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ガーリーとパージ

 ゲーリーは続ける。


「パージよ、お前がここに来たのは必然なんだ。木聖がお前を呼んだ、無意識のうちにな」


「それは違う。私は魔王城へ侵入者が入ったという情報を聞いてここに来たんだ。木聖に呼ばれたからではない」


「そうか。だとしたらそれもお膳立てかもな。魔王は時が来たのがわかってるんだ。カツヨリがこの世界に来たことがトリガーなんだ」


「カツヨリとは誰の事だ?」


「あれ?お前名乗ってないのか?」


 ゲーリーはコジローを見て言った。



「コジロー殿、あなたは一体?」


 パージは小次郎を見て混乱している。リコ姫は聖魔法を使う異国の姫だと聞いた。魔法の力は本物で聖魔法も存在した。ムサシという護衛の男はさっきデスナイトを単騎で倒していた。そんな事はナッツピーの中でも誰もできない偉業だ。コジローは城での会話から切れ者と認識していた。まさか3人とも魔族の手先なのか?


「パージ殿。リコとムサシはヤンギュー国から来ています。ですが俺は日本という国から来た転生者で、本当の名はカツヨリと言います。ゲーリー、なんとなく話が見えてきたがそもそも魔王とはなんだ?エリアルとはどういう関係なんだ?」


「エリアル?ああ、お前は女神に召喚されたのか。それで全てが繋がったよ。さて、この先色々と大変なんでな。せっかくだから貴様らの魔力を借りるぞ」


 ゲーリーは剣をカツヨリとパージに向けた。カツヨリとパージは結界で動く事が出来ない。ゲーリーの剣が2人から魔力を吸い取り始めた。


「な、何をする?」


「パージ、お前の父は元じゃない前の四天王ガーリー、吸血鬼だ。お前の魔力は封印を解くのに使える。それとカツヨリの魔力もな」


「なんで俺の魔力が封印を解くのに使えるんだ?他の人間じゃダメなのか?」


「封印は俺が施した。お前の魔力は俺と共通だろ?」


 元々カツヨリは1人だった。それが何かで2人に別れた。1人は500年前にこの世界に来て魔王を倒し封印し、なぜか魔族になってここに現れた。もう1人が俺だ。だが、なんで…………


「考えてるようだがすまん、時間がないから始めるぞ。剣封界徐錠無天!」


 ゲーリーの剣から文字が扉に向かって螺旋状に飛んでいき、見えない壁にぶつかった。火花が飛んでいる。


「これでも足らないか。強えな、昔の俺。仕方ない、チャージリングを使用する。魔力全開、いっけー!」


 ゲーリーの指輪が光ると急激に螺旋の回転が上がり、見えない壁をぶちやぶり、扉を破壊した。チャージリングとは魔力をストックできる指輪のようだ。以前、リコが攫われた時に魔力を吸い取る指輪があったがあれの上位版か?扉が破壊されると同時にカツヨリ達を足止めしていた封印も解けたようでパージとカツヨリも動けるようになった。


「さて、行くぞ。お前らもついてこい。魔王に会わせてやる」


「待て!」


 声をかけたのはムサシだった。





 ゲーリーはムサシを見て、誰だこいつ?と思いました。さっきデスナイトを簡単に倒していたので相当の強者のようですが人族です。ちょっと興味を持ちました。


「カツヨリ、誰なのこいつ?」


「気安く呼ぶな。お前の味方になったわけではない」


 カツヨリはゲーリーと仲良くする気はありません。だって魔族だし。それになんかムカつくのです。上から目線の上、なんでも知っているみたいで。この世界に転生させられてここまでやってきました。エリアルに頼まれてあちこち旅をしているうちに、カツヨリはこの世界が好きになっていました。この世界を滅ぼそうとしているこの男に味方する気はないのです。


 その時、近くまで寄ってきていたムサシの身体がぼやけました。えっ、これは?


『キン! 』


「やはりな、お前も防ぐのか?」


「驚いた。まさか陽炎を使うとは。カツヨリ、お前が教えたの?」


「答える義務はない」


 ムサシは試したのです。初見殺しの技、陽炎。これが躱せればこのゲーリーは間違いなくもう1人のカツヨリです。2つに別れたカツヨリ、なぜ別れたのか。ムサシはこれは敵ではないのかもしれんと考えて剣をしまいました。ムサシが仕掛けた陽炎、それを見たカツヨリはゲーリーの避け方を観察していました。自分の動きとそっくりです。つまりこいつは俺なのです。腹をくくらなければいけない、だが魔族だぞこいつは。頭の中で考えが蠢いています。パージは、


「ムサシ殿、コジロー殿。この魔族を倒さないと!魔王が復活してしまいます」


 ムサシもコジローことカツヨリも動きません。ムサシはカツヨリに任せたようです。カツヨリはふうっと息を吐いてから覚悟を決めてリコを呼びました。そしてゲーリー、パージ、カツヨリパーティが封印が解かれた扉の前に立っています。パージは


「この中に入るのか?」


「初めて入るみたいに言うな。覚えていないのか?この封印をしたのはお前がここを出た後だぞ!お前はこの中で生まれ育ったんだ。今更中に入るのをためらう事はあるまい」


 ゲーリーはそう言って中に入っていきます。カツヨリはそれを聞いて気付きました。そうだったのか、と。


「つまり、双子のダークエルフは木聖の近くで生まれた。ある程度大きくなってからパージさんは外に出た。そしてゲーリーが封印をした。封印は魔王復活をさせないためではなく、魔王を守るためだったのかもしれない」


「お兄ちゃん、魔王を守るってどういう事?」


「みんな大きな勘違いをしていたのかもしれないって事だよ。封印がないと木聖が危険に晒される。誰かが盗んだり悪用したりするかもしれない。時が来るまでそっとして置かなきゃいけなかったんだ。そして時が来た」


 ゲーリーが中から戻ってきた。


「カツヨリの言う通りだ。俺は誰も入れないように封印した。魔王をお前達から守るためにな。おいパージ、可愛い妹のお出ましだぞ」







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