魔族四天王ガーリー
勇者カツヨリはどこか遠いところから来たと伝わっている。各地で魔族を倒し仲間を増やしていった。鬼族、龍族、獣人と種族にこだわりがなく誰とでも仲良くなれる性格だったらしい。ただ女好きで各地で浮名を流していたようだ。
それを聞いたリコがコジローことカツヨリを睨んだ。いや、俺じゃないから。俺かもだけど。
「勇者カツヨリがなぜ魔族討伐をしようと思ったのかはわからない。だが、仲間を増やし、各地で魔族を倒して魔王城へ攻め込んだ」
魔族も多く倒したが、カツヨリの仲間の多くも死んだ。そしてチーム一丸となって魔族四天王と呼ばれる幹部も倒した。
「魔王と戦い、戦闘が終わった時に立っていたのは勇者カツヨリと鬼族のゼックンの2人だけだったと言われている。そしてそこでカツヨリは魔族になって姿を消した」
「皇子。なぜ勇者が魔族に?」
「それはわからない。どうやって魔族になったのか?どうやって魔王を封印したのか?魔王は今でも木聖の中で生きています」
封印ってダンジョンコアの中に!てーことは。コジローが疑問をぶつける。
「皇子。それではエルフをこの国に入れない理由はもしかして」
「そうだ。木聖へ干渉できるからだ」
皇子は続けた。
「この国には魔王が封印された魔王城がある。500年前の戦争後、魔王が生きているという話は世の中に出なかった。それまで苦しめられてきた民に余計な情報を流したくなかったと聞いている。勇者が魔王を倒した、平和な時代が来た。生き残った者達は勇者が魔王を倒して姿を消したと教えられ、新しい国作りが始まった。そういった明るい話で世界を盛り上げていく事が必要だった。龍と鬼は人族と一緒には生活ができないという理由で姿を消して、人族中心の国が作られた」
「龍と鬼が人族と生活出来ない理由とは何でしょうか?」
「リコ姫。それは彼らが人も食べるからです。人を食べなくても生活はできるそうですが、どの集団にもへんな人はいるでしょう?規則から外れた事をしてしまう人が。鬼族のゼックンが長い目で見て共存すべきではないと判断したと聞いています」
ふーん、ゼックンてあいつだよな。怪しい術使ってたやつ。いいやつなのかもしれないな。
「コジロー殿、ゼックンをご存知か?」
突然パージに質問された。リコとムサシはゼックンには会っていない為無反応だったが、コジローはつい思い出したような仕草をしてしまっていた。
「いえ、鬼族というのに驚きました。ヤンギュー国には鬼はいませんが鬼の名前がつく刀がありまして」
「コジロー、それは国宝だぞ。むやみに口に出す物ではない!」
ムサシが話を合わせてくれて誤魔化せた。ゼックンを知っている事がプラスかマイナスかわからいからな。危ない危ない。
「皇子。疑問が多いですが私達が簡単に魔王城跡へ入る事ができない事はわかりました。この国は魔王復活を恐れて、いえ復活させないように守っていらっしゃるのですね」
「リコ姫、その通りです。聖魔法を使われる異国の方をご案内できないのは心苦しいのですが、私には世界を今のままで維持するという役目があるのです。魔王城以外でしたらご案内できますので、ぜひこの国でゆっくりしていってください」
リコが話をまとめてしまったがまだわからない事が多い。皇子は部屋を出ていった。明日名所の滝を案内してくれるらしい。部屋にはコジロー達3人とパージが残っている。
「パージ殿。先程のお話で、勇者カツヨリが何かで魔族になったという事はわかりました。それとその魔族が生きている事も。ですが、どうしてその事を皆さんは知っているのですか?先程話が出てきた鬼族が話したとは思えないのですが」
「皆さんはエルフからの信頼が厚いようだ。それに不思議な力を持っている。それにそれだけではない何かを感じます」
「エルフからは魔王復活を阻止するよう頼まれています。エルフの伝承にある魔王復活の兆しが出ているようなのです。魔族カツヨリが生きているならそいつを倒せばいいのでしょうか?」
コジローはそれが自分がこの世界に現れた事だとは言わずに話を進めた。
「わかりません。そうですか、エルフの生き残りに」
パージは天を見上げた。その時がきたのかもしれないな。数秒考えた後、決心を決めたように話し始めた。
「いいでしょう。私が知っている事、全てをお話しします」
ダークエルフ、魔族とエルフの混血だ。ダークエルフは見た目には魔族の因子は残らず、一見エルフに見える。魔力だけエルフより優れ、逆に森の加護は劣っていた。多くのダークエルフは500年前の戦争で死んだ。
そして魔族四天王、ガーリー、ギーリー、グーリー、ゲーリー、前回の戦争で死んだのはゲーリーだけだった。ガーリーは吸血鬼、ギーリーは悪龍、グーリーはリッチ、そしてゲーリーは虫族。ゲーリーは殺され、ギーリーとグーリーは数百年復活できないほどのダメージを食らった。そしてガーリーは、
「吸血鬼はしぶとい。太陽の光を浴びない限り滅びることはない。ところが勇者の光魔法がそれを打ち破った。体内に光エネルギーが打ち込まれ、200年後に死ぬという縛りが発生したのだ。これはガーリーにとって想定外の事だった」