表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

147/154

カツヨリとカツヨリ

 パージはアンソニー皇子が来るのを待っていましたが到着する気配がありません。時間がないと言うのに何をしているのか。イライラしているのが一目でわかるようになってきました。見兼ねたリコが、


「いいのですか?ここまで急いで来た意味は?」


 とパージに催促をします。パージは少し考えてから、


「行きましょう。騎士団Aチームが前衛を、その後も魔法士団、その後ろにリコ姫達、後ろ詰めを騎士団Bチームの編成で進む。他のものはここで待機、皇子がとうちゃくしたらそのご指示に従うように。進め!」


 騎士団が魔王城へ入っていった。魔王城といっても城ではなく洞穴で地下深くまで続いています。地下3階に勇者カツヨリが施した封印があり、誰もが底から下へは入れません。のはずですが、侵入したのが勇者カツヨリことゲーリーであるならば、封印の解き方を知っているはずです。


 迷路のような魔王城でしたが地下三階まではナッツピー軍の勢力範囲です。たまに出る魔物も定期的に討伐されており地図も用意されています。ところが、


「パージ様、階段が無くなっています。道も少しですが変わっています」


 パージは、


「そんなはずはなかろう。もう一度最初から辿ってみろ」


 コジローとリコはヒソヒソ話を始めました。


「これってあれだよな」


「あの時と同じよね。てことはコアのせい?」


 そうです。ラキール村近くのダンジョンが森の中と繋がったあの事件、ダンジョンコアが無くなったら元に戻りました。新しいコアが持ち込まれダンジョンに影響を及ぼしたと2人は考えました。だとすると、


「パージ殿。これに似た経験をしたことがあります。強力な魔源によりダンジョンの形状が変わるのです。おそらく階段は違うところに移動しています」


 リコはパージに助言をしました。リコの凄さを体で実感していたパージは、そんな事が起こり得るのかとも思いながら信用することにしました。


「リコ姫の言う通りかもしれん。兵を分散し隅から隅まであたるのだ。3人一組となり地図を作るつもりで探索しろ!」


 うん、的確な指示だね。さすがだ。30分後、階段を見つけたという報告があり、地下二階へ。なぜか二階は変わってなくそのまま地下三階に。底からしばらく進むと橋があり、渡った先に誰かがいる!


「あそこにも門番がいたはずだが」


 パージの声に誰かが答える。


「そこの魔物にやられちゃったよ、ほらその上にいる奴」


 誰の声だ?言われるがままに上空を見上げるとガーゴイルが5匹も飛んでいた。橋の向こうに見える誰かは門に向かって何かしているようだ。その誰かとの距離は100mは離れていて、リコの魔法でも届きそうにない。ガーゴイルならリコの魔法で瞬殺できるがナッツピー軍の実力を知るいい機会なのでパージに任せて見物することに。コジローだけアイテムボックスから何かを取り出している。


「魔法部隊、ガーゴイルに向けて放て!弓隊、撃ち落とせ!」


 空中のガーゴイルに向かって火魔法、風魔法が襲いかかる。魔法が途切れると弓矢攻撃だ。よく連携が取れている。だが、ガーゴイルはBランク、ダメージは与えているが倒すまでは時間がかかりそうだ。パージは攻撃に参加していない。体力温存をしているようだ。


 コジローは橋の向こうの男が気になっている。あいつは、なんだ。黒い鎧に黒い兜、見るからに魔族か魔物系なのに懐かしさを感じる。違う、あれは敵だ。コジローはアイテムボックスから取り出した秘密兵器を構える。見た目はロングライフル、この世界にはないものだがドワーフのレビンに頼んで作ってもらった。この世界には火薬がないので魔力で弾を飛ばす仕組みだ。魔法が使えないカツヨリでもこれがあれば遠距離攻撃ができる。


「こんな事なら試射しとくんだった。この距離だしまあ当たらんだろうけど、撃っちゃうぞ」


 コジローは魔力を思いっきり込めて発射した。魔導ライフルMCー4と名付けられた魔力と弾丸の融合兵器から発射された弾丸は黒い鎧を直撃し、鎧を破壊した。門に向かって詠唱に集中していた男は、


「なんだあ?この鎧を壊すとは誰だ?」


「あれ?当たっちゃった。全力で撃ったのに鎧壊しただけかあ、おかしいなあ」


「おっ、きたなカツヨリ。それってライフルじゃん。さすが俺の分身、なかなかやるじゃん」


「なぜか声が聞こえるんだけど、結構離れてるぞ。どういう事?」


「細かい事は気にするな。この鎧はオリハルコンでできていて防御力も魔法防御もかなりのものなんだがあーあ、壊れちゃった」


「お兄ちゃん、誰、誰なの?」


「お兄ちゃん。なんていい響きだ。昔、松姫に兄上なんて嫌いです、って言われたっけなあ。覚えてるか?」


 確かにそんな事があった。確かに織田信忠との婚約話の時だった、ってこいつはやっぱり。


「可愛い妹よ。俺が勇者カツヨリ、又の名を魔族四天王ゲーリーだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ