武田勝頼
「あれ?ここはどこ?どうしてここに来てしまったのかしら?」
周りを見渡している白い服の女。見た目は魔王アリエルそっくりだ。そして白い服の女が魔王を見つけた。その視線を感じ魔王が振り向き、ニヤッと笑ってから、
「お前は?そうか、ここへあらわれるとはな。カツヨリ、いやゲーリー。お前仕組んだな?ん?ゲーリーはどこへ行った?」
魔王アリエルは老け込んだはずのゲーリーを探すがどこにもいない。白い服の女、女神エリアル。エリアルは魔王を見つめる。魔王もエリアルを見て視線が合う。2人の目と目があった瞬間、周囲の時間が止まった。いや時間が止まったように感じたのだ。
そこにいる全員の視線が2人を見ている。だが身体は動かない。時間が止まっているのに、魔王と白い服の女は動いている。それが見える。周囲の者達の思考は止まっている。ただ視界にいる2人の女だけが動いているのが脳内でわかる。
「なるほど、私にそっくりだ。ほれ、」
魔王は闇の結界、黒の領域を広げて女神エリアル包み込んだ。エリアルはまだ状況がわかっていないようだ。
「あなたは一体?もしかして魔王?だとするとまさか!」
「今なら我が勝ちそうだ。ブラックフージョン!」
魔王アリエルは闇の杖を振るい、魔源を放出する。その中には伝説龍王伍号機、ゴーリーファイブから奪った魔源も入っている。そして、無意識に理解した合体魔法 フージョンを黒バージョンで放った。
『!!!』
周囲にいた時間が止まっているように感じていた者達は、脳内に真っ白な稲妻が落ちたような感覚を受けて、全員がその場で意識を失った。
「ん、ここは?」
「気がついたか、ムサシ」
ムサシが目が覚めるとそこには、カツヨリ、リコ、パージしかいない。他の者達はどこへ行ったのか?
「何がどうなったのだ、魔王はどこへ行った?」
リコはカツヨリを見つめてから、
「お兄ちゃん、いいえ、武田勝頼さん。あなたは全て知っているのでしょう。教えて下さい」
「リコ、お兄ちゃんでいいぞ。半分は今までのカツヨリだから。ゲーリーだったカツヨリも半分混ざってというか、元に戻っただけなんだけどな」
ムサシはカツヨリがさらに強くなったのを感じた。そうか、元はこんなに強かったのか、こいつ。
「カツヨリ、説明してもらおう。一体何が起きているのかを」
カツヨリは、長くなるぞ!と言ってから話し始めました。
武田勝頼は転生者だった。地球の日本にいる神達のちょっとした遊びが元で過去の日本に転生した。その時に神は転生石というアイテムを使用したのだが、転生した勝頼は歴史を変えて天下を取りそうになった。遊びに負けそうになった神が再び転生石を使って勝頼を現代に戻してしまう。現代に戻った勝頼は、このままではと色々と調べ、転生石を見つけ出し、再度戦国へと向かった。そして三英傑と呼ばれる、信長、家康、秀吉を退け武田幕府を開き、天寿を全うして死んだ。ところが、死んだ後なぜか現代に戻ったのだ。そして再び天寿を全うして死んだ。
「と、思っていたんだよ、さっきまでは」
現代に戻って死んでから、なぜか女神エリアルの力でこの世界のカツヨリとして転生した。
「これが今までリコと一緒にいたカツヨリの方だ。で、片割れなんだが」
もう1人のカツヨリ、そうです。カツヨリは約500年前に2人に分かれたのです。
「戦国で死んだ勝頼はなぜか現代に戻った。それが転生石の力の使いすぎによる暴走だったんだ。暴走したエネルギーが勝頼を2人に分けた。そして1人は西暦2022年の現代へ。そしてもう1人は約500年前のこの世界へ飛んだ」
「お兄ちゃん。そうやって2人が分かれたのはわかったけど」
「そうだよな。聞きたいのはそこではないよな。ここからは勇者カツヨリとして話そう。この世界に転生した俺の魂がこの世界の唯一神であるエリアルに衝突したんだ」
「えっ、そんな事が!ってエリアルって誰?」
「さっきの白い服の女。あれがエリアルだよ」
リコは驚いた後考え込んでいる。
「転生石の暴走エネルギーはカツヨリを二分しただけでなく、女神エリアルも二分したんだ。そしてエリアルは気絶し、エリアルの悪の部分だけが分離した。それが魔王アリエルなんだ。そして誕生した魔王が好き勝手に暴れ始めた。カツヨリは人間としてこの世界に現れ、戦国で他の大名を従えた経験を活かし、仲間を増やして魔王を封印……… 」
「お兄ちゃん、それ飛ばしすぎ! ゲーリーだった方のお兄ちゃんはこの事を知って魔王を封印したんでしょう。そこのところが全然説明されてない!」
「おう、そうなんだが。また話が長くなるぞ」