始まりの宣戦布告
2章プロローグになります。
短め。
顔がよく見えない女性が私に迫ってくる。
そのまま、私の首筋に__
「……はっ!?」
寝て起きれば、当然のように朝がやって来る。
変な夢を見てしまった……。顔を思い出せないけれど、女性の誰かに首筋をかまれる夢だった。
いろいろあったせいで意識してるのかな。
いや、私はまだノーマルだ。
思考を整理していると、なにやら腕が少し重い。
まるで、なにかが乗っかているようだ。
隣をみると、そこには不自然なふくらみがある。
布団をめくるとそこには妹の姿が。……何で妹がいるんだ?
まさかなと思い、そっと立ち上がり洗面台に行き、首筋を確認すると噛み痕が。
お前のせいだったのか!
うちの妹はたまにこういうことがある。
自分のベッドに戻り、そっと妹を起こす。
「……ふぁあああ。よく寝た。あれ? どうしたの、お姉ちゃん。そんな怖い顔をして」
「何で私のベッドにいるの?」
真顔で圧をかける。
「えっ!? 妹だから当然__って、痛い、痛い。妹の頭はそんなに強く握るものじゃないよ。妹の頭はそっと優しく引き寄せるようにして……そう目覚めのキスを!」
アホなことをいう妹をほっといて、登校の準備をする。
たまにうちの妹はよくわからないことを言い出す。
「あれ? 姉は目覚めたはずじゃ……」
そんなよくわからない呟きが聞こえてくる。
何にだよ。目ならとっくにお前のせいで覚めたけど。
朝食をとり、登校の準備を済ませた私が玄関を出ようとするとインターホンがなる。
誰だろうと思い扉を開けると、雫先輩、カレン、凛が勢揃い。
扉をそっと閉じる。
さて、今日は学校を休んでも許されるだろうか。
朝から胃が重たい……。
「「「優(先輩)(さん)、一緒に学校行こう(行きましょう)」」」
外からそんな声が聞こえてくる。
そうして私の1日が始まるのである。
***
「優先輩はアタシのものです! 雫さんは離れてください」
「そっちこそ誰の許可をとって、優さんの手にしがみ付いてるのかしら?」
いきなり喧嘩勃発してますがな。
両サイドの腕に2人が抱き着いてくる。
「え、えーと、私も手を繋ぎたい……」
出遅れた凛が1人で寂しそうにしている。
控えめなところが可愛い。くっかわ。
「アタシが一番、優先輩と仲がいいんです! なんたって、キスだってしたんですから」
カレンがドヤ顔でそんなことをいう。
やめて、キスのことは話さないで。
「なっ!? まさか、私もしていない唇にっ!? 優さんこっち向いて」
「へ?」
そういうと、私の口に自分の口を合わせようと__
「__って、道端で何をしようとしてるんですか!? このアバズレ」
「うるさいわよ、ビッチ」
咄嗟にカレンが阻止をする。
危ないところだった……。
「……私もしたぞ」
聞こえないくらいの声でおずおずと凛が呟く。キスを思い出しているのか顔を真っ赤にして。
その感じだとこっちまで照れるじゃないか。私の顔まで熱くなってくる。
「真の敵は別にいるようね、星宮さん」
「そうですね、月城さん」
照れる私を見て、2人が危機感を募らせる。
「まあ、私だけが優さんの彼女ですから、焦らずにいきますわ」
「いきなりキスしようとしといて何をいってるんですか、このアバズレは」
「優さんの唇奪ったビッチは黙ってなさい」
「「……あ゛」」
ガンつけ合う2人。
2人の仲は大変良好である。
ああ、空が青くてきれいだ。
「絶対に優さんは渡さないわ」
「アタシも絶対に譲らないですよ」
「わ、私もだ。優の1番近くにいるのは私だ!」
そして、慌ただしい私の新学期が始まるのである。




