昼ご飯をすぐに済ませて雫先輩の教室へとクレアと行ってみる。


「で、どんなアドバイスしたんですか?」

「……えーとね」

 

【アドバイス①まずは笑顔で挨拶!】


 いつもはしてないような満面な人懐っそうな笑みで佇んでいる雫先輩。


「優先輩。今日のあの人、気持ち悪いんですけど……」

「いや、でもいつもより話しかけやすそうだよ」


 実際に雫先輩に話しかけようとしている人がいる。


「月城さん、今日はどうしたの? すごく機嫌が良さげ。いつもより素敵な笑顔だね」

「ごきげんよう、佐藤さん」

「ご、ごきげんよう、月城さん」


 何でごきげんよう?

 相手も少し戸惑っている。


「優先輩、なんでごきげんようなんですか、あの人」


 そんなこと聞かれても私も知らない。



【アドバイス②相手の目を見て話そう!】


 意識してか、相手の目をじっと見つめるようにして話す雫先輩。

 至近距離で笑顔の雫先輩に見つめられて話し相手は照れているのか顔を赤くしている。


「あの人、距離感が近くないですか?」

「相手の目を見ることだけに集中してるね」



【アドバイス③相手を褒めてみよう!】

 

「佐藤さんの笑顔も素敵よ。いつも素敵ね。見惚れちゃうわ」

「は、はいっ! ありがとうございます」


 まるで口説いているようだ。


「なんで口説いてるんですか、あの人は」


 そんなこと聞かれても私も知らない。


【アドバイス④呼び方を変えてみよう!】


「佐藤さんの下の名前は……駄目だ。思い出せないわ」


 雫先輩が名前を思い出そうと頑張っている。


「あの人、たぶんクラスメイトの名前ろくに覚えてないですよ」

「そうかもね……」


 名前を覚えよう! から始めた方が良かったかな。


「佐藤さん。いや素敵なレディ」

「は、はひぃ!」


 佐藤さんの耳にそっとささやくようにいう雫先輩。


 ニックネームで呼ぼう! にしたほうが良かったかも。

 確実に変な方向へと向かっている。


「やばいですよ、あの人」 

「……私も否定できないかも」



【アドバイス⑤自分がされて好きなことをしよう!】


「昨日は私を誘ってくれてありがとね」


 そういうと、佐藤さんにハグする雫先輩。


「き、急にどうしたんですか月城さん」

「……え、駄目だったかしら。私が優さんにこうされると嬉しいから」


 少し上目づかいで不安げに相手の目をじっと見つめる雫先輩。


「駄目じゃないです!」


 ……あれは堕ちたな。


「距離感と頭がバグってますよ、あの人」

「……否定できない」


 その後、やり切った表情の雫先輩。

 あの人に友達が出来る日はまだ遠いかもしれない。


「今度から少しあの人に優しくしようかな」


 そう呟くカレン。


 案外、近いうちに雫先輩にも友達が出来るかもしれない。


どうしてこうなった……。

関係を前進させるつもりだったのに。

神のいたずらか……悪魔の罠か……。

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