木聖の中に
中から出てきたのはダークエルフだった。が、よく見ると口元から犬歯が見えている。
「封印が解けるなんて。ゲーリー、そのエルフが兄なの?」
ゲーリーの事は覚えているのに兄は覚えていないのか?と思ったが、今、中に入った時にゲーリーは自己紹介をしたらしい。
ゲーリーは改めて話し始める。
「さて、主要メンバーも揃った事だしさっさと魔王を復活させるぞ!」
「おい、待て!」
カツヨリとパージが叫んだ。
「何だよ、カツヨリ、お前さっきなんか感じなかったか?」
「ん?さっきのあれか?」
カツヨリはゲーリーに会ってから何かおかしいのです。何かの準備を体がし始めたような変わっていく感覚を感じていました。
「ボチボチだと思うんだけどな。まあいいや、先に魔王復活だ」
「だから待てって。魔王を復活させたらどうなるんだ?そもそもお前が封印したんだろう?なんで今、また復活させるんだ?」
「だから時が来たって何度か言ったろ!お前がこの世界に現れたのは偶然じゃない、必然なんだ。けどおかしいな?お前、何か変わった物持ってないか?」
変わった物?ダンジョンコアはゴーリーに使っちまったし、あっ!ゴーリーは変わってるかも?ていうかこいつに見せたらどんな顔するんだろ。カツヨリは上から目線のゲーリーを驚かせてやろうとアイテムボックス大から伝説龍王伍号機、ゴーリーファイヴを取り出した。
「これくらいかな、変わってるのって」
「ええっと、これってまさか。ゴーリーファイヴ?なんでこの世界にこれがあるんだ?お前が持ってきたの?」
「いや、モンさんじゃない猿の神獣のところになぜか置いてあった。知ってるか、これ乗れるんだぜ!」
「???、これ蒸気で動くんじゃなかった?しかも確か4人乗りだったはず。いや、おかしいぞ。これ石田三成に壊されて爆発したから残ってるわけがない。しかもお前2020年くらいから来たんだろ?」
慌ててる慌ててる。ずっと俺は何でも知っているみたいな感じだったのに、ざまあみろって感じだね。あれ?俺ってこんな性格だったっけ?
横の方ではパージとガーリーが向かい合っている。
「死ぬまで会う事はないと思っていた。少し思い出してきた、その犬歯。お前は父上の能力をより濃く受け継いだのだったな。それでお前は残った」
「そうよ。そして兄さんは人間界へ戻った。この日のためにね。今まで守ってくれてありがとう。でもそれも今日で終わる」
「待て!魔王を復活させてはならん」
「なぜ?私は魔族四天王のガーリー。この日のために生きてきたのよ」
「魔王が復活したらこの世の終わりなのではないか?前回魔王を倒した勇者は………、もういない。そこにいるのは穢れた魔族だ」
「おいおい、黙って聞いてりゃ穢れただと、まあ綺麗な身体じゃあないけど。でももう遅い。気付かないか?」
そういえば止まっているのに動いている気がする。
「床が動いているのか!なんだこの力は?」
封印された門を潜ったところは広間になっていて今までその広間で会話をしていました。ところが勝手に部屋の形が変わって、いえ、動く歩道のように全員が少しづつ部屋の奥の方へ進んでいるのです。
パージが思い出したように、
「そうだ。この先に木聖が、魔王がいるんだ。いかん、吸い寄せられている」
えっ?そうなの?さてどうするかな。カツヨリはリコとムサシを見た。2人ともなるようにしかならないから好きにしろって言っている。じゃあ、一丁やってみますか。
「ゴーーリ・イン!」
カツヨリが右手を上げながら叫ぶと、右手の腕輪が光る。そしてその光はカツヨリ全体を包み込みゴーリーへと運んでいく。ゲーリーは驚いている。
「なんだなんだ?合体するのか!あれ?エネルギー魔源使ってんじゃねえか、どういう事だ?」
焦ってる焦ってる。あー愉快愉快。カツヨリは伝説龍王伍号機と合体しました。
「これで魔王が出ようが龍王が出ようが何ともないぜ!」
「龍王なら帰ったぞ」
えっ、さっき聞いた龍って龍王だったの?神獣の。なんてやっているうちに御一行は木聖の前まで運ばれました。それは周囲が深緑、中央がピンク色にグラジュエーションしている直径2mほどの球でした。よく見ると中央に女性らしき姿が見えます。あれ?魔王って女性なの?なら魔女じゃん。
「今、魔王なのに女性じゃん、だったら魔女だろって思ったろ。実は俺も最初来た時はそう思ったんだけど、魔王は魔族のトップで魔女はその配下なんだとさ。どうだ、勉強になったろ!」
ゲーリーはカツヨリの心を読んだように話しました。そりゃわかるだろうよ、俺はお前なんだから。
ゲーリーはアイテムボックスからダンジョンコアを取り出した。すると、木聖が振動を始め、ダンジョンコアから魔源を吸い取り始めた。