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六月

六月(1)


 正門に入ると、校庭には紫陽花あじさいのような花が咲いていた。


 私は、ランスロット様のことを攻略対象としてではなく、一人の人間として好きになってしまった。

 主人公や他の誰にも取られたくない。


 私は、生徒会長ランスロット様の婚約者で、生徒会の総務担当だ。

 さらに、このゲームをやり込んだ記憶を持っている。


 私は、できるだけランスロット様と一緒に過ごすようにした。


 なお、破滅の原因となる『魔眼』の使用など論外である。

 絶対に控えようと思う。



 今日は、生徒会室でランスロット様と二人っきりで書類の作成をしている。


 ランスロット様は、公平公正な生徒会長を心掛けている。


 生徒会には、多数の生徒たちの苦情や要望が届けられる。

 それを個人の感情や主観で判断しないで、厳正中立に処理しているので、とても手間と時間が掛かっていた。


 正直、生徒会スタッフの人手が足りていないと感じている。


「こんな単純な計算、表計算ソフトがあれば簡単に処理できるのに……」

「ん?なんだ表計算ソフトって?」

 気が付くと、ランスロット様が興味津々な表情で見詰めていた。


 えっ?

 私、何か言いました?


 ちょうど作業が一段落したところだったので、表計算ソフトについて簡単に説明してあげた。


「繰り返しの計算式を代行してくれる魔道具か。文字を数値と同様に扱うなんて斬新だな」


 上手く説明できた自信はないけれど、ランスロット様なりに解釈したらしい。


 あの表計算ソフトは化け物です。

 この世界で再現するには、情報処理の技術ツリーをどれだけ進めれば良いのだろうか。


「良かったら、このアイディアを論文にまとめてみないか?」


 は?

 何言っているんですか?

 私は、ぼんやりとした前世知識を持っているだけの一般人ですよ?


「きっと、時計塔や天文台の観測者たちが飛びついて研究してくれると思うよ」

 ランスロット様が熱心に推すので、仕方なく論文を作成することなった。


 好感度も急上昇しているようだし、まぁいいか。


--

六月(2)


 少しだけ、困ったことになっている。

 六月になっても、主人公マリアの弟のユーリ君が魔法学園に来ていない。


 マリア嬢に聞いてみたら、あの難攻不落の大迷宮の攻略にかかりっきりということだった。


 ユーリ君、何やってんの!?

 その行動は、乙女ゲームのお約束を完全に逸脱している。


 あなたの役割は、まだゲームに慣れていない主人公マリア嬢の救済と誘導でしょ。

 ユーリ君が来ないと、マリア嬢は自分の力だけで学園生徒を攻略しなければならなくなる。


 でも、三月の卒業式までには、かなり時間がある。

 マリア嬢は、誰を好きになっても良いのだ。


 この世界は乙女ゲームと違って自由度が高い。

 学園生活を謳歌していれば、自然と仲良くなる生徒もいるだろう。


 きっとなんとかなるだろう。

 その頃は、そう考えていた。


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